メジャーでは8人の日本人選手が活躍中だ (C) Gary Graves

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 日本人がメジャーに挑戦するようになり20年が過ぎた。2016年も前田健太が長年の夢だった挑戦を果たすが、野茂英雄以降、海を渡った日本人選手は約60名。野茂のほか、イチローや松井秀喜など、日本時代の実績同様、期待に違わない大成功を収めた選手もいるが、多くは案外な結果に終わり、「やっぱり」と感じさせてくれた。

 日本より野球のレベルが高いメジャーである以上、日本での成績よりメジャーのそれが上回ることは考えにくい。井川慶(阪神・ヤンキースなど)や中村紀洋(近鉄・ドジャースなど)のように、メジャーではサッパリだった選手も少なくない。

 しかし個人個人の日米成績を比較すると、「日本よりもメジャーでもてる力を発揮した」選手が散見される。

 たとえば岡島秀樹(巨人・レッドソックスなど)。日本では15年間で38勝40敗50S74H、メジャーでは7年で17勝8敗6S84H。1年ごとの平均ではメジャー成績のほうが高く、通算防御率も日本時代は3.19だったがメジャーでは3.09と上昇している。

 かつて筆者が編集したムックにおいて、岡島はこう語ってくれた。

「左投手の数が少なくチャンスが多いメジャーの左投手は個性が強く、投球フォームもサイドやオーバーなど多岐に渡るので『このバッターにはこの投手』とワンポイントも多く、戦略を立てて起用しています」

 日本は滑りやすいがアメリカは滑りにくい。そんなボールの質の違いから「すっぽ抜けるカーブは使い物にならない」と判断。新たな球種=スプリットチェンジを編み出した。こうした環境の違いと野球の質の違いに対する適応力などが、ワールドシリーズの日本人登板第1号、そして最優秀セットアッパーに導いたのである。

斎藤隆はなぜ奪三振率を倍増させることができたのか

 35歳でメジャーに挑戦した際、誰もが「無謀だ」と言った斎藤隆(横浜・ドジャースなど)も、アメリカでの成績が上回った投手の1人だ。日本では16年間で91勝81敗55 S14Hだったが、メジャーでは7年間で21勝15敗84 S40H。通算防御率は3.75→2.34と格段に上昇。挑戦の初年度に107奪三振をリリーフ投手としてメジャー最高の三振を奪った。

 成功の要因は様々だが、武器である右打者のアウトコースへ逃げるスライダーや、左打者に対してボールからストライクになるスライダーが、日本よりも広いと言われるメジャーのストライクゾーンにハマったのは大きかった。日本ではボールと判定される球がストライクになったわけだ。また、球速も日本時代に比べて10キロほど上がった結果、奪三振率(1試合あたりの奪三振確率)は日本時代の7.6から14.4と倍増している。

 現在、日の丸を背負っている日本人選手のイチロー、青木宣親、ダルビッシュ有、田中将大、上原浩治、岩隈久志など8名。誰もが日本時代と同様の活躍を見せているが、岡島や斎藤のように、「ハイレベルな環境で実力を発揮した」選手がいるのも、プロ野球の不思議でおもしろい点であろう。

小川隆行(おがわたかゆき)編集者&ライター。『プロ野球 タブーの真相』(宝島社刊)シリーズなど、これまでプロ野球関連のムックを50冊以上手がけている。数多くのプロ野球選手、元選手と交流がある