鹿児島県教職員組合では、支払い催促をする現場教師の声をまとめている

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   学校給食費の滞納が社会問題化する中、強硬策に出る自治体が相次いでいる。連帯保証人を求めたり、「滞納すると給食停止」といった強硬な措置を取る自治体が増えてきた。

   宇都宮市教育委員会は、市内の全ての市立小中学校に通う児童・生徒の保護者を対象に「学校給食費納入確約書」の配布を始めた。学校ごとに配布のタイミングにはばらつきがあるが、一番早い学校では、新学期が始まった2007年4月9日から配布が始まっている。この確約書には、保護者の住所・氏名を書く欄があるほか、給食費が滞納された時のための連帯保証人の記載を求めている。

「ここまでやらないといけなくなった」

   同教育委員会学校健康課では、導入の背景について

「これまでも給食費回収に向けて様々な手段を講じてきましたが、未納者は増加傾向にあります。毎年同じことを繰り返していると、現場の労力もかかります。不公平感をなくすことは大事ですし、『ここまでやらないといけなくなった』という意識を皆さんに持って欲しいです」

と、危機感、切迫感を強調している。

   この「強硬策」には、疑問の声も上がっているという。ほとんどが

「きちんと払っているのに、なぜ連帯保証人まで指定しないといけないのか」

   という声だ。同市では99.5%が給食費を納めているといい、0.5%の未納者のために残りが割を食わされている形だ。

   これに対しても、市教委では

「未納者は増えています。これまで行ってきたような対策のために労力を割いても効果が上がらないんです」

と理解を求めている。

給食費3ヶ月滞納すると翌月から給食停止

   実はこの「連帯保証人付き確約書」を導入するのは、宇都宮市が初めてではない。長野県伊那市は06年度から同様の試みを行っている。07年2月8日の日経新聞によると、06年3月時点で220万円の不払いを抱えていたものが、07年1月には200万円にまで減少しているといい、ある程度の効果は上げているようだ。

   その他の「強硬策」としては、千葉県大網白里町が「給食費を3ヶ月滞納すると翌月から給食停止」との方針を打ち出しているほか、北海道根室市は06年7月、未納を続ける3世帯を相手に給食費支払いを求め提訴。広島県呉市に至っては、簡易裁判所による給食費の支払い督促に応じなかった保護者に対して強制執行で給料を差し押さえ、計34万円の回収に成功したという。

   その一方で、「強硬策」で子どもが傷つく、という実態も明らかになりつつある。

   鹿児島県教職員組合が07年2月に発表した「教育白書」では、給食費滞納にからんで、各家庭に支払い催促をしている現場教師のこんな声も明らかにしている。

「前年度、未払いの家庭に卒業アルバムを渡さなかった。(学校の方針で)子どもの責任ではないので、かわいそうだったが、仕方がなかった」
「子ども同士でも未納の問題が話題になり『給食どろぼう、食い逃げ』等、いじめの原因のひとつになっていた。担任は日々徴収の為に家庭訪問をすることに疲れていた」