韓国経済、中国と「一心同体」でデフレ懸念から抜け出せるのか?(画像はソウル市内)

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景気低迷が長く続いている韓国経済が、「デフレ」の崖っぷちに立たされている。

外需への依存度が高い韓国経済にとって、最大の輸出国・中国の景気停滞は頭痛のタネ。加えて、それに伴う世界経済の回復の遅れに通貨ウォンの高止まり、製造業大手などの労使トラブルなどを背景に企業競争力の低下が止まらず、赤信号が灯っている。

韓国経済は外需の低迷を、内需でどうにかカバーしている

2014年の韓国企業の成長性、収益性はいずれも悪化した。韓国の中央銀行にあたる韓国銀行が2015年10月27日に発表した「2014 企業経営分析」によると、企業の成長性を示す売上高の伸び率は、調査対象の全体ベースで1.3%と、かろうじてプラスを維持した。中央日報日本語版などが28日付に報じた。13年の2.1%から大きく鈍化。2010年(15.3%)と比べると、じつに14ポイントもの下落だ。

調査は金融・保険業を除く営利企業53万641社を対象にまとめ、その中には製造業12万2097社も含まれている。

そうしたなか、韓国製造業の2014年の売上高の伸び率は、13年の0.5%からマイナス1.6%に急落。マイナス成長に陥った。この統計を取りはじめた1961年以降、初めてのマイナスで、米国の2.4%や日本の2.8%と比較すると、韓国の製造業の不振が際立つ。

製造業の中では、電気・電子の売上高の伸び率がマイナス7.4%で、13年の4.6%から大きく後退。石油・化学はマイナス0.7%からマイナス1.6%にさらに低下。非金属・鉱物もマイナス3.1%と振るわなかった。

また、2014年の企業全体の売上高に対する営業利益率は4.0%に落ち、2008年の金融危機のときよりも低いこともわかった。さらに企業全体のうち、営業利益で利払いすらできない企業の割合は32.1%で過去最高に達した。

韓国では、こうした製造業は「輸出頼み」の企業が少なくない。韓国銀行は7月にまとめた報告書で、2015年の輸出が前年比4.3%減となる「輸出不振」に陥り、3年ぶりのマイナス成長に転じるとの見方を示した。

韓国の輸出は、2009年に前年比13.9%の落ち込みをみせたが、10年には28.3%増、11年には19.1%増と急成長した。ところが、12年には前年比1.3%減と再びマイナスに転じた。その後は上向いているものの、「15年は09年以来の大幅な減少の可能性がある」との指摘もある。

中央日報日本語版によると、韓国銀行のパク・ソンビン企業統計チーム長は製造業のマイナス成長について、「ウォン高と国際的な原材料価格下落が主因で、具体的にはスマートフォンの輸出が減少したことで、売り上げ伸び率がマイナスにまで落ち込んだ」と分析している。

ちなみに、非製造業の売上高の伸び率は4.1%で、13年の3.6%よりも高かった。とくに不動産・賃貸が16.1%、飲食・宿泊は14.7%で、売り上げが大きく改善した。

韓国経済は外需の低迷を、内需でどうにかカバーしている状況にあるということのようだ。

輸出不振で「赤信号」点灯 デフレに陥る可能性も・・・

じつは韓国経済は現状、「ひと息ついている」。韓国は2015年10月23日に、この7〜9月期の実質GDP成長率を発表。前年同月比プラス2.6%で、前期(プラス2.2%)より上向き、年率ベースでもプラス5%と大きく上昇した。

韓国経済に詳しい第一生命経済研究所の主席エコノミスト、西濱徹氏によると、「年明け以降の利下げの実施などを背景に、建設需要に底入れの動きが出ています。加えて、小売り・卸関連やIT関連などのサービス分野も生産が拡大。景気の押し上げにつながりました。足もとではMERS(中東呼吸器症候群)の影響が沈静化したことで、家計部門の景況感が改善。政府の景気刺激策もあって内需を押し上げ、企業も設備投資意欲も改善傾向にあります」としている。

その半面、輸出は中国経済の減速に加えて、通貨ウォンは実効ベースで高止まりするなど、企業の価格競争力は後退したまま。そのため、実質GDP成長率も前期比ベースでは4四半期ぶりに減速に転じており、外需が韓国経済の足を引っ張っている状況は変わらない。

西濱氏は、「中国とは一心同体の関係ですからね。外需を取り巻く環境が厳しいことを考えると、高い経済成長が続くとは考えづらく、まだこの先も一進一退の状況が続くでしょう」とみている。

なかなか自力でデフレ懸念から抜け出すこともむずかしいようで、デフレに陥る可能性も否定していない。