「ふるさと納税」7割は節税できないワナ
消費税増税から約2ヶ月。
苦しくなった家計を少しでも楽にしたい一心で、つい「お買い得」「お得」といった情報に目が行ってしまうという人は多いはずですが、そんな人こそやるべきなのが、「ふるさと納税」です。
節税になるばかりか、日本全国の特産品がもらえるとあって、今にわかに注目を集めているこの制度ですが、「どうやって利用するの?」「どのくらいお得なの?」などなど、疑問も尽きません。
そこで今回は、発売後たちまち4万部を突破したという『完全ガイド 100%得をする「ふるさと納税」生活』(扶桑社/刊)の著者、金森重樹さんにインタビュー!そのコツや注意すべきポイントについてお話を伺いました。その後編をお届けします。
―「ふるさと納税」をする際にやってしまいがちなミスはありますか?
金森:手続きを間違える方は多いみたいですね。寄付金の申込書を送ってから入金、というのが流れなのですが、申込書を送る前に入金してしまった、とか。
それと、すでに知られているように「ふるさと納税」は節税になるのですが、確定申告をしてはじめて税金が還付されたり、住民税が減税されたりするという点も要注意です。
申し込みをして、入金して、特産品をもらっただけで「ふるさと納税」を完了した気になってしまう人がすごく多いんですよ。
総務省のサイトを見る限り、確定申告まできちんとできている人は全体の3割くらいで、残り7割はまちがっているようです。
―それだとただ自治体に寄付しただけになってしまいますね。
金森:自治体的にはうれしいでしょうけどね(笑)。
それと、自治体ごとに「年度」で区切るところと「年」で区切るところがある点、1年に1回しか特産品をもらえない自治体がある点にも注意が必要です。
たとえば、「年区切り」で、1年に1回しか特産品をもらえない自治体に、3月と6月の2回寄付してしまうと、2回目は受け付けてもらえなかったり、特産品がもらえず単なる寄付になってしまうケースがあります。これは、僕も何度かやってしまったことがあります。
また、これは旦那さんが働いていて、奥さんが専業主婦という家庭でありがちなのですが、奥さん名義でやってしまうというミス。「ふるさと納税」は寄付金控除なので、それができる人の名義でやらないと節税にはならないんです。
節税という部分では、「e‐Tax」でシミュレーションして、「節税にならないじゃないか」という人がいるのですが、「e‐Tax」でシミュレーションできるのは国税だけです。つまり、確定申告で還付される所得税の額しかわからないんですよ。本の中に書きましたが、「ふるさと納税」は国税と地方税合わせて、「寄付した額-2000円」が戻ってきますよ、というシステムですから間違えないようにしていただきたいですね。
―たしかに、慣れていないとわからないことは多そうですね。
金森:特産品に関して言えば、採れる時期を考えないと一年待つことになることも覚えておくべきです。
マンゴーは冬にとれませんし、カニは夏のものではありません。季節のものは発送月が限定されていることが多いので、計画的に寄付しないと翌年まで待つことになってしまいます。
―「ふるさと納税」の豆知識や裏ワザがありましたら教えていただければと思います。
金森:自治体によってはカード払いができるところがあるのは豆知識ですね。それだと還元率が高いものだと2%くらいマイル還元してくれますし。
また、鳥取県日吉津村は、寄付した額に応じて全国のイオングループで使える商品券がもらえたり、千葉県市川市は1万円の寄付で2000円分のTポイントがもらえたりと、「特産品」は食品やモノだけではないことも知っておくと便利です。都市部に住んでいて、外食中心の生活をしている方はこちらのほうがありがたいでしょうから。
―特産品については、力を入れている自治体とそうでない自治体が極端に分かれている印象ですが、自治体にとっては力を入れるだけの意味があるものなのでしょうか。
金森:力を入れている自治体としては、岐阜県各務原市や宮崎県綾町、北海道上士幌町などが挙げられますが、こういった自治体はお金集めがうまいと言えるでしょうね。
綾町などは、「ふるさと納税」のあがりが約2億5000万円で、“本業”ともいえる住民税の税収を上回ったほどですから。
傾向としては、これまで有名とは言い難かった、いわば“マイナー”な自治体ほど熱心にやっている印象があります。そういった、どちらかといえば地味だった自治体に降ってわいたようにお金が入ってくるわけですから、力を入れるのもわかります。
―ただ、特産品の準備や発送など、自治体側はかなり手間がかかりますよね。
金森:確かにそうですが、梱包や発送などで雇用が生まれるという側面もあるので、悪いことばかりでもないんですよ。
―「ふるさと納税」は地方の自治体をどう変えていくとお考えですか?
