一流社員は朝イチ仕事で「パソコンを使わない」
■一流の「朝」は100%、いい滑り出し
朝一番の仕事はいい滑り出しで、その勢いのまま、1日中「高密度」に取り組むことのできる一流ビジネスマンには、おのずと結果がついてきます。
聞いてみると、彼らには不思議な仕事の作法や習慣があることが多い。例えば、
・ 朝一番の仕事は、パソコンを使わない
・ 仕事はまず、最初の15分間だけ集中してみる
・ 帰社する際に、資料をプリントアウトする
これらが、いい仕事の循環を作り出すきっかけとなるというのです。一体どんな意味があるのでしょうか。その説明をする前に、朝、なかなかいい滑り出しができない大多数の人々の「現状」を見ておきましょう。
▼仕事の調子が出ない理由1:重要な仕事を後回しにする
「今日は新商品の企画書を作成する日だ」。朝、時間ギリギリに出社して、とりあえずパソコンを起動。メールをチェックし、郵送物の封を切る。案の定、関係部署からたくさんメールや伝言メモが来ている。
まずはこの雑用を済ませてスッキリしようと返信を始めた。ところが、1つ返信すると、そこにさらに問い合わせが来る。そうしている内に上司から呼ばれて急ぎの打ち合せを依頼される……。
こうして1日で最も重要な仕事(新商品の企画書)が後回しになり、夜の残業時間に重い腰を上げて取り組むという悪いパターンに陥りがちです。結果、夜、ヘトヘトの時間に企画書をつくる羽目に。と、どうしても仕事が非効率になり残業時間が増えます。
▼仕事の調子が出ない理由2:午後にやっとエンジンがかかる
理想的には、「最重要かつ気の重たくなる仕事」は朝一番に片づけるのがいい。これは、タイムマネジメントの中でもセオリー的な習慣です。
短時間でメリハリをつける「高密度仕事術」をコンサルティングする中で、8割の方は最重要の仕事を後回しにしていて、その結果、非効率に陥っています。
朝一番になぜ最重要の仕事に手をつけるといいのでしょうか?
基本的なことですが、睡眠で脳と体を休息させることで疲労が取れ、脳が最も活発に動きます。一方、夕方から夜にかけての脳は仕事で消耗し、疲労困憊している状態。この時期に最も思考のエネルギーを消費する「最重要の仕事」を行なうのは質の面でも効率の面でもよくありません。同じ脳でも、朝と夜では天と地なのです。
短時間労働をするためには、計画(家へ帰る時間)をきちんと決めて、その期限内で仕事を終わらせることが大切ですが、そのためには最重要の仕事から処理してかなければ、計画は実行できません。
■一流が実践「朝イチ仕事」を速攻片付けるコツ4
▼最重要の仕事を片づける「3つのメリット」
さて、効率面での効用もありますが、「最重要の仕事」を朝一番で片づけることは、その後の時間に大きな影響をもたらします。精神的なメリットが大きいのです。
【メリット1】達成感
朝一番で最重要な商品企画の資料を完成させたら、当然、大きな達成感が得られます。この達成感を朝一番で味わうことはその後の仕事のリズムに好循環の影響を与えます。
【メリット2】快適さ
逆に、重要な仕事を先延ばしにしていると、常に「やらなきゃ」という緊迫感と気の重たさとともに過ごすことになります。朝一番に仕上げることができると、その気持ちから解放されて1日の快適さが高まります。
【メリット3】自己肯定感
重要な仕事を優先すると自分で決めて、その通りに実行する。自分で決めたルールや順番を守って主体性を発揮できると、自分で自分をコントロールできた感覚があり、自己肯定感につながります。
▼どうすれば朝一番で手をつけられるか?
とはいえ、「そうか! じゃあ明日の朝一番から重要な仕事をやろう!」と言ってもなかなか難しいものです。なぜなら、いつも通りの仕事のパターン、習慣に引き戻されるからです。
そこで実践上のアドバイスをしたいと思います。
◎コツ1:パソコンを使わない
最重要の仕事を着手する場合、いきなりパソコン作業から入ると、自動的にメールをチェックする流れとなり、集中モードが削がれます。そこで、商品企画書であればノートに構成やアイデアを書くことからスタートする、もしくは作った案をプリントアウトしておき、その資料に書き込むことから着手するなど、スタートをPC作業から始めないことです。PCを起動した瞬間からマルチタスク(複数の仕事の同時進行)の嵐に巻き込まれます。
◎コツ2:帰宅する際にプリントアウト
朝一番に、最重要の仕事を集中して済ませたいならば、パソコンを立ち上げる前に着手できる環境を準備することをお勧めします。すなわち、前日の帰宅する時などに資料をプリントアウトしておくなど、翌朝すぐ取り組めるような環境を整えるといいでしょう。
■一流は、まず、作業を小さく分解する
◎コツ3:チャンクダウンする
朝一番でやる、といっても1時間以内で終わる仕事ではない場合は、工夫が必要です。例えば、チャンクダウンです。チャンクダウンとは小さな作業に分解すること。
新商品の企画書であれば次のようなステップが考えられます。
・新商品の企画書のフォーマットをノートに書く
・既存商品の問題点を5つにまとめる
・新商品の特徴をアイデア出しする
・箇条書きでパソコンに打ち込む
・上司に見せて意見の摺合せをする
・提出するために資料・文章を整える
さらに細かくすると作業の全体イメージと作業時間が明確化していくでしょう。
◎コツ4:ベビーステップで手を付ける
最重要の仕事を出社してすぐに手を付けるには、初動の作業を小さく踏み出すことが重要です。ベビーステップ(小さな一歩)で仕事に着手します。デジタルタイマーを用意し、15分間セット。その間は、最重要の仕事だけに集中すると決めてスタートを切れば、15分過ぎた頃にはきっと脳のエンジンがかかって集中力が高まってきます。
もしもこの時点で高まって来ない場合は、一旦中止してメールの作業など緊急の仕事をしてもいいでしょう。但し、必ず最初の15分間は最重要の仕事をする習慣を継続することが大切です。
以上、今回は最重要の仕事から着手する習慣をお話してきました。
聞いてみれば当たり前のことですが、実施するのは簡単ではありません。このようなシンプルな習慣こそ、自分の精神的、時間的な革命をもたらしてくれるもの。
ぜひ、帰宅する際の資料のプリントアウトや、朝一番のパソコン使用禁止などの習慣を始めてみてください。きっと効果を感じて頂けるでしょう。
(習慣化コンサルタント 古川武士=文)