ニッチだが、長き歴史を誇る同社。ニーズも高いです。

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若い頃はさまざまなアルバイトに手を出しましたが、なかでも記憶に残っているのは大学時代に従事した肉体労働でしょうか。時期は、新学期が始まる直前の2〜3月。まだ仕事に慣れない私に対し、厳しくも優しい大人たちが私を見守ってくれました。時には、ふと声を掛けてくれたりして。
「おい、◯△¥#!」「え、なんですか……?」
聞くところによるとこの時期、地方から来ていた季節労働者の方も少なくなかったのだそう。でもせっかく声を掛けてくれているのに、その方言が私にはわからない。世代が違うと、やはりこういう“言葉の壁”って起こりうるんだな……。

話は変わって現在、弁護士向け情報誌「自由と正義」に出されたある広告が話題を呼んでいます。その広告のコピーは「東北弁・東北なまりのテープ起こし、お任せください」。
これは、ピンポイントな業務内容だ! いわゆる、“ニッチ”というやつでしょうか?

さて今回は、この広告を出した「株式会社東北議事録センター」に話を伺ってみます。まず、御社にはどのようなスタッフさんが在籍しているのでしょう?
「多いのは、40代以降の東北出身のスタッフです。出身地によって、スタッフそれぞれに得意な方言があります。また英語で言うスピードラーニングのように、何度も聞いているとわかってきて得意になるということもあります」(同社代表・花角潤一氏)
東北にある6つの各県、それぞれ方言には微妙な違いがあるが、そのどれもに幅広いスタッフさんが対応してくれるようだ。

ところでこの会社に持ち込まれる依頼として、どんなシチュエーションのテープ起こしが多いのでしょう?
「東北に住んでいると、特になまりや方言をあまり意識せず仕事をしているのですが、弊社への依頼は東北の地方議会からが多いです。また、ご高齢の方のなまり・方言を反訳してほしいという依頼は、マスコミ・大学・コンサルタントからが多いです」(花角氏)
そういえば先日、弁護士向け情報誌に広告を出されましたよね。やはり法曹界においても、“東北弁テープ起こし”はニーズが高いんでしょうか?
「東北弁にかかわらず、方言はわかりづらいものです。議会や講演と違い、裁判に関する話し手は普通の人のため、方言やなまりが多くなります。そういった意味で、ニーズはあると思っております」(花角氏)
確かに地方議会にも高齢者はいるが、“普通の人”も出席する裁判となると普段の生活そのままで話す人が激増。それこそ80〜90代の方言ともなると、同じ東北人でも聞き取れないケースが少なくないという。そんな時こそ、同社のサービスが役立つのだ。
「東北弁を起こす会社は他にもあると思いますが、東北に本社を置き、テープ起こし専門でやっているのはおそらく弊社のみだと思います」(花角氏)

1973年に設立され、“速記・テープ起こし専門会社”として今年で41年目を迎える同社。「なまりに強い」という評判が評判を呼び、今では多くの県市町村議会から委託を受ける存在に。
また震災以降は、被災者インタビューの文字起こし等の依頼も数多く寄せられているそうです。
(寺西ジャジューカ)