筋力と筋持久力のトレーニング
トレーニングプログラムを立てる際にベースにあるのは、筋力と筋持久力の確立である。特に野球は、絶対的な筋力がなければ、バット速度や球速は上がらないし、相対的筋力が低ければクイックネスの能力が上がらないので守備・走塁が上がらない。そしてピッチャーは、その筋力を維持しなくてはならない。このように野球において筋力は身体能力のベースになってくる。
筋力と筋持久力の確立のために必要な数値とは?インターバルトレーニング
A:力の立ち上がりの速度と力積立ち上がりの速度はRate of Force Developmentと呼ばれている。最大筋力発揮には0.6〜0.8秒かかる。なので、なるべく早く筋力を立ち上げることはより多くの力を加えることができて、力積があがり、バットやボールに力を加えることが出来る。これは守備、走塁の加速にもつながる。
B:SSCと反応筋力筋、腱の弾性を使い、反応筋力を高めていくこと、パフォーマンス向上に大切であり、これは、最大筋力トレーニングとは別のトレーニングが必要である段階的プライオメトリクスである。筋力の反応を速くして収縮するタイミングを早くする。これは反応時間とは違う。
C:パワーパワーとは単時間あたりの仕事率のことであり、質量×距離÷時間であり、力×速度の積である。筋力の効率力ともいえるだろう。物体を加速させるには、より大きい力を加えなくてはいけず、ベースの筋力が高いほどパワーは上がり、また、SSCを使う事で反応筋力が上がり、力積が上がり、力を長く加えられるのでパワーが上がる。(等尺性)
低いスピード筋力には筋断面積が必要だが、RFDやPowerにはタイプ?筋繊維(速筋)の割合が高い方がパフォーマンスが高い。筋肥大のトレーニングを行い筋力を高めたら、パワー向上のため、よりタイプ?に刺激を加える。立ち上げを意識したクイックリフトやプライオメトリックストレーニングが必要である。
D:筋持久力ピッチャーは再現性の種目で、いかに同じフォームで投げ続けるかが大きなポイントである。これは、短時間の爆発的パワー発揮の連続ととらえてトレーニングが必要である。そのように考えると、ストライドを最大下に行うインターバルトレーニングは大切であることがわかる。
[page_break:筋肉とともに関節も鍛えよう]筋肉とともに関節も鍛えようウエイトリフティング
E:多関節エクササイズ筋はバラバラに動くのではなく、連動に機能的に働いている。そして、パワーを増幅させていき、大きなパフォーマンスを生んでいる。ベースとして、全身を使うパワーリフティングやウエイトリフティングが使われる。
重りを速く加速しようと努力するほど、大きなパワーが発揮されて、それに合ったPowerが発揮される。パワーリフターはジャンプとプルを0.2秒で行うが、デッドリフト、スクワットの4〜5倍のパワー、ベンチプレスの11〜15倍のパワーを発揮する。
F:障害予防私はチームではリハビリも担当しているが、大抵障害を起こしている選手はその関節の機能的筋力と最大筋力が弱い。例えば当チームの左打ちのK選手。俗にいうガニ股で、股関節の回転動作(モビリティ)が出せないので、スタビリティの腰椎を伸展させてバットを振り上げる加速に使っており、分離症を起こしている。さらに過剰に反るので、椎間関節症と筋の疲労性腰痛にもなっている。これは他のレギュラーバッターの選手にも言えることで、これは、筋力はあるが機能(ファンクション)の無い選手の典型である。逆にピッチャーで背筋力が弱くエキセントリックな負荷に対応できないピッチャーは、筋力トレーニングで傷みが出なくなった。
G:種目(1)パワークリーン or ハイプルアップ(2)プッシュプレス&スクワット(3)スクワット(4)デッドリフト
(3)と(4)で最も大切なのは股関節のトルク(動かすために必要な力)を出すことで、いかに重心より股関節を遠ざけてトルクを大きくするかがポイント。なので、重さを軽くしても股関節のトルクの出るフルスクワット、デッドリフトを行うことがポイントである。また、腰に負担をかけないスプリットSQ、ランジ、boxステップは下肢のための補助に。グルートハム、ルーマニアンデッドは背筋の補助に。レッグプレス、ヒップスレッドも有効だろう。
[page_break:スティッキングポイント 一気に力を出すことを意識しよう]スティッキングポイント 一気に力を出すことを意識しよう筋の収縮速度を上げる為のバウンディング
H:実際のトレーニング方法(1)最大筋力RFDと高重量を加速する能力が向上する。低回数の最大努力になる。ゆっくり爆発的に。・95〜100%で15〜25回/セッション・90〜95%で20〜40回/セッション・75〜80%で70〜110回/セッション
(2)筋肥大高回数〜最大努力下、運動単位を増やすトレーニング・80〜90%で1種目5〜10セットを10回〜12回各セット疲労に至るまで行う。
(3)筋持久力高強度インターバルトレーニングが野球には必要になってくる。50〜60%を爆発的に 1種目3〜6セット。20〜45秒/セット。レスト1分。
(4)スピードストレングスa.反応的―バリスティック筋力筋腱複合体の弾性エネルギーを使い、筋の収縮速度を上げることである。別名プライメトリックス。野球は接地時間、0.25秒以上。スプリントのスタート局面、反動ジャンプなどのトレーニング、スプリントのトップスピードは0.25秒以内なので、走り幅跳びやバウンディングなどが良い。
b.最大下での加速筋力発揮大きな力を加えれば、ウエイトは速く動く。要は、力の大きさと物体の加速度は比例するのである。これは野球においては大変重要な事である。スピードストレングスで大切なのは、物体がどの方向にどのくらいのスピードで動かされているかである。「対象となる物体を正確な軌道で限られた時間内に加速させて最大の力積を生み出すことで、最大のトレーニング効果を得られる」。このように、動作や物体を加速させるには、立ち上げに大きい力を発揮することで、その立ち上げの力をSSCで高めてあげるスピードストレングスが大切である。
また、爆発的に動かす意志と行動が大切であり、最大随意努力が大切であり、神経活動が最大化されないと、本当に生産性のない意味の無いトレーニングになる。そして力の立ち上がり速度、力の方向、力の大きさを意識してコーディネーションする。速いスピードで動かすことが速筋を活動させることではない。発揮するパワーが大きいほど運動単位は動員され、大きい力を物体に加えることで物体は速く動かされるのである。
ただの筋肥大のトレーニングと違い、スティッキングポイント(動きで止まりやすい姿勢)でいかに一気に力を加え加速するかをポイントにしないと有効な競技力向上のためのストレングスプログラムにならない。疲労で回数が出来なくなっても、毎回、スティッキングポイントを全力で加速することが大切である。
I:コントラスト法これは最大下での爆発的トレーニングとプライオメトリックストレーニングを交互で行うことであり、多くの運動単位を動員してタイプ?に刺激を加える方法であり、スピードストレングスの2つの要素を一緒に鍛えていく。
次回は、「アジリティとコーディネーショントレーニング」について解説します!
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