おでん屋台といえばお酒、だけど...北九州の一部では「アルコールNG」! 理由を老舗屋台に聞いてみた
夜風もすっかり冷たくなり、気づけばおでんの恋しい季節になった。
酒がNGのおでん屋台があるって本当?(mrhayataさん撮影、画像はイメージです)
都内ではあまり見かけなくなってしまったが、やはりおでんといえば「屋台」に腰かけて頂きたいもの。寒空の下、湯気の立ったアツアツのおでんをつまみつつ、熱く燗した日本酒をチビチビと......。
いやはや全くオツな一幕だが、屋台の本場・福岡の一部地域では「絶対にありえない光景」なのだという。驚くなかれ、北九州市小倉にある一部の屋台では数十年前からアルコールの提供が「ご法度」となっているというのだ。
「おさけ」は無いけど、「おはぎ」は人気
お酒の提供を禁止しているのは、北九州市小倉にある屋台のうち、旦過市場前の広場を発祥とする店舗。2012年に交通上の規制が強まった影響もあり、現在では同地から屋台の姿は消えたが、いくつかの店舗は場所を変えて営業している。
なかには、移転とともにアルコール提供を解禁したところもあるようだが、いずれの屋台もかつては一切お酒の提供を自粛していた。同広場に集まる屋台では、「お茶」以外の飲み物は出さない取り決めがあったそう。缶ビールなどアルコール飲料の持ち込みは可能だが、それも「少量のみ」に限っていたという。
アルコールを自粛する理由とは?(Tatsuo Yamashitaさん撮影、画像はイメージです)
しかし、飲食店にとってアルコールは貴重な収益源。つい先日も、ネット上で「おでん屋台で酒を頼まないのはアリ?ナシ?」という議論が起きたばかりだ。その際には、群馬県内のとあるおでん屋台がJ-CASTニュースの取材に対し「お酒を注文してもらわないと利益が出ません」と答えたという。それでは、いったいなぜ、旦過の屋台はアルコールを自粛したのだろうか。その理由を、小倉で50年以上営業を続ける老舗の屋台に聞いてみた。
旦過の屋台がアルコールを廃した理由とは
1956年に旦過市場前広場で創業し、現在は小倉北区の春口バス停前に移転して営業しているおでん屋台「ささ屋」。同店では、現在でも旦過時代の取り決めを守り続けているそうだ。2代目の店主に詳しい話を聞いてみると、
「その理由はいくつかありますが、1つには近隣住民からの苦情があります。『アルコールをやめないと、この場所での出店を拒否する』とまで言われたため、旦過の屋台はいっせいに酒を出すことを取り止めたんです。そのときの取り決めが、現在まで残っているんですね。
また、今では無くなってしまいましたが、昔は『酒だけを出す屋台』があったんですよ。だから、『屋台村』のようなものが出来た際も、酒はそちらにまかせよう、という気風があったのかもしれません」
と教えてくれた。
現在では、旦過だけでなく小倉の屋台全体で「アルコール抜きで食事だけを楽しむ場所」という認識が定着してきているという。福岡県観光協会のウェブサイトにも、「おにぎりとお茶を片手におでんを食べるのが小倉流」との記述がある。また、小倉の屋台には「おはぎ」を用意しているところが多いそうで、食事の締めとして人気が高いそうだ。