金森:長野県の阿南町は、1万円寄付すると米を20キロももらえたのですが、応募者が殺到して米がなくなってしまったんです。せっかく寄付してくれる人がいるのに、特産品が送れないのは残念だということで、おじいさんやおばあさんが今まで休ませていた田んぼや畑を復興して米を作りはじめた、という地域が再生するような動きが起こっています。
阿南町側の考え方は、還元率100%でも構わないという考え方のようです。寄付額と特産品が「等価交換」であっても、結果的に農家を買い支えることになるから、と。
このように、寄付で集まったお金の3割を特産品で還元して、残り7割を懐に入れるという考え方ではなく、100%還元しても構わないという自治体が出てきています。そういう自治体の方が地域復興を成功させていますし、この動きは広まっていくかもしれませんね。
―現行の「ふるさと納税」の制度について、税制上の問題点はありますか?
金森:商品券などの金券を配るのは早晩規制がかかるでしょうね。
ただ、「ふるさと納税」の納付額は、ほとんどの人が払っている住民税の1割〜2割といったところですから、税制上の問題が出るような規模ではないですし、額にしても何千億円と集まっているわけではないので、個人的にはそこまでの問題は感じません。
―最後に、読者の方々にメッセージをお願いできればと思います。
金森:「ふるさと納税」は、寄付の額の多寡は別として、やれば必ず得をするようになって
います。普段確定申告をされていない人にとっては、手続きが面倒に思えるかもしれませんが、一度やってしまえば二回目からは楽です。
この本に、「ふるさと納税」の仕組みから、確定申告のやり方まで詳しく書きましたので、参考にしてぜひやってみていただきたいですね。
(新刊JP編集部)
苦しくなった家計を少しでも楽にしたい一心で、つい「お買い得」「お得」といった情報に目が行ってしまうという人は多いはずですが、そんな人こそやるべきなのが、「ふるさと納税」です。
節税になるばかりか、日本全国の特産品がもらえるとあって、今にわかに注目を集めているこの制度ですが、「どうやって利用するの?」「どのくらいお得なの?」などなど、疑問も尽きません。
そこで今回は、発売後たちまち4万部を突破したという『完全ガイド 100%得をする「ふるさと納税」生活』(扶桑社/刊)の著者、金森重樹さんにインタビュー!そのコツや注意すべきポイントについてお話を伺いました。その後編をお届けします。
金森:手続きを間違える方は多いみたいですね。寄付金の申込書を送ってから入金、というのが流れなのですが、申込書を送る前に入金してしまった、とか。
それと、すでに知られているように「ふるさと納税」は節税になるのですが、確定申告をしてはじめて税金が還付されたり、住民税が減税されたりするという点も要注意です。
申し込みをして、入金して、特産品をもらっただけで「ふるさと納税」を完了した気になってしまう人がすごく多いんですよ。
総務省のサイトを見る限り、確定申告まできちんとできている人は全体の3割くらいで、残り7割はまちがっているようです。
―それだとただ自治体に寄付しただけになってしまいますね。
金森:自治体的にはうれしいでしょうけどね(笑)。
それと、自治体ごとに「年度」で区切るところと「年」で区切るところがある点、1年に1回しか特産品をもらえない自治体がある点にも注意が必要です。
たとえば、「年区切り」で、1年に1回しか特産品をもらえない自治体に、3月と6月の2回寄付してしまうと、2回目は受け付けてもらえなかったり、特産品がもらえず単なる寄付になってしまうケースがあります。これは、僕も何度かやってしまったことがあります。
また、これは旦那さんが働いていて、奥さんが専業主婦という家庭でありがちなのですが、奥さん名義でやってしまうというミス。「ふるさと納税」は寄付金控除なので、それができる人の名義でやらないと節税にはならないんです。
