小顔になるのは食べ物のせい「固い物を食べない→『あご』が弱体化」

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女性のあこがれのひとつである小顔。八頭身なんて言葉があるように、顔や頭の大きさは誰もが気になるテーマだ。

日本人の小顔化はなんと紀元前300年ごろから始まっている。弥生時代に日本に持ち込まれた稲作が、噛む力を弱めて顔を小さくしていったのだ。

■実はソースな日本人

人間を生物学的に分類すると、ネグロイド、コーカソイド、モンゴロイド、オーストラロイドの4大人種に分かれ、日本人はモンゴロイドに分類される。さらに日本人の顔は大別して2種類あり、その時代の名をとって縄文(じょうもん)顔と弥生(やよい)顔と呼ばれている。それぞれの顔のおもな特徴をあげると、

●縄文顔
・四角/長方形の角ばった輪郭(りんかく)
・二重で大きい目
・彫りの深い立体的な顔立ち
・濃いまゆやひげ

弥生
・丸/だ円の面長な輪郭
・一重の細い目
・起伏の少ない平たんな顔立ち
・薄いまゆやひげ

で、昔流行(はや)った言葉なら、縄文はソース、弥生はしょう油顔だ。外国人による風刺画では、日本人はまさに弥生顔で描かれているだが、意外なことに源流はその反対で、縄文顔こそが生粋(きっすい)の日本人顔なのだ。

縄文人は紀元前14,000〜300年ごろに日本に来たと考えられ、土器や住居など近代文明の祖となった。農耕もおこなわれていたようだが、シカやイノシシなどの獣、魚、貝、ドングリやトチのような堅い木の実が主食だったと推測されている。

その後北東からやって来た弥生人は、鉄器や青銅器に代表される高度な文明とともに水耕栽培を持ち込み、米をはじめとする穀物を日本の主食にしたのだ。

縄文顔と弥生顔の違いは何か? もともと寒冷地に住んでいた弥生人は、寒さの影響を受けにくくするために起伏の少ない顔立ちになったと考えられている。高い鼻や彫りの深い目は抵抗が大きく、凍傷になりやすいからだ。

ただし、輪郭に関しては気候だけとは言い切れず、食生活も大きく影響している。米や麦を主体にした食事は、ドングリやトチと比べはるかに柔らかいからだ。柔らかい食べ物は強い力を必要としないため、大きなあごも筋肉も必要としない。

角ばった輪郭が細くなったのには、食生活の違いが強く影響しているのだ。

■粗食は小顔の敵?

食生活で顔が変えるなら、現代でも起きるのか? 答えはYesで、日本人の顔はこの数年で大きく変化している。平成23年度のデータでは20代男性の平均身長は171cm、女性は157cmで、50年前と比較すると男女とも10cm近く高くなっている。

江戸時代は男性が155〜158cm、女性は143〜146cmほどだったとされているので、この50年で驚異的な伸び率を示しているのだ。

長身になるにつれて、顔も大きくなっているのか?(独)産業技術総合研究所の資料から、現代人の年齢、身長、顔の長さ(頭の頂上からあごまで)、あごの幅の平均値と身長対比をあげると、

・(男性)82.0歳 … 161.5cm / 230.8mm(14.3%) / 114.5mm(7.1%)
・(男性)37.7歳 … 169.9cm / 231.9mm(13.7%) / 109.6mm(6.8%)
・(女性)79.3歳 … 149.9cm / 217.2mm(14.5%) / 107.9mm(6.7%)
・(女性)37.3歳 … 158.6cm / 217.7mm(13.7%) / 102.6mm(6.4%)

で、顔の長さはさほど変わらないものの、身長が伸びたおかげで6.9〜7.0頭身から7.3頭身へと変化した。対してあごの幅は男女とも5mmほど短くなり、小顔化が進んでいるのだ。

平均身長が伸びたのは、医学/科学の発達にともない栄養価の高い食品をバランスよくとれるようになったことにほかならない。対してあごは、食生活の変化によって噛む力が低下し、結果的に細くなってしまったのだ。

時代ごとの食事を再現し、噛む回数をシミュレーションしたデータによると、現代の食事は620回で済むのに対し、江戸後期は1,012回、弥生時代になると3,990回にまで跳ね上がる。固いものは長く保存できる傾向があるので、昔ほど食べ物が入手しにくかったのが読み取れるデータだ。

対して現代のように柔らかいものが主体の食事では、運動量が減りあごの小さい小顔になるのも当然の結果と言えるだろう。

■まとめ

もし小顔を目指すなら、固い物は食べず、なるべくあごを使わないようにすれば実現可能だろうが、健康にはほど遠いので決しておすすめできない。

噛む回数が少ないと満腹感が得られず食べ過ぎてしまい、丸飲みした食べ物は消化器官に負担をかける。ルックスを優先するあまり健康を犠牲にしてしまったら元も子もないから、よく噛んでおいしく召し上がっていただきたい。

(関口 寿/ガリレオワークス)