メジャー入りを宣言していた大谷の一本釣りを強行した日本ハム。実は「巨人はドラフト2位で大谷を指名する」という情報をキャッチし、迎撃策に出たというのが真相だった。
 マスコミを賑やかせているのが、日本ハムがドラフト1位で単独指名し、独占交渉権を得た花巻東・大谷翔平投手(18)の身の振り方。日本初となる「高卒→即メジャー」が実現するかどうか、日米の球界が注目している。
 さっそくというか、ドラフト翌日の10月26日、日本ハムの山田正雄GMと大渕隆スカウトが岩手県花巻市内の花巻東高を訪ね、指名の挨拶をしたが、メジャー挑戦を宣言している大谷は、校内にいたにもかかわらず同席せず、佐々木洋監督との面談にとどまった。

 前日のドラフト後、大谷は「評価してくれてうれしいが、アメリカでやる決断をした。(日本ハム入団は)現時点では可能性はゼロ」と会見していたが、まさしく難航が予想される流れ。それでも「現時点では」と注釈を付けたように、この先、日本ハム入団に方向転換する可能性は否定できないという。
 「時間はかかるでしょうが、逆転の可能性はある。大谷が面談を拒んだのは、日本ハムが嫌いなのではなく、指名された結果にあるのです。もし、唯一獲得の意思を表明していた日本ハムが1位指名を断念してくれたら、そのまま全球団が見送りとなり、指名漏れ選手と見なされるはずだった。日本球界では12球団の実行委員会の申し合わせで、ドラフトを拒否して直接海外でプレーした選手は、日本球界に復帰する場合、(海外球団との)契約満了から3年(大学、社会人は2年)の縛りがある。が、指名漏れならこれに該当しないのです。大谷もそれを知っており、即メジャー挑戦で良い結果が得られない場合、日本球界復帰も考えていた。大学に進学したと思って4年間、アメリカで経験を積み、その時点で日本のドラフトにかかってもいい、と。しかし、日ハムの強行指名でぶち壊しになり、心の整理がまだついていないのです」(地元放送局スタッフ)

 大谷の場合、巨人や阪神といった特定の人気球団に入りたいといった理由から、ドラフト指名を拒んでいるのではない。志はもっと大きく、高校生史上最速の160キロ、高校通算56本塁打の長打力がどれほどのものなのかを世界最高峰の舞台で試してみたいという意気込みに起因する。
 しかし、その夢に横恋慕したのが日本ハム・栗山英樹監督というのが解せない。かつては『熱闘甲子園』(テレビ朝日系列)のキャスターを務め、個人的にも佐々木監督と親しかった。大谷の夢も熟知していたはずだ。栗山監督と親しいマスコミ関係者が解説する。
 「個人的には、アメリカに行って頑張ってこい、というのが栗山監督の本音でしょう。大谷君からすれば、“何すんだ”という思いだろうし『本当に申し訳ない』と話していましたからね。それでも敢えて1位指名を断行したのは、巨人の影が透けて見えたからなのです。昨年のドラフトで東海大の菅野智之投手(今ドラフトで巨人1位指名)を1位指名しながら交渉さえ拒まれた過去があるだけに、球団幹部には今度ばかりはそうはさせん、という強い思いがあったのです。ドラフト4日前の10月21日に大谷がメジャー挑戦を正式に表明したことで各球団が一斉に手を引いた。しかし、それでも巨人は意表をついて大谷を2位指名するのでは、という情報は消えなかった。実際、ほとんどのマスコミが大谷のメジャー決断を伝える中で、巨人系のスポーツ紙だけが『大谷メジャー断念』と他紙とは180度違う報道をしていた。巨人首脳は巨人が指名すれば、十分に引っ繰り返せると踏んでいたのです」

 巨人としても本来なら大谷を1位指名したかっただろうし、かといって原辰徳監督の甥であり、巨人入りのために一浪してまで待った菅野を指名しないわけにもいかない。そこでひねり出したのが大谷の即メジャー表明だった。全球団が大谷の1位指名を見送れば、巨人は2位指名できる。
 一方、今年も菅野の指名が他球団と重なり、巨人が抽選で外れるような事態になれば、大谷を外れ1位で指名する−−ドラフト会場の舞台裏では、そのような情報が囁かれていた。

 契約金、年俸総額で5億円を準備するドジャースを筆頭にレッドソックス、レンジャーズ入りが有力視されているものの、大谷は周囲の人に「これからどうなるか、想像がつかない」と話しているという。
 ダルビッシュが付けていた11番を継承する可能性は十分ある。