「過労死は自己責任」 これは「あまりの暴論」なのか
「過労死は自己管理責任」「下流社会だの何だの、言葉遊びですよ」――人材派遣会社ザ・アールの奥谷禮子社長が雑誌で発言した事に対し、民主党の川内博史衆議院議員が2007年2月7日の国会予算委員会で、「あまりの暴論!」と柳沢伯夫厚生労働大臣に詰め寄った。奥谷社長は、柳沢大臣の諮問機関である労働政策審議会の分科会委員を務めているからだ。ネット上でもこれを巡って激しい議論が続いている。
川内議員は国会質問で、
「あまりの暴論なので提示させてもらった。柳沢大臣の諮問委員に日本国憲法を無視している人がいて、ホワイトカラー・エグゼンプション(労働時間規制の適用除外)を推進しようとしている」
と発言し、「週刊東洋経済」の07年1月13日号に掲載されている奥谷社長の記事を読み上げた。
「祝日もいっさいなくすべきです」
同誌で奥谷社長はホワイトカラー・エグゼンプションの特集でこんなことを話している。
「格差なんて当然出てきます。仕方がないでしょう。能力には差があるのだから(中略) 下流社会だの何だの、言葉遊びですよ。そう言って甘やかすのはいかがなものかと」「経営者は、過労死するまで働けなんて言いませんからね。過労死を含めてこれは、これは自己管理だと私は思います。ボクシングの選手と一緒(中略)挙げ句、会社が悪い、上司が悪いと他人のせい」「祝日もいっさいなくすべきです(中略)労働基準監督署も不要です。個別企業の労使が契約で決めていけばいいこと」
川内議員の質問に対し、柳沢大臣は「雑誌の記事は見た程度だが、全く私たちの考えではない」と答えるに留まった。しかし、川内議員はJ-CASTニュースの取材に対し、
「これと同じことを(奥谷社長は)審議会でも言っているんです。議事録もあります。でもおかしなことに、この記事が出てからの議事録が公表されなくなっているんです」
と、柳沢大臣を含め審議会メンバーは奥谷社長の発言を知っていて、賛同している可能性があると話す。そして、「結局、奥谷発言に象徴されるように、財界の一方的論理によって、また、一部の人達だけで審議が行われ政策が決定しているんです。ホワイトカラー・エグゼンプションなんて、誰も望んでいないじゃないですか」と話した。
言葉が一人歩き「非常に遺憾」
一方の奥谷社長は、今回の批判についてのコメントをJ-CASTニュースに寄せた。
「非常に遺憾です。なぜかというと、事前説明を入れて、『過労死は自己責任』という言葉を話しているにもかかわらず、その言葉だけをクローズアップされました。自分が言わんとする真意が全然伝わっていない。紙面の制約があったのかもしれませんが」
そして、過労死は自己責任か?という問いに関しては、
「『過労死は自己責任』という言葉が一人歩きしている。自己責任の枠が広がれば、自ずと仕事の時間の配分、休養、休暇の配分も個人の管理の下で行うべきで、自らの生産性を高め、質の高い仕事をするにはどの様にすればベストかを考える必要がある。上司に言われたから、会社の慣習がという事は、企業側も働く環境を改善してゆく必要がある。労使の間に相互信頼関係と理解がないと、企業は成り立たない。それは経営者が一番理解しているものと思う。働く側も自立した個人を確立する必要に迫られている」
というものだった。
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