黄岩島問題でフィリピン非難…中国報道「軍事手段も視野」
中国とフィリピンがともに領有権を主張する南シナ海・中沙島の黄岩島(スカボロ礁)周辺で、両国の監視船など対峙している問題で、中国新聞社は「フィリピンは小細工を繰り返して、事態をエスカレートさせている」として、「中国政府は軍事的手段でフィリピンの挑発に対応することも考慮している」と紹介する論説を掲載した。
黄岩島はサンゴによって形成された環礁で、一部が海面上に出ている。同島で中国とフィリピンの監視船や警備艇の「対峙(たいじ)」が始まったのは4月上旬だった。
悪天候を避けて環礁内部の比較的穏やかな海に停泊した中国の漁船12隻をフィリピン海軍軍艦が「捜査」。サンゴや魚介類を密猟した証拠があったとして、中国人乗組員の身柄を拘束しようとした。近くにいた中国の監視船2隻が駆けつけて阻止。その後、双方が対峙(たいじ)することになった。
両国政府は、黄岩島領有の主張を繰り返し、非難の応酬を繰り返すなど、問題解決の糸口は見えてこない。
中国政府・外交部に所属する外交学院・戦略と衝突管理研究センターの蘇浩教授は、中国政府が外交的解決を表明しつづけてきたことについて「フィリピンは、中国の紛争処理に対する判断でミスを犯している」と指摘した。
蘇教授によると、フィリピンの対応は中国にとって「主権と領土の構成に対する公然たる挑戦」ということになる。中国政府は当初から、外交手段による平和的解決を強調してきたが、中国外交部の傅瑩副部長は7日、フィリピン側との交渉で、「フィリピン側が事態を拡大していることに対して、中国側は各種の準備をしている」、「中国は(同問題を解決する)力を持っている」と告げたという。
蘇教授は、傅副部長がフィリピン側と交渉して以来、中国の強硬姿勢も目立つようになったと指摘。「中国政府は大局を見る力があり、極めて自制してきた」が、現在は「軍事的手段によってフィリピンの挑発に対応することも考慮している」との見方を示した。
中国人民大学国際関係学院の時殷弘教授も、中国政府の「口調」が変化したことに注目。「中国政府は相当な忍耐をしてきた。過去1カ月に多くの外交努力をしてきた。中国は平和的に問題を処理しようと決意している」ことを事実とした上で「相手があまりにもかたくなであるならば、(中国政府が強硬姿勢を見せない場合)相手の挑発を力づけてしまうミスを犯すことになる」との考えを示した。
中国では、国家品質監督検査検疫総局が9日、全国の関連部門に「フィリピン産の果物の検査検疫を強化すること。調査用に抽出するサンプル数を増やすこと」などと指示した。さらに、上海、広東、江蘇などの多くの旅行会社が「現地には、安全とはいえない要素が存在する」との理由で、フィリピン行きの団体旅行を取りやめた。
◆解説◆
********** 中国では、当局による報道の統制がある。黄岩島の問題のようなデリケートな問題については特に、当局が内容を細かくチェックしていると考えるのが自然だ。
専門家の意見として紹介したが、「中国政府は軍事的手段も考慮」という記事内容は、中国当局によるフィリピン側に対する何らかの意思表示と考えることができる。(編集担当:如月隼人)