写真左から、ニッポン放送サッカーパーソナリティ煙山光紀アナウンサー・洗川雄司アナウンサー、ニッポン放送サッカー中継チーフディレクター木之本尚輝氏。 今夜のヨルダン戦担当は煙山アナです。

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いよいよ今夜、ブラジルW杯出場をかけたアジア最終予選・日本×ヨルダン戦がキックオフとなる。この試合をラジオ独占中継するのがAM1242ニッポン放送(22時55分〜)。ニッポン放送煙山光紀アナウンサー・洗川雄司アナウンサー2人のサッカーパーソナリティと、同じくニッポン放送サッカー中継チーフディレクター木之本尚輝氏に、ヨルダン戦を控えた日本代表の課題や今後の展望についてお聞きします。
(前編はこちら)


《闘莉王はなぜ呼ばれないのか?》
── 注目のヨルダン戦。この試合に勝てばブラジルW杯出場が決定します……が、今回はケガ人が多いですね。

洗川 内田選手は間に合いましたけど、長友・本田・宮市・佐藤寿人……

煙山 僕は、今の日本代表は本田圭佑選手のチームだと思っていて、苦しい展開になったときに、彼に頼りがちです。だから、かえって今回のように本田選手がいない中で、むしろ香川選手がどんなプレーを見せるのか、というのが注目ですよね。

── やはり注目は香川真司と。

煙山 本田選手がいない時にこそ、もっと自我を出すというか、存在感を出せるようになると、本田選手が戻ってきた時にも遠慮しないでできるんじゃないのかなと。そのキッカケになればいいなと思います。今って、本田選手と香川選手がかけ算にならないというか、足し算にもなっていない状況なので。

── ディフェンス陣はどうでしょう? 特にお聞きしたいのが、闘莉王選手。彼はどうして代表に呼ばれないんでしょうか?

煙山 未だによくわからないです。そんなに力が落ちたという話も聞かないですし。呼ぶと使わないと行けないから呼ばないのかなぁ、くらいしか思いつかないんですよね。

── 取材されている皆さんでも、わからないんですね。

煙山 僕もいろんな人に、闘莉王選手について聞いているんです。「なんで彼は呼ばれないんですか?」と。でも、明快な答えをくれた人は一人もいないですね。「呼んでもいいんじゃないですか?」と(笑)。

── 監督が使いにくいんでしょうか?

煙山 う〜ん、でも岡田さんは使っていたわけだし、単にザッケローニ監督の好みなのか……でも、去年の試合でも、今野・吉田が揃わないことって何度かあったじゃないですか。呼んでもいいと思うんですけどね。サブ扱いができないキャラだから、という理由しか思いつかないんですよ。

洗川 一度、闘莉王選手本人にA代表について聞いたことがあるんです。でも、苦笑いをしながら「もうないでしょ」と。本人の中でも、あっさり引き下がるのかなという印象を受けたんですけどね。でも、闘莉王選手を呼んでいたら、ここまで吉田選手は育っていないかもしれないですよね。

煙山 だから、最後に呼んでも驚かないといえば、驚かないし。まあ、最後にいきなりも難しいでしょうけど。でも、本人は、ものすごく出たいと思っているはずなんですよ、ブラジルなんだから。

木之本 吉田・闘莉王の2枚を一回見てみたいですよね。

煙山 でも、ザッケローニ監督は今野選手こそ外さないですからね。外国人の監督って、屈強なディフェンダーを嫌うことがたまにあって、トルシエにしても3バックは、宮本とか、中田浩二とか、森岡とか、テクニシャン系ばかり。攻撃の起点として考えることが多いですよね。


《今のままだと、W杯本戦で勝てない》
── FW陣はどうですか?

煙山 ワントップは誰になるのか……そもそも、ワントップでいいのか、という問題もあるんですが。ザッケロー監督は、予選は4-2-3-1で行くと宣言しているんですけど、やっぱり3-4-3という好きなフォーメーションをやりたがっているらしいんですよ。予選を突破したら、本格的に取り組むんじゃないかなぁと思っていて、そうなると、ウィンガータイプの選手起用が多くなってメンバーの様相が変わってくる。それに、スリーバックになったら、闘莉王も戻ってこれるかもなぁと。今のままだと、上積みがないというか、もう1パターン欲しい気がしています。パンチがないんですよね。

洗川 そもそも、複数のオプションを目指すっていうのは、ザッケローニ監督が就任当初から言っていたことですからね。それをできるようにするためにも、早めに予選突破を決めた方がいいでしょうね。予選以降のことを考えると、いつもの同じメンバーではない、新しい力がそろそろ出てきて欲しいですね。

