「見ていてください、長井さん!」 ミャンマー拘束山路さんの「覚悟」
軍事政権下のミャンマーを取材していた「APF通信社」代表の山路徹さん(49)が、現地当局に拘束された。同国で20年ぶりに行われた総選挙を取材するため、不法入国したという疑いだが、山路さんは拘束直前、ツイッターに取材へのただならぬ意気込みを投稿していた。
2010年11月7日、山路さんは、タイ北西部の町メソトから国境の川をボートで越えてミャンマー東部のミャワディに入った。そこで総選挙の投票所を取材中に、現地当局に不法入国の疑いで拘束されたという。
川を渡ってビルマに入ろうとすれば、容赦なく弾が飛んでくる
山路さんはテレビ制作プロダクションを経て、1992年にAPF通信社を設立。同社は東京本社のほか、大阪に関西支局を持ち、テレビの報道番組の制作などを行っている。海外の戦争・紛争地帯に強く、山路さん自身もこれまでボスニア、ソマリア、アフガニスタンなど、世界中を飛び回ってきた。
今回も拘束される前日まで現地からツイッターを頻繁に更新している。11月2日には「せっかく入ったのに、一次隣国に退避中」と投稿。国境付近でミャンマー軍と地元民主勢力軍の間で緊張が高まっており、国境の監視も厳重になっているという。
6日には、山路さんが入ろうとしていた、ミヤワディで爆破事件があったことを報告。選挙に反対する勢力の犯行と見られているという。「地元のビルマ人によれば、自力で川を渡ってビルマに入ろうとすれば、容赦なく弾が飛んでくると…。困った」とも書いており、かなり危険な状況だったようだ。
20年ぶりに行われたミャンマー総選挙については、「外国メディアや選挙監視団の入国を一切拒否した、言わば軍政の茶番です」と指摘。「インチキ選挙の実態を伝えるために引き続き頑張ります」と投稿していた。
ミャンマー政府に山路さんとの面会求める
かなり気合いの入っていた山路さんだが、それにはわけがある。07年にミャンマーの民主化デモを取材中に、ジャーナリストの長井健司さんが現地治安部隊の銃弾で倒れた。長井さんが契約していたのがAPF通信社だった。長井さんの遺体も同社代表の山路さんがミャンマーに引き取りに行ったという経緯もある。
山路さんは6日のツイッターでは、
「入るな!と言われれば、逆にどんな手段を使ってでも入り、取材し伝えるのが私たちの仕事。見ていて下さい、長井さん!」
とつぶやいた。今回の取材は志半ばで亡くなった長井さんの志を引き継ぐ意味合いもあったようだ。8日放送された情報番組「スーパーモーニング」(テレビ朝日系)でも、山路さんを知るジャーナリスト・鳥越俊太郎さんが「彼はおそらく覚悟のうえで入った」とコメントしていた。
外務省は日本大使館を通じてミャンマー政府に山路さんとの面会を求めているが、解放の目処は立っていないという。
総選挙の投開票作業が行われたミャンマーでは、軍事政権側が投票の強要などの不正行為を行っていたとして、民主化勢力の野党から批判の声が挙がっているという。米国のオバマ大統領も7日に「自由でもなく公正でもなく、正当な選挙について国際的に認められた基準を1つも満たしていない」という批判声明を出している。
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