「バラク」と呼びつづけた安倍首相

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2014年4月24日に行われた安倍晋三首相とオバマ米大統領による共同記者会見を受け、双方の「呼び方」に注目が集まっている。

「シンゾウ」と「バラク」――。会見中、何度も「バラク」と呼びかけた安倍首相に対し、オバマ大統領は「プライムミニスター・アベ(安倍首相)」を多用していたのだ。

「シンゾウ」と呼ばれず、「オバマ大統領」に変更

オバマ米大統領はアジア4か国歴訪の最初の訪問地として、23日に日本に到着した。23日夜、安倍首相はオバマ大統領を夕食に招待し、東京・銀座の高級すし店で「おもてなし」して親密ぶりをアピールした。オバマ大統領は店の前で出迎える安倍首相に「シンゾウ!」と呼びかけ、握手しながらあいさつ。両首脳の会談は和やかに幕を開けたと思われた。だが、翌日24日の首脳会談後に行われた共同記者会見では、親密になりきれない2人の「距離感」が浮き彫りとなった。

安倍首相は会見の中で、

「バラクと私がホワイトハウスで初めて会ったのは昨年の2月になります」
「バラク、あなたは昨夜のおすしを人生の中で一番おいしかったと評価していただきました」
「ぜひ、バラクと私でこれまでで一番良好な日米関係を築いていきたい」

と、オバマ大統領を何度もファーストネームで呼んだ。冒頭の発言までで「大統領」「バラク・オバマ大統領」などと呼んだのは数回だったのに対し、「バラク」は9回に及んでいた。オバマ大統領の方に体を向け、にこやかに話しかける一幕もあった。

ところが、オバマ大統領が「シンゾウ」と呼んだのは聞き取れる範囲でわずか1回のみ。ほぼ一貫して「プライムミニスター・アベ」で通していたのだ。それに気づいたためか、その後の質疑応答では、安倍首相も「オバマ大統領」と呼ぶようになっていた。

「ファーストネームでこたえないのは米社会では失礼なこと」

24日、東京・元赤坂の迎賓館で行われた首脳会談では、最大の焦点だったTPP(環太平洋パートナーシップ協定)の交渉が難航し、共同声明発表が先送りされる異例の事態となった。そのためインターネット上では、オバマ大統領の「シンゾウ呼び中止」はこれが影響した可能性があるのではと指摘する声も出ている。

24日放送の情報バラエティ番組「ミヤネ屋」(日本テレビ系)でも、「呼び方」が議論されていた。司会の宮根誠司氏は、オバマ大統領がファーストネームで呼ばなかったのは「実は怒っていたためではないか」と話すと、外交ジャーナリストの手嶋龍一氏は「特にアメリカ人の場合は、イギリス人よりもファーストネームですぐ呼びますから、本来逆じゃないといけないので、とても奇妙ですよね」と指摘した。

読売テレビ解説委員の春川正明氏も「ファーストネームで呼ばれてファーストネームでこたえないっていうのはアメリカ社会では普通は失礼なことなので、だからこれは怒っているってことだと思いますよ」と分析した。これに宮根氏は「日米同盟はちゃんとやったのになぜTPPでは折れないんだという怒りで『安倍総理』って言ったんですか?」と質問すると、春川氏は「私はそう思います。やっぱり不自然ですよね」と同意し、

「記者会見なんで政策の細かいことを言うときは『prime minister』と『president』って言うんでしょうけど、(会見の)頭の『昨日はおいしいおすしをご馳走になった』っていうところは、やっぱり普通はシンゾウって言いますよね」

と違和感を露わにした。

呼び方については、インターネット上でも「寿司屋では『シンゾウ』って言ってたのに。これがもし付き合い始めのカップルだとしたら、このカップル不安」「シンゾーだけ浮いてたね」「一方的に他国の大統領をファーストネームで呼ぶお姿があわれでもあり滑稽でもあり」などと不自然さを指摘する声があがっている。