連載中の料理マンガに登場する場面が、ネット上の個人ブログや、通販サイト、料理教室ホームページなどにある料理や食材の写真を模写していた可能性があるとして、集英社は「ダシマスター」の連載を中断すると発表した。

ただ、ネットでは連載中断は厳しすぎるとし、「写真を参考にして何が悪い?」といった意見が多く出ている。あるマンガ家も「ツイッター」で、ネットにある料理の写真を「トレースしたら駄目とか正気?」などと疑問を投げかけている。

「頑張って描いているのにパクリ扱いは辛い」

問題になっているのは集英社が月2回発行している青年マンガ誌「グランドジャンプ」に連載中の「ダシマスター」。2009年9月に「ビジネスジャンプ」で連載が始まり、11年11月に創刊した「グランドジャンプ」に移された。単行本は6刊発行されている。原作は早川光さんで、画は松枝尚嗣さんが担当している。

集英社は11年12月7日、公式ホームページで、

「一部の背景や料理、食材等の絵で、ウエブ上の写真画像に非常に類似したものがあることがわかりました」

とし、事実関係を確認するために12月21日発売の号から当分の間休載すると発表した。

ネット上ではかねてから、マンガに登場する料理の絵には元ネタが存在する、などと囁かれていた。マンガと写真を比べる作業もネットで行われていて、フカヒレの姿煮、フォアグラのグリエ、かぶら蒸しなどを見比べるとコピーではないものの、かなり酷似した「模写」に見える。料理以外でも、たけのこや、ブランド豚などもある。

このニュースにネットでは、写真を「模写」するのは褒められたことではないが、連載中断にするのは厳しすぎるのではないか、との声が強い。

「頑張って見て描いたけど、これパクリって言われるのは辛いなあ」
「これは別にトレスじゃないじゃん。写生か参考画像程度でしょ」

といった意見だ。

商業目的の正確な模写は「著作物の複製」

マンガ家の稲光伸二さんは自身の「ツイッター」で今回の問題について、

「ネットの写真をトレースしたら駄目とか正気?しかも料理の写真じゃん!全部自分で作って撮るの?レストラン行って撮るの?想像で描くの?担当の編集は資料も用意しないくせに作家がどうやって描いてると思ってたの?」

と2011年12月9日につぶやいた。

ネット上の写真を「模写」すると、それは違法になるのだろうか。

著作権とインターネットに詳しい弁護士に話を聞くと、一般的な見解として、

「日本にはアメリカのようなフェアユース規定が無いし、マンガという商行為に使っているため、例外を除き、模写したと明らかに分かる場合は著作権違反に相当します」

と説明した。例えば同じ被写体を撮影する場合でも、カメラの角度や照明の具合によって異なった写真が生まれてくる。写真には著作権があり、それをマンガで表現したとしても「著作物の複製」になる可能性が高いという。