ヤクザの設定で本物のヤクザが演じたという『サウダーヂ』富田監督の仰天発言にイギリス人もびっくり!
ロンドンで開催された日本映画祭ジパング・フェストで映画『サウダーヂ』が上映された。上映後には富田克也監督と脚本の相澤虎之助がQ&Aに登場し、イギリス人には少々わかりにくい右翼とヤクザの違いなど作品について解説した。
『サウダーヂ』は、富田監督の地元である山梨県甲府市を舞台に移民と土地っ子たちの姿を描いた作品。相澤は印象的なタイトルについて、「サウダーヂという言葉は、ポルトガル語で、過去、故郷への思いと未来に対する祈りも含まれています」と説明。富田監督は、舞台となった実在の団地・山王団地(サンノーダンチ)がブラジル人の発音ではサウダーヂに近かったことも、タイトルを決める要因になったと明かした。
映画の中で使用されるヒップホップについて問われた相澤は、主人公のヒップホップ・グループは架空のものだが、主演の田我流は実際にstillichimiyaというヒップホップ・グループのメンバーであると回答。「映画の中では右翼的ですが、本当の彼はそうではないです」と不況にあえぐ地方都市で、行き場のない怒りを移民にぶつける土木作業員のラッパーを演じた田我流について語った。
また、同作に登場するスーツ姿の人物について「ビジネスマンではなくヤクザで合っているか?」という確認質問も出た。富田監督は「ヤクザの設定で、本物のヤクザに演じてもらっています」と観客を驚かせ、「日本にはヤクザみたいな右翼があります。右翼はヤクザではなく政治団体なのですが、車で大音量のスローガンを流したりしています。それで、あのラップをやっている彼を『自分たちのところに来いよ』と誘いにきます。でも、余計な説明かもしれませんが、演じている人たちは右翼ではなくヤクザです」と詳しく解説していた。
『サウダーヂ』は今回の同映画祭クロージング作品でもあり、会場には『エンカウンターズ』の飯塚貴士監督なども姿を見せた。和田淳監督の『グレートラビット』と黒坂圭太監督の『緑子/MIDORI-KO』と共に特集上映された『エンカウンターズ』は、芸術性の高い2作とは真逆の素人っぽさが味になっている作品。手作りならではの抜け感がおかしい短編だ。それぞれの映画制作者、開催者に向けられた拍手のうちに映画祭は終了した。(取材・文:山口ゆかり / Yukari Yamaguchi)