韓国ミュージカル問題、「日本作品の影響を受けていることは明白な事実」韓国評論家が指摘

写真拡大

公演を目の前に控えながらも、著作権問題に揺れる韓国のミュージカル『美女はつらいの』について、韓国の文化評論家が韓国の著作権意識について批判した。(過去記事:韓国ミュージカル問題)

韓国メディア『デイリーアン』は9月22日、「『美女はつらいの』著作権論争がつらい理由」と題した文化評論家キム・ヒョンシク氏の記事を報じた。

キム氏は、まず韓国のドラマ制作で起きた著作権トラブルの例を挙げる。
「2010年SBSドラマ『大物』を執筆した作家が、作品制作の考え方の違いを理由に途中降板した。作家は後に、したかった話が消え、自分が書いたとは言えないものになったと明かしている」と韓国の例を紹介。今回の著作権問題も、類似のトラブルだとの見方を示す。

「著作物には人格権がある。著作物もひとつの人格的主体としてとらえる必要があるということだ。人間のプライバシーを尊重するように、著作物もそれを公表する際には著者から許可を得なければならない。それを変形する時も、著者から許可を得なければならない」と述べ、作品を修正し変形する行為は、第13条同一性維持権(著者はその制作物の内容、形式ならびに書名の同一性を維持する権利を持つ)に触れるのだと指摘した。

しかし、ミュージカルはそれが無視されていると述べる。
「作家の鈴木由美子は、2つの問題点を挙げてミュージカルの上演差し止めを求めた。1点目は、ポスターに日本の作品が原作であると明らかにすること。しかし、韓国の制作会社はこれを拒否した。なぜなら日本だけでなく、中国やシンガポール、ニューヨークでの上映まで念頭に置いているからだ。2点目は、原作と同ミュージカルの内容があまりにも違い、自身の作品とは言えなくなっていること。これについても、制作会社は2次制作物、つまり別作品であるとしてやはり受け入れなかった」と説明した。

キム氏は、韓国の制作会社の行動は、道徳的・倫理的に非難を浴びるものだと指摘する。
「(制作会社は)同ミュージカルは原作を単純なアイデア創作に活用しただけで、著作権法に触れないのだと言う。だが、これは著作物の人格権をあまりにも無視した行為だ。特に、著作権意識が高い日本社会で、同作品を上演することは、法的な問題だけでなく、道徳的・倫理的に非難されて当然のことだ」、「いくら内容を変えても、同ミュージカルのプロットが原作の影響を受けていることは明白な事実だ」と制作会社を非難した。

キム氏は、このような制作会社の著作権に対する意識の低さは、日本の韓流ブームに影響を与えるのではないかと懸念を示す。「修正と変形を、国内でやったように(海外作品に対しても)するのは、韓流のアップグレードを考えた時に見直さなければならないことだ」。

キム氏はこのように主張するが、ミュージカルを制作した韓国制作会社と上演する松竹側は「予定通り上演する」と発表。現在も鈴木由美子さんや講談社側とは決裂したままだ。

参照:『美女はつらいの』著作権論争がつらい理由 - デイリーアン
参照:松竹、講談社に反論し、韓国ミュージカル予定どおり公演とコメント - 知財情報局

(文:林由美)

■【韓フルタイム】とは……
【韓フルタイム】とは韓国に特化した情報を提供する媒体です。
韓国に詳しい専門の日本人記者が取材、執筆を行っております。
韓国中心の出来事をいち早くお届けできるように頑張っていきます。