千円札2、3枚もあれば、たっぷり遊べる1円パチンコ。

「パチンコ1玉の貸し玉料金がわずか1円。それまでの1玉4円に比べ、4分の1の料金でパチンコができるわけです。この低料金が長引く不況で遊技代に困っていたファンの心をとらえ、今では1円パチンコは全国のパチンコホールの約半数に導入されるまでになっています」(業界紙記者)

 その1円パチンコが存続の危機にあるという。なぜだ?

「このところの金価格の暴騰のせいです。このまま値上がりが続けば、そのうちに1円パチンコは換金のしづらい、面白みのない遊技になり下がってしまうかもしれません」(業界紙記者)

 東京都全域や千葉県、山梨県の一部などではパチンコの換金用特殊景品として金(金地金)が使われている。都内の金券ショップ店員がこう話す。

「東京都のパチンコ店では金地金1gと0.3gがパッケージされた2種類の特殊景品が使用されています。純度99・99で田中貴金属や三菱マテリアルの刻印が入った本物の金です。もちろん、世界中、どこの貴金属ショップでも当日の買い入れ値で買い取ってもらえます」

 金地金パッケージが導入された1991年当初、金1gの特殊景品は2500円、金0.3gのものは1000円の価格だった。風営法により、パチンコ店は現金や有価証券を景品として提供できない。そのため、パチンコの出玉は一度、特殊景品に交換され、ファンはそれを景品交換所に持ち込み、現金にしてもらう。

 東京都の場合、それが金地金のパッケージで、公安委員会から古物商の認可を受けた「東京商業流通協同組合」と、その事業部門のTUC(東京ユニオンサーキュレーション)が買い取りを行なっている。

「ところが、2006年頃から金価格が高騰し、1g3000円を超えるようになったんです。そのため、金地金パッケージをTUCではなく貴金属商に持ち込む輩やからが相次ぎました。なかには一度に数万円分ものパチンコ玉の貸し玉を受け、まったくプレイしないまま計量器に流し、特殊景品に交換するという極端なケースもあったほどです」(前出・業界紙記者)

 これに音を上げたのがTUCだ。日々、金地金パッケージが大量に流出する。補充しようと思えば、1g3000円以上に高騰した金地金を買い入れなければならない。しかも、それに加えて金地金を1gや0.3gに小分けする加工賃、パッケージ費もかかる。

「これでは経営が成り立たない。それで1gの特殊景品を07年11月に3500円、10年5月には4000円に、0.3gも10年12月に1500円に値上げして、なんとかしのいできました」(TUC関係者)

 ところが、その後も金の値上がりが止まらない。リーマン・ショック以降もギリシャの債務危機、ドル・ユーロ安が続き、通貨や債券の保有リスクは高まるばかり。その反動で安全資産の金を買い求める人が世界中で激増したからだ。そのため、TUCはさらなる値上げへと追い込まれることになってしまった。前出のTUC関係者がため息をつく。

「今年4月に1gの特殊景品を5000円に値上げしました。これで価格改定は07年以来4度目です。ただ、9月初旬に金の先物価格が1g4749円の史上最高値を記録したんです。このままだと5度目の値上げもあり得ますね」

 その5度目の値上げとして囁(ささや)かれているのが、0.3gの特殊景品を2000円にする動きだ。だが、それは1円パチンコにとって大きなダメージになりかねない。1円パチンコは一度大当たりしても、換金額は600円から750円くらいのもの。0.3gの特殊景品が2000円に値上がりすれば、それ以下の出玉はすべてタバコやチョコレートなどの一般景品に交換するしかない。