ロンドン五輪まで62日。テレビではそう言っていた。そうした中で日本男子のサッカーは、トルコに敗れ、オランダに勝ち、そしてこれから、エジプトと準決勝進出を懸けて戦う。
 
オランダ戦では、宇佐美、高木、指宿の海外組がそれなりのプレイをみせ、存在感をアピールした。これで4―2―3―1の3は、メンバー争いがいっそう激化した。フル代表に選ばれている4人(香川、宮市、清武、原口)も候補と言えば候補。さらに言えば、オランダ戦で活躍した斉藤、従来から選出されている東、永井、大津等も有力な候補になる。
 
ザッと数えただけでもその数は10人。五輪のメンバー枠は18人なので、この中からメンバー入りしそうなのは通常4人。多く見積もっても5人だ。いったい誰が選ばれるのか。激戦に拍車が掛かった状態にある。
 
それにオーバーエイジ問題が輪を掛ける。所属クラブがオッケーするかどうかはともかく、成績重視の視点で考えれば、本田圭佑は外せない存在になる。となると、先に述べた4―2―3―1の3の枠はさらに一つ減ることになる。
 
香川、宮市。実績重視で考えれば、彼らも外せない戦力になる。本田同様、所属クラブが認めるかどうかも重要な問題になるが、もし招集が可能なら、五輪チームはA代表に近づく。さらにオーバーエイジ枠で、守備的MFと弱点と言われるセンターバックに遠藤、今野、吉田、闘莉王などから2人選び、そして右サイドバックにA代表メンバーに帯同している酒井宏樹を加えれば、スタメンの11人は、それこそフル代表に近い顔ぶれになる。

GK権田、DF酒井宏、闘莉王、鈴木、酒井高 守備的MF遠藤 扇原(村松?)攻撃的MF香川、本田、宮市 FW大迫(指宿)という準A代表的なメンバーが完成してしまう。前にもこのブログで述べたが、だったら監督も関塚サンではなく、ザッケローニでいいんじゃないかという話になる。話のベースは五輪チームではなくA代表になる。A代表に五輪チームの誰を加えるかという発想にした方が、はるかに分かりやすい。

その一方で、日本のU−23が、オランダに勝利した同じ日に、Jリーグでガンバ大阪が敗れ、その降格危機が叫ばれると、「遠藤をオーバーエイジ枠に選出されるのは困る」などというチーム関係者のコメントがメディアを通して紹介された。

そもそも、なぜ遠藤なのか。遠藤が五輪に出たことがないので、五輪への思いが人一倍強いという話が駆け巡り、いつしか遠藤はオーバーエイジ枠を使う場合の有力候補になっていたわけだが、僕はこの五輪報道が、確かな拠り所のない根無し草のようなものに思えて仕方がない。

ロンドン五輪に臨む五輪チームのテーマとは。目的とは。経験の少ない若手に活躍の場を与えようとしているのか。本気で勝ちに行こうとしているのか。日本は、そこのところがいつも曖昧だ。五輪チームの位置づけが明確ではないのだ。その「日本チーム」はとても漠然としている。継続性も一貫性もない。そもそも監督の決め方がなってない。密室的だ。なぜ関塚サンなのか。

五輪チームをいくら取材しても、実態が不明確なので突っ込みどころが見当たらないのだ。過去2大会は、メダル候補と騒がれながら本大会でいきなり2連敗。これ以上ない無様な、恰好悪い醜態を世の中に晒しているが、実態がよく分からないチームなので、怒りようがない。追求する気が湧かないのだ。メディアも同様。深刻な問題として受け止めようとするものはほとんどいない。

サッカーは人気競技で、日本人の好きな団体競技でもあるので、大会前は他の有力候補に申し訳ないほど、高い注目を集めることになる。大して強くもないのに「メダル候補」といってもてはやされる。大会後とのギャップはあまりにも大きい。不自然さはよけい目に余る。気がつけばなかったことになっている。反省、検証をしても購買に繋がらないことを知っているメディアは、意図的に目を反らそうとする。山本ジャパン、反町ジャパンにサッサと幕を引き、A代表のW杯予選の話に、何事もなかったかのように移ろうとする。負けた途端、扱いは突如、軽くなる。

いつまでたっても、五輪の男子サッカーの定義が不確かなままである理由だ。いったいこのチームの果たす意味はなんなのか。本大会に限りオーバーエイジ枠を認めた五輪の男子サッカーは、存在そのものに客寄せパンダ的な性格がある。エキシビションスポーツなのかチャンピオンスポーツなのか。女子は後者だと断言できるが、男子の場合は怪しい限りだ。

そうした曖昧でいい加減なものと、日本サッカー界はどう向き合うのか。それでも結果を求めて邁進するなら、オーバーエイジ問題や監督問題は、もっと議論されるべきだと思う。反省検証もしっかり行われなければならない。

繰り返すが、僕の意見は「五輪チームも監督はザッケローニで」になる。いま日本サッカー界を眺めた時、最もグレーなものは何か。分かりにくいものは何か? といえばザッケローニの代表監督としての能力だ。選手の世界的な力より、それははるかに分かりにくい。その采配力を五輪という場で探ってみるのだ。ベスト16に行けば続投。それ以下なら……。
 
山本サンや反町サン同様、関塚サンに経験を積ませる意味はない。2014年の好成績を願うならば。僕はそう思うのだ。