原発風景を淡々と映し出す映画『アンダー・コントロール』監督、福島第一原発で働く作業員に同情!「地獄のような状態だった……」
12日から公開される、原発のある風景を冷静な視点で切り取ったドキュメンタリー映画『アンダーコントロール』のフォルカー・ザッテル監督が撮影中のエピソード、そして福島第一原発への思いを語った。
ザッテル監督は、本作を通じて、「原発とはどういうものなのか」を、反対派でも推進派でもない立場から冷静に映し出した。映画には、ドイツの原子炉立屋の内部、制御室、原子炉の様子、廃炉が決定した原発の解体作業の様子……と通常では絶対に撮影することができない風景が映し出される。施設側との粘り強い交渉を続けた結果、必死の思いで撮影権を手に入れたという監督を待ち受けていたのは想像を絶するような過酷な撮影だった。「年に一度のタイミングで、原発は閉鎖されて保守点検されるんだけど、僕らはこのタイミングで撮影をしたんだ。高濃度の放射性物質を避けるために、防護服を着込み、手袋を二重につけた。撮影用具一式も汚染されないよう、絶対に下に下ろしちゃいけない、といわれていたから、暑くて暑くて空気が悪い。原子炉に近づくにつれ、どんどん暑くなって、中は40度を超えたんだ。地獄のような状態だったよ」と、当時を振り返った監督は、テレビのニュースで福島第一原発の作業の様子を見るたびに、胸が張り裂けそうになったという。「僕らは実際にあの場所にいたから、あそこがどれほど地獄のような場所かよく分かる。どれほど暑いかを知っているので。原発で働く作業員というのは、ドイツでも社会的に立場が弱い人が多い。日本でもそうなのかな? 知識の高いエンジニアたちが、あそこで作業員として働いているとは到底思えない」
ドイツの原子力発電所を、3年にわたり撮影し続けてきたザッテル監督は、福島第一発電所の印象をどう受けたのだろうか?「福島第一原発は、ニュースを通じて何度も見た。正直な意見を言っていいかい? 最初に内側の様子を見たとき、あまりの古さに衝撃を受けたよ。結局、原発は一度建てたらそこから新しくしたりするのはとてもお金がかかる。ドイツにも古い原発はたくさんあるよ。でもさすがにそこでの撮影は断られてしまった。やはり、さまざまな欠陥があるのではないかと思ったよ」と話す。
本来は原発推進派だったドイツのメルケル政権は、福島第一原発事故のあと6月には、年までに2022年までに原発全17基の廃止を閣議決定した。ザッテル監督は、福島第一原発の事故が、ドイツ国民に与えた影響の大きさを語った。「チェルノブイリの事故が起きたときは、ロシアの原発は古いからこうなった……という意見が多かった。その反対に、日本はどこよりも技術的に進歩している国という印象が強い。その日本でこういった事故が起きてしまったから、福島第一原発の建屋が爆発した映像を観たとき、ドイツ国民のほとんどが不安に駆られたんだ。推進派のひとたちも、みんながこんな事故がドイツで起きたら大変だ! と、多くの人が意見を変えた。特にメルケル首相はもともと物理学者だから、彼女が推進派から立場を変えたのは大きかったね」
本作を作る上で、あくまで冷静さを欠くことのないように務めたというザッテル監督は、「反対派でも推進派でもない、新たな視点で原発を捉えることで、この映画を観た人がこれから先、原発をどのようにしていかなければならないかをきちんと議論することができるように務めた。この映画を観れば、原発の中でどんなことが起きているのかを冷静に感じられると思うよ。映画に出てくる原発の風景を、恐怖に感じる人もいるし、テクノロジーに心酔するひともいる。ドイツは、昔から家庭の中でも大論争が起きるぐらい、ひとびとが原発問題を語り合ってきた。日本でも、この映画を観てぜひきちんと原発と向き合って欲しいと思うよ」と、メッセージを送った。
映画『アンダー・コントロール』は、11月12日(土)より、シアター・イメージフォーラムほかにて全国順次ロードショー
【関連情報】
・映画『アンダー・コントロール』公式サイト
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