6月29日、大阪府警は各所属長を除く全警察官約2万人に「取り調べ中には関係者に暴行しません」とする誓約書を提出させることを発表。これが現場の警察官を困惑させているという。
 きっかけは5月3日、大阪府警関西空港署の男性巡査部長(40)が、特別公務員暴行陵虐の疑いで書類送検された事件。
 覚せい剤取締法違反容疑で逮捕したウガンダ国籍の容疑者に対し、巡査部長が取り調べ中に耳を引っ張ったりボールペンで頭をたたいたりした、というもので、巡査部長は書類送検の後、停職6カ月の懲戒処分を受け依願退職している。
 「府警が警察官に取り調べの手法そのものに関して誓約書を提出させるのは、今回が初めて。『犯罪捜査の取り調べの可視化の流れにも沿ったもの。府警も変わった』という評価の声もありますが、現場の反応は複雑です」(社会部記者)

 府警関係者によれば、誓約書は「あくまで内部の申し合わせ」とのこと。誓約書には一定の書式はなく自筆による自由形式。府警の某幹部も「無茶はしないという意思が表れていればそれでいいんです」と、強圧的なイメージをつとめて和らげている。しかし、誓約である以上、捜査現場をなんらかの形で制約するのは確実だ。ある捜査関係者は嘆く。
 「暴力は絶対にダメです。でも、我々が相対するのは犯罪容疑者。声を荒げたり机を叩いたりすることまで暴行にされては、取り調べになりません。なのに、これからはそれだけで人生がパーになる。それを知って、我々を挑発するような容疑者も出るでしょう」

 府警は、このような状況を踏まえ「取り調べ技能官」の採用や、取調官の上司立ち会いなどの新たな取り調べ制度の検討に入るという。今後の変化に、府民の注目が集まっている。