節税という部分では、「e‐Tax」でシミュレーションして、「節税にならないじゃないか」という人がいるのですが、「e‐Tax」でシミュレーションできるのは国税だけです。つまり、確定申告で還付される所得税の額しかわからないんですよ。本の中に書きましたが、「ふるさと納税」は国税と地方税合わせて、「寄付した額-2000円」が戻ってきますよ、というシステムですから間違えないようにしていただきたいですね。
―たしかに、慣れていないとわからないことは多そうですね。
金森:特産品に関して言えば、採れる時期を考えないと一年待つことになることも覚えておくべきです。
マンゴーは冬にとれませんし、カニは夏のものではありません。季節のものは発送月が限定されていることが多いので、計画的に寄付しないと翌年まで待つことになってしまいます。
―「ふるさと納税」の豆知識や裏ワザがありましたら教えていただければと思います。
金森:自治体によってはカード払いができるところがあるのは豆知識ですね。それだと還元率が高いものだと2%くらいマイル還元してくれますし。
また、鳥取県日吉津村は、寄付した額に応じて全国のイオングループで使える商品券がもらえたり、千葉県市川市は1万円の寄付で2000円分のTポイントがもらえたりと、「特産品」は食品やモノだけではないことも知っておくと便利です。都市部に住んでいて、外食中心の生活をしている方はこちらのほうがありがたいでしょうから。
―特産品については、力を入れている自治体とそうでない自治体が極端に分かれている印象ですが、自治体にとっては力を入れるだけの意味があるものなのでしょうか。
金森:力を入れている自治体としては、岐阜県各務原市や宮崎県綾町、北海道上士幌町などが挙げられますが、こういった自治体はお金集めがうまいと言えるでしょうね。
綾町などは、「ふるさと納税」のあがりが約2億5000万円で、“本業”ともいえる住民税の税収を上回ったほどですから。
傾向としては、これまで有名とは言い難かった、いわば“マイナー”な自治体ほど熱心にやっている印象があります。そういった、どちらかといえば地味だった自治体に降ってわいたようにお金が入ってくるわけですから、力を入れるのもわかります。
―ただ、特産品の準備や発送など、自治体側はかなり手間がかかりますよね。
金森:確かにそうですが、梱包や発送などで雇用が生まれるという側面もあるので、悪いことばかりでもないんですよ。
―「ふるさと納税」は地方の自治体をどう変えていくとお考えですか?
金森:長野県の阿南町は、1万円寄付すると米を20キロももらえたのですが、応募者が殺到して米がなくなってしまったんです。せっかく寄付してくれる人がいるのに、特産品が送れないのは残念だということで、おじいさんやおばあさんが今まで休ませていた田んぼや畑を復興して米を作りはじめた、という地域が再生するような動きが起こっています。
阿南町側の考え方は、還元率100%でも構わないという考え方のようです。寄付額と特産品が「等価交換」であっても、結果的に農家を買い支えることになるから、と。
このように、寄付で集まったお金の3割を特産品で還元して、残り7割を懐に入れるという考え方ではなく、100%還元しても構わないという自治体が出てきています。そういう自治体の方が地域復興を成功させていますし、この動きは広まっていくかもしれませんね。
―現行の「ふるさと納税」の制度について、税制上の問題点はありますか?
金森:商品券などの金券を配るのは早晩規制がかかるでしょうね。
ただ、「ふるさと納税」の納付額は、ほとんどの人が払っている住民税の1割〜2割といったところですから、税制上の問題が出るような規模ではないですし、額にしても何千億円と集まっているわけではないので、個人的にはそこまでの問題は感じません。
―最後に、読者の方々にメッセージをお願いできればと思います。
金森:「ふるさと納税」は、寄付の額の多寡は別として、やれば必ず得をするようになって
います。普段確定申告をされていない人にとっては、手続きが面倒に思えるかもしれませんが、一度やってしまえば二回目からは楽です。
この本に、「ふるさと納税」の仕組みから、確定申告のやり方まで詳しく書きましたので、参考にしてぜひやってみていただきたいですね。
(新刊JP編集部)