合計16発という多数のミサイルを搭載したF-15のイメージ(画像出典:ボーイング)

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導入から30年以上が経過する、航空自衛隊の主力戦闘機F-15。今後も長く使用される見込みですが、老朽化、性能の陳腐化といった問題はないのでしょうか。2015年9月、ボーイングが示した未来にひとつの答えがありました。

自衛隊のF-15はまもなく寿命?

 我が国の領空を警戒・防衛する航空自衛隊はF-4EJ改「ファントムII」、F-15J「イーグル」、F-2Aという3機種の戦闘機を配備しています。このうちF-4EJ改は老朽化から退役が目前で、来年2016年度より後継機F-35「ライトニングII」の導入が始まり、全42機が調達される予定です。

 近い将来F-15J、F-2A、F-35Aが新たな領空防衛の三本柱となるわけですが、F-2Aの調達数はF-35Aのおよそ2倍の94機(複座のF-2Bを含む)、F-15はさらにその倍に達する213機(複座のF-15DJを含む)を調達済みであり、当面のあいだは最も古いF-15Jが、我が国の主力戦闘機であり続ける見込みです。

 F-15Jは、8000飛行時間の構造寿命を持つよう設計されています。航空自衛隊は年に約200飛行時間を消化しているので、単純計算で40年の実用に耐えます。F-15は1981(昭和56)年より航空自衛隊へ導入が始まったので、一番古い機体は「34歳」であり、数年後には8000飛行時間に達する機体も出てくると思われます。

F-15、50年後も「強い戦闘機」でいられる理由

 しかし、8000飛行時間はあくまでも設計時に余裕をもって設定された数値であり、個々の機体の使用状況や構造を検査することで寿命の延長が可能です。例えばF-4の場合は、3000飛行時間から平均5000飛行時間まで引き上げられました。F-15Jはどの程度、寿命延長を実現できるのでしょうか。

 アメリカ空軍では、F-15Jと同じ機体であるF-15Cを運用中であり、その平均飛行時間はすでに8600時間にも達しています。F-15Cの寿命は16000飛行時間まで拡張できるとアメリカ空軍は見込んでおり、また、18000飛行時間の耐久試験も実施され、致命的な破壊は生じないことが実証されています。したがってF-15Jも16000飛行時間程度、すなわちあと50年は現役を続けられる計算となります。

 旧式化した戦闘機を使い続けることに不安を覚える人もいるかもしれませんが、現代ジェット戦闘機の空中戦は、目視で確認することのできない数十kmの相対距離で行われます。また接近戦にもつれ込んだ場合においても、背後の敵機さえ攻撃可能な高い命中精度を実現するミサイルの撃ち合いでほぼ決着がつき、飛行性能はあまり関係がありません。そのためミサイルや電子機器を最新鋭のものへ載せ替えることによって、将来もF-15Jは「強い戦闘機」であり続けることが可能です。

F-15の強化でF-35が強くなる? ボーイングが示した未来

 2015年9月15日(火)、F-15の製造元であるボーイング社は、“次の10年”を見据えたF-15のアップグレードパッケージを発表しました。この新しいF-15は、AIM-120「アムラーム」視程距離外空対空ミサイル14発、AIM-9「サイドワインダー」短射程空対空ミサイル2発、合計16発の空対空ミサイルという、従来のF-15の2倍に達する武装をしています。

 このアップグレードされたF-15、ボーイング社の狙いは「F-35の空中戦能力を増大させること」にあります。

 F-35はステルス性に優れ、情報収集能力に極めて優れた戦闘機です。しかしステルス性を最大限に発揮する場合、射程の長いAIM-120「アムラーム」は胴体内兵器倉に2発しか搭載できない欠点を抱えます。一方、F-15は機体が大きくミサイルを大量に搭載することができますが、ステルス性に欠け情報収集能力もF-35に及びません。

 そこでF-15とF-35を同一のデジタルネットワークに接続し、F-35は前方で敵機を照準。F-15はF-35から照準情報を受け取って、遠方からミサイルを発射します。F-15が14発の「アムラーム」を運ぶミサイルキャリアーとしてF-35の後方にひかえることにより、F-35の同時交戦能力が、理論上2機から最大16機にまで増大されるわけです。

 航空自衛隊のF-15Jは、21世紀中頃まで使い続けられる戦闘機です。また航空自衛隊は、数で圧倒的に勝る中国軍に対抗しなくてはなりません。今回、ボーイング社が発表した新しいコンセプトは、そうした将来におけるF-15Jの形のひとつとして示唆に富んでいるといえるでしょう。