北関東選抜vs高崎商

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北関東選抜が9回裏に逆転サヨナラ!

柳沢力(高崎商)

 12月は高校野球にとって対外試合禁止期間だが、海外遠征する選抜チームの壮行試合が多く行われる季節でもある。25日からオーストラリアに遠征する北関東選抜は23日、高崎商と対戦した。高崎商は、3年生のバッテリーがいる。投手・柳沢 力、捕手・関口 諄哉(國學院大進学予定)とともに夏のバッテリーが2人も合流したのであった。北関東選抜からすれば厄介な2人である。

 そんな中、先発したのが内池 翔(桐生第一)だった。内池は二死から4番関口に右中間を破る長打を浴び、1点先制を許す。関口はやはり高校3年間をやってきただけあり、土台となるパワー、肩の強さが違う。どっしりとした構えをしていて、スイングの鋭さ、打球の角度の上がり方は別格であった。そしてスローイングも力強い。ぜひ國學院大でレギュラーを勝ち取れる実力を身に付けていきたい。 だが北関東選抜は、1回裏、嶋田 翔(樹徳)が右中間を破る長打を打って同点に追いつく。

 その後、なかなか安打が出ても勝ち越し打が出ない状況だったが、7回表、高崎商は一死二、三塁から8番反町の適時打で勝ち越しに成功。高崎商は6回裏から登板した柳沢が好投。

 135キロ前後のストレートと、140キロが出ていた夏と比べるとスピードが落ちていたが、それでも、長い腕を生かしてサイド気味に出てくるので、なかなか打ち難い。それ以上に厄介なのがスライダー。縦横のスライダーの2種類があり、特に縦に落ちるスライダーのキレ味は素晴らしいものがあり、北関東選抜打線もなかなか捉えきれずにいたが、9回裏、途中出場の4番小野 貴照(文星芸大附)が右中間を破る二塁打を放つと、清水 凌(松山)が相手投手の柳沢の失策を誘いだすセーフティ気味のバントを決めると、6番関谷 将貴(春日部共栄)が右前適時打を放ちに同点に追いつく。7番中林 幹弥(前橋工)が四球で無死満塁とすると、8番山本 拳輝(作新学院)のところでバッテリーミスでサヨナラ勝ち。

 北関東選抜は2勝1敗で壮行試合を終えた。こういう試合の見所、試合展開よりもどんな選手が活躍したかである。続いてこの試合で光った選手を紹介していきたい。

飯村 将太(霞ヶ浦)

 まず北関東選抜の投手陣を紹介すると、先発の内池は不調で関東大会ほどの勢いではなかった。オーストラリアでまた調子を上げることを期待したい。2番手の飯村 将太(霞ヶ浦)は、がっしりとした体格をしているが、フォームの安定度は高く、なかなかの好投手。テイクバックはコンパクトで、体重移動の流れも滑らかで、さすが投手メソッドがしっかりしている霞ヶ浦で育ったと思わせる投手。球速は常時135キロ前後の速球、スライダー、カーブを外角中心に投げ込む投手で、一冬越えていけば、活躍が期待出来そうな投手だ。

 6回から登板した佐藤 良亮(文星芸大附)は実戦度が高い好左腕。内回りのテイクバックで、左ひじをしっかりと上げたフォームから繰り出す直球は130キロ前半だが、球速表示以上を感じさせるキレの良さ、回転の良さがあり、110キロ前後のスライダー、120キロ前後のカットボールを交互に投げ分ける投球は打ち難い。ただ走者を背負うと真ん中付近に集まりやすいのが課題で、また逆方向の変化球をマスターできるとより打ち難い投手になりそうだ。

 4番手として登板した水野 敦之(白鷗大足利)は関東大会の時よりも格段に良かった。あの時、何か体重移動がうまくいかず、腕をしっかりと振れていない状態だったが、この試合ではワインドアップからフィニッシュまでの動きは無駄がなく、連動した動きになっていて、上からたたきつける腕の振りは鋭く、躍動感を感じる。常時135キロ〜137キロの速球、スライダーを投げ分け、2回無失点。春先になれば、常時140キロ台も期待したい投手だ。

 野手陣ではパワーある選手が目立った。5番を打つ天貝 泰己(土浦一・右打ち)は体に厚みのあるどっしりとした体型。その体型を生かし、パワフルな打球を放つ、右の強打者。打撃フォームは反動が小さいが、それでもスイングスピードは非常に速く、力強い打球を飛ばしていた。

雰囲気のある強打者・中林 幹弥(前橋工)

  6番を打つ関谷 将貴(春日部共栄・右打ち)はなかなか運動量が高く、セカンドでも機敏な動きを見せていて、二塁ベース付近のゴロを回りこんで、ダイレクトスローでアウトにするあたり、背筋の強さを感じさせる選手。また右方向に対して、しっかりと強い打球を打てる技術も備わっており、来年の埼玉では注目野手に挙がる存在になりそうだ。

 7番を打つ立松 由宇(藤代・左打ち)もどっしりとした構えをしていて、ボールを遠くへ飛ばす技術が備わった選手。インパクトまではレベルだが、インパクト時にアッパー気味の角度で捉えることができるので、芯でとらえたときはオーバーフェンス気味の打球を打てる選手。 9番を打つ川崎 進也(太田一・左打ち)も、均整がとれた体格、背筋がしっかりと伸びた構えは何か惹きつけるものがある。逆方向に強い打球を打ち返す上手さも備わっており、来年以降も注目を浴びそうな選手になりそうだ。

 またセーフティバントを決め、さらに右方向へ安打を放ち、シュアな打撃が目立った宮本 隆寛(健大高崎)も、バットコントロール、俊足が素晴らしい選手だ。そして途中から出場した4番を打った小野も、粘っこい打撃スタイルと、逆方向へ打てる技術が光る選手だ。

 この日、2四球だったが、打席内で最も雰囲気があったのが中林 幹弥(前橋工)だ。打席では一スイングもしなかったが、均整が取れて筋肉質の体型、腰がどっしりと据わった構えには雰囲気があり、打席前の素振りを見ていても実に綺麗なレベルスイングをしていた。中林は打席に立った時、高崎商は柳沢-関口の3年生バッテリー。そのバッテリーがかなり慎重に攻めているのを見ると、相当警戒している様子が見て取れた。また別の機会で、守備・走塁面まで詳しく見ていきたい選手であった。

 敗れた高崎商は1番を打つ松本 健太郎(左打ち・三塁手)が目についた。ボールを当てるセンス、スイングの鋭さは光るものがあった。普段は3番を打っているようだ。

 北関東選抜は25日から遠征に入る。この経験が大きなものとなっているか。来年以降、大きく成長した姿を見せてほしい。

(文=河嶋 宗一)