煙山 はやく次の準備をしないと……今のままだと、W杯本戦で勝てないと思うんですよね。

木之本 だからこそ、ヨルダン戦の期待はとにかく「突破すること」。それ以外はないですよね。

煙山 キレイなのは、ここで予選突破を決め、一度代表の流れを切って次へ着手できるようにすること。だから今回は、アジアの厳しさの中で強さを発揮してくれる岡崎選手あたりに、泥臭く決めていただきたいです。

木之本 単純に、岡崎選手がいたほうがいいサッカーになりますよね。

煙山 本田・岡崎・長友選手のような「泥臭い選手」は絶対に必要だと思いますね。巧い選手はいっぱいいるんですけど、頼りになるのはこの3人。アジアでグッチャグッチャの戦いになったときに踏ん張ってくれるのが彼らです。でも、W杯本戦になったら、逆に宮市選手のように一芸に秀でた選手が必要だと思うんですよ。本戦は「とにかく勝てばいい」という人もいるんですけど、僕はその意見とは違っていて、僕の感覚では本戦は「品評会」。だから内容も見たい。「ニッポンって、こんなにいいサッカーをするんだよ」っていうのを見せたいんですよね。

── 日本代表がさらなる上積みをするために、気になっている選手はいますか?

煙山 今回はケガもあって呼ばれていませんが、やっぱり宮市選手かなぁ。3-4-3になると、宮市選手の突破力がまた必要になってくる気がするし。去年のオリンピックでも永井選手のスピードは驚異的だなぁと思ったし。でも、いつものフォーメーションだと、彼らがハマる場所がないんですよね。


《ラジオは感情を爆発させてもらうメディア》
── ヨルダン戦の死角、というと何になりますか? 特にない?

煙山 いや、アウェイだからなぁ。審判もどうなるかわからないし。WBCの台湾戦みたいな苦しみ方をするんじゃないでしょうか。試合前はみんな大丈夫だろう、と思っていても、意外とすんなりとは行かないという。ヨルダン戦って日本ホームの時は……

洗川 6-0でした。夢の6-0。ゴール裏の洗川が何度も呼ばれる、みたいな。今回はそこまでの忙しい状況にはならないと思います。

煙山 日本ホームの試合ではヨルダンも超ビビっていましたからね。今回は向こうのホームなので、そんなこともないとは思いますけど。

── 今回のWBCで、ラジオのスポーツ中継に興味を持った方も多いと思います。サッカー中継の聴きどころはどこになるでしょうか?

煙山 聴いている人も一緒になって熱くなれるような中継を目指したいですね。状況も伝えていながら、感情的な部分を出していくと。結構、ラジオならではの「切り取り方」をしているので。テレビ中継の場合はもう「見えている」ので、視聴者は100人いれば100通りの見方をすると思うんです。でも、ラジオの場合は音だけなので、我々の責任編集において「この試合はこういう試合である」「ここがポイントで、この選手が活躍していて、こいつが物足りなくて、こいつが熱いプレーをしている」と提示していくわけです。

── それは結構、ニッポン放送ならではですよね。

煙山 戦術がどうとか、ディテールじゃない……ゴールはゴールだ!という。もちろん、細かい部分もちゃんと説明はしますけども、聴いているリスナーにとっては「日本が点を取った!」ということに感情を爆発させてもらうメディアだと思います。ラジオは、エモーショナルなメディアなので。だから、リスナーもエモーショナルな部分を乗っけて聴いていただければなぁと思います。

── エモーショナル、という部分では、サッカーパーソナリティの個性も出てきますよね。

煙山 でも、結構同じになっちゃうんですよ、選手の感覚とこっちの喋り手の感覚って。選手が油断してるとこっちも油断しちゃうし、すごくいい試合だとこっちも乗ってくるし。そういう意味では、選手・現場と一体化して喋っているので、リスナーの皆さんもラジオの前で一緒に、スタジアムにいるような気持ちで参加していただきたいですね。音がよく伝わって、現地感というかライブ感がテレビ以上に伝わってくると思うので、そういう部分をこれまでラジオを聴いたことがない人にも楽しんで欲しいなぁと思います。


【W杯アジア最終予選 日本×ヨルダン戦】
26日22:55〜 AM1242ニッポン放送でラジオ独占中継
サッカーコメンテーター:三浦淳寛(元日本代表)
サッカーパーソナリティ:煙山光紀アナウンサー
(オグマナオト)