中田英寿も注目したモンゴル/森本高史(FCデレン墨田CEO&フィリピンサッカー協会技術顧問)インタビュー
[インタビュー第一回 /第二回]
――モンゴルという国についてお伺いします。日本の人は、モンゴルという国に馴染みがない人がほとんどだと思います。
森本 やはり草原とかのイメージですよね。ただ草原は地方のことであって、首都のウランバートルは人口150万人ぐらいの大都会です。高層ビルもどんどん立っています。土地も高騰していてマンションが次々に立ち、そのせいでサッカー場がなくなっている部分もあります。売ったり貸したりしたほうが儲かるので。だから、施設ができない。
2007年ぐらいに中田英寿と朝青龍がサッカーをやった話がありましたよね? あれは、中田英はサッカーをやりに行ったんじゃないんですよ。高級マンションを買いに行ったんです。当時は安くて、住宅ブームになる前のことでした。
――値上がりした所で売るために。
森本 高級マンションを買いに行って、たまたまヒマだったからサッカーをやりに行った。彼には先見の明がありますね、今はすごく値上がりしていますから。モンゴルは、だからすごく発展しています。ただ地方は過疎化が進んでいますけど。
――ウランバートルに人が集まってしまうと。
森本 気候の話をさせてもらえれば、10月ぐらいからマイナスになります。11月終わりから2月ぐらいまではマイナス30度になりますね。ただ日本と違うのは、朝と夜で温度差がかなりあるので、外ではサッカーできない厳しい環境です。5月でも、ちょっと雨が降ると5度ぐらいまでになったり。
――基本的に、モンゴルって寒い国なんですね? ともすると草原のイメージで、暑い国なのかなという印象さえあったんですが。
森本 いや、夏には30度を超すこともありますよ。でも夜になれば10度まで下がるし、環境的には厳しいです。だからこそ、人々は強靭なメンタルを持っているのかもしれない。僕も正直マイナス30度の中外に出るときは、サッカーで円陣を組んで「ヨーシいくぞ!」ってやりますよね、あれぐらいの気合を入れて外出します(笑)。生半可な気持ちなら、家にいたほうがいいし。
――twitterで停電があったことを紹介されていましたが、インフラも未発達な部分がありそうですね。
森本 そうですね、水道がある日突然止まったりとか。あとはよく日本で言う欠陥住宅。オーナーが相当に支出を削って、シャワーの取っ手が外れたりトイレが流れたり、アパートが低級か高級か関係なくそういうことがありますね。暖房のパイプラインが壊れたり、いろんなことがあります。
ある時水道が止まっていて、「あれ、出ないな」と放置してそのまま外出したら、水道があるときボンと出て家中水浸しに。そうしたら、近所の人達が雑巾を持って一生懸命拭いてくれて。そういう意味で、日本では孤独死などが取り沙汰されていますが、モンゴルではお互い助けあう環境が整っているのかなと。
――なるほど、素晴らしい話ですね。
森本 そういう温かさは、日本にはないかなと。いや、なかったわけではないですね、昔あったものです。僕が祖父母に聞いたような日本の光景が、今のモンゴルにあるのかなと。
――今後のデレン墨田のビジョンをお聞かせください。
森本 この間ウランバートルで大会があったとき、U-15とU-13の大会でベスト8で敗れました。まだまだ、モンゴルどころかウランバートルでも一番強いクラブではない。地方のチームはもっと身体能力が高い子はいるから。
僕らはまだまだ努力しないといけないし、自前の施設が必要です。これまでは体育館やグラウンドを借りていますが、今は朝7時から練習しています。空いている時間がこの時間しかなくて、他の時間帯はバスケットボールなどが使っている。しかしこの時間だとバスが通ってなかったりして、子供は来るのが大変なんです。
サッカーをやる以上更衣室がなければいけないし、そういう施設も作りたい。経営の安定化をして施設を充実させ、子供たちがより伸びる環境を作っていきたいと思います。そのためには資金集めが重要なので、そこに僕がいるレゾンデートルがあると思います。ここは一歩も譲れない。もっともっと、子供たちが集中できる環境を作っていきたいと思います。
<第四回へ続く>
森本高史(もりもと・たかし)
1978年10月東京都生まれ。東欧やアフリカ、中東といった地域に強いフットボールジャーナリスト。語学堪能で、英語、フランス語のみならず、スペイン語やポルトガル語、ドイツ語も操る。2009年11月、モンゴルでFCデレン墨田を立ち上げU-13、U-10のカテゴリーで選手育成に力を注ぐと共に、モンゴルの慢性的問題である貧困解決や子供の教育問題にも貢献することを目指して活動中。2012年1月、フィリピンサッカー協会テクニカル・コンサルタントに就任。
●Twitter:http://twitter.com/#!/derensumida2009
