・役に立たないチャンスビルディングポイント

サッカーの統計データは扱いが難しい。野球の打率などと違って、数値だけではチーム・個人のパフォーマンスを測りきれない。そんな中、(株)データスタジアムが「フットボール・ラボ」というサイトで「チャンスビルディングポイント(CBP)」というデータを公開している。

CBPのスコア算出方法は次の通りだ。

・あるチームが攻撃していきシュートに到達した場合、シュートチャンスの構築に貢献したプレーヤーを評価

・シュートチャンスの構築に貢献したプレーヤーが行ったプレー内容によってスコアを付与

・スコア算出方法

1.該当するエリアでのプレーが起こった場合、そのエリアにおけるシュート到達率を算出

2.当エリアにおけるプレーの成功率から、難易度評価を考慮して算出


その他の詳細については以下のリンクで確認してほしい。

http://www.football-lab.jp/pages/about/
http://www.football-lab.jp/pages/cb_point/


なかなか興味深い試みなのだが、このサイトのデータには、致命的な欠点がある。そのためパフォーマンス分析には不向きなデータになってしまっている。


・ふたつの欠点
欠点はふたつある。ひとつはプレーゾーンに注目するあまり、相手の守備を全く無視している点。もうひとつは「シュートに繋がるプレー=効果的なプレー」と評価してしまっている点だ。

以下の図を見てほしい。


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ハーフウェーライン付近からの短い縦パスだ。CBPの評価ではたいして加点されないパスだろう。

それでは次の図を見てもらおう。


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DFラインの背後へ抜け出したアタッカーBへのスルーパスだ。一点モノの好プレーである。


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バイタルエリアへ侵入するアタッカーBへのパスだ。Bには2トップへのラストパスだけでなくミドルシュートという選択肢もあるだろう。


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守備側がドン引きしている。ここから崩すのは骨が折れそうだ。


御覧の通り、同じゾーンからのパスであっても、守備側の態勢によって、局面は様変わりする。パスだけでなく、シュートでも話は同じだ。シュートを打ったといっても、ドフリーで打ったのと、ガチガチにマークされて打ったのでは全然違う。「シュートに繋がるプレー=効果的なプレー」では決してないのだ。

そんなわけでCBPは、実際のチーム・選手のパフォーマンスを全く反映できていない。

それは次のコラムを読んでもよく分かる。

第6節時点でのJ1チーム考察 攻撃力が高いチームはどこか?

リードを守ろうと引きこもる相手チームを押し込んで、無理目なシュートを打ちまくっていれば、CBPは高得点を記録するようになっている。そういう訳でガンバ大阪など低迷しているチームが、上位に来ているのだ。


・簡単な攻撃評価法
チームの攻撃システムを評価するとき、どのゾーンでフリーで前を向けたかを見るといいだろう。


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赤いゾーンでドフリーでボールを受けられたなら、ゴールは決めたも同然だ。

青いゾーンで自由になれたならば、あと一本のパスで決定機をつくることができる。ドリブルで一人かわせばGKと一対一だ。ミドルシュートという選択肢もある。

緑のゾーンならばもう一工夫必要だろう。単純にゴール前へパスを放り込んでも、ディフェンスに跳ね返されてしまう。シュートを狙うには距離が遠すぎる。

赤や青のゾーンで頻繁にボールを受けられるなら、攻撃は機能していると考えていいだろう。逆に緑のゾーンですらフリーになれないなら、お先真っ暗だ。

ゴールハイライトを見るときは、どのゾーンにボールが入ったかに注意して見ると面白いかもしれない。