自転車も道路標識を確認し、それに従って走る必要がある(2015年5月、下山光晴撮影)。

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6月1日、改正道路交通法が施行され、自転車に対する取り締まりが強化されました。この改正は、決して軽いものではありません。はたしてどんな意味があるのでしょうか。

自転車の違反に対し、大きかった落差

 2015年6月1日(月)、自転車の走行に関するルールが変わりました。3年以内に2回以上の「危険行為」を繰り返した場合、自転車運転者講習の受講が義務付けられ、これを無視すると5万円以下の罰金が科されます。

 この件について、さほど重く受け止めていない人がいるかもしれません。しかし今回のルール改正は、実は罰則としては重い部類に入るものであり、そして「知らなかった」では済ませられないものでもあります。

 全日本交通安全協会の企画課長、留安さんは、まず“もっとも認識せねばならないこと”として、次のように話します。

「自動車だと、いわゆる『青キップ』という制度がありますが、自転車にはそれがなく、取り締まるには『注意』か『赤キップ』しかありませんでした。今回の改正はその溝を埋めるものです」

「青キップ」とは、1968(昭和43)年に設けられた「交通反則通告制度」(俗にいう「反則金制度」)で交付される、「交通反則告知書」のことです。また「反則金制度」とは、自動車やオートバイの比較的軽い交通違反を「反則行為」とし、「反則金の納付」という方法で処理するもの。当時、増えつつあった交通違反処理の効率化と迅速化を目的に、設けられました。

 この「反則金」は「罰金」とは異なるもので、すなわち刑事罰ではなく、「前科」にもなりません。

 対し「赤キップ」とは、自動車やオートバイの重度な違反行為、また「青キップ」では対象から除外されている軽車両や歩行者の違反行為に交付されるもので、処分は刑事手続きによって決定。こちらは刑事罰が科される類のものなので、「前科」がつく可能性があります。

 法制度において自転車は「軽車両」に分類されるため、これまでも「赤キップ」が交付され、刑事罰が科された事例がありました。しかし自転車に「青キップ」はありません。そのため自転車の違反に対しては「赤キップ」か「注意」という落差の大きい状態になっていましたが、その中間に今回の改正で自転車運転者講習の義務づけ、無視した場合は罰金という、違反行為への新しい対処ができた形です。

「『注意』とはいえ、それを繰り返す悪質な自転車の運転者もいるわけで、今回の改正の背景には、そうした悪質な運転者を取り締まることができるようにするという目的があります」(全日本交通安全協会、留安さん)

危険が潜む「裏道交差点」

 厳罰化によって自転車の運転に対する安全意識を高める、というのが今回の改正における目的なのは明白ですが、では今後、自転車を走らせる際、具体的にはどのようなことに注意すればよいのでしょうか。

 自転車に関する様々な啓発活動を行っている「自転車の安全利用促進委員会」の遠藤まさ子さんは、自転車の関わる事故が最も多発している場所が「裏道交差点(歩道や信号が設置されていない交差点)」であること、そして改正道路交通法が掲げる14の違反行為のなかに「一時不停止」や「通行区分違反」が含まれることを指摘しつつ、次のように話します。

「自転車は基本的に車道の左側を走行すると定められていますが、交通量の少ない道路ではついつい忘れてしまったり、最短ルートを通ろうと二段階右折をしない方も多いのかもしれません。その結果、『出会い頭事故』が増えてしまうのです」

 遠藤さんによると、この「裏道交差点」での事故は、全体の実に4分の1以上を占めているそうです。

 主要な道路や自転車の走行レーンがある場所では取り締まりを意識し、特に気を付けて走る人もいるかもしれません。しかし安全を考えた場合、特に注意して走るべき場所は別にあります。

「自転車も乗りものであるという意識を再確認し、自転車の正しい走り方や法律をきちんと知ることが、自転車を安全に利用する第一歩といえるでしょう」(自転車の安全利用促進委員会、遠藤さん)