●デレン墨田公式ブログ:http://fcderensumida.blog.fc2.com/
――モンゴルという国についてお伺いします。日本の人は、モンゴルという国に馴染みがない人がほとんどだと思います。
森本 やはり草原とかのイメージですよね。ただ草原は地方のことであって、首都のウランバートルは人口150万人ぐらいの大都会です。高層ビルもどんどん立っています。土地も高騰していてマンションが次々に立ち、そのせいでサッカー場がなくなっている部分もあります。売ったり貸したりしたほうが儲かるので。だから、施設ができない。
――値上がりした所で売るために。
森本 高級マンションを買いに行って、たまたまヒマだったからサッカーをやりに行った。彼には先見の明がありますね、今はすごく値上がりしていますから。モンゴルは、だからすごく発展しています。ただ地方は過疎化が進んでいますけど。
――ウランバートルに人が集まってしまうと。
森本 気候の話をさせてもらえれば、10月ぐらいからマイナスになります。11月終わりから2月ぐらいまではマイナス30度になりますね。ただ日本と違うのは、朝と夜で温度差がかなりあるので、外ではサッカーできない厳しい環境です。5月でも、ちょっと雨が降ると5度ぐらいまでになったり。
――基本的に、モンゴルって寒い国なんですね? ともすると草原のイメージで、暑い国なのかなという印象さえあったんですが。
森本 いや、夏には30度を超すこともありますよ。でも夜になれば10度まで下がるし、環境的には厳しいです。だからこそ、人々は強靭なメンタルを持っているのかもしれない。僕も正直マイナス30度の中外に出るときは、サッカーで円陣を組んで「ヨーシいくぞ!」ってやりますよね、あれぐらいの気合を入れて外出します(笑)。生半可な気持ちなら、家にいたほうがいいし。
――twitterで停電があったことを紹介されていましたが、インフラも未発達な部分がありそうですね。
森本 そうですね、水道がある日突然止まったりとか。あとはよく日本で言う欠陥住宅。オーナーが相当に支出を削って、シャワーの取っ手が外れたりトイレが流れたり、アパートが低級か高級か関係なくそういうことがありますね。暖房のパイプラインが壊れたり、いろんなことがあります。
ある時水道が止まっていて、「あれ、出ないな」と放置してそのまま外出したら、水道があるときボンと出て家中水浸しに。そうしたら、近所の人達が雑巾を持って一生懸命拭いてくれて。そういう意味で、日本では孤独死などが取り沙汰されていますが、モンゴルではお互い助けあう環境が整っているのかなと。
――なるほど、素晴らしい話ですね。
森本 そういう温かさは、日本にはないかなと。いや、なかったわけではないですね、昔あったものです。僕が祖父母に聞いたような日本の光景が、今のモンゴルにあるのかなと。
――今後のデレン墨田のビジョンをお聞かせください。
森本 この間ウランバートルで大会があったとき、U-15とU-13の大会でベスト8で敗れました。まだまだ、モンゴルどころかウランバートルでも一番強いクラブではない。地方のチームはもっと身体能力が高い子はいるから。
僕らはまだまだ努力しないといけないし、自前の施設が必要です。これまでは体育館やグラウンドを借りていますが、今は朝7時から練習しています。空いている時間がこの時間しかなくて、他の時間帯はバスケットボールなどが使っている。しかしこの時間だとバスが通ってなかったりして、子供は来るのが大変なんです。
サッカーをやる以上更衣室がなければいけないし、そういう施設も作りたい。経営の安定化をして施設を充実させ、子供たちがより伸びる環境を作っていきたいと思います。そのためには資金集めが重要なので、そこに僕がいるレゾンデートルがあると思います。ここは一歩も譲れない。もっともっと、子供たちが集中できる環境を作っていきたいと思います。
<第四回へ続く>
森本高史(もりもと・たかし)
1978年10月東京都生まれ。東欧やアフリカ、中東といった地域に強いフットボールジャーナリスト。語学堪能で、英語、フランス語のみならず、スペイン語やポルトガル語、ドイツ語も操る。2009年11月、モンゴルでFCデレン墨田を立ち上げU-13、U-10のカテゴリーで選手育成に力を注ぐと共に、モンゴルの慢性的問題である貧困解決や子供の教育問題にも貢献することを目指して活動中。2012年1月、フィリピンサッカー協会テクニカル・コンサルタントに就任。
●Twitter:http://twitter.com/#!/derensumida2009
●デレン墨田公式ブログ:http://fcderensumida.blog.fc2.com/
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