「空(くう)」と呼ばれる吹き抜け大広場を会場5カ所に設置(イメージ)

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 2025年国際博覧会(万博)の開催地が大阪・関西に決まった。掲げたテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」の通り、誰もが輝けるような社会を提案する仕込みが始まる。万博は世界の課題を解決する壮大な実験場となる。IoT(モノのインターネット)や自動運転、再生医療などに強みを持つ関西の企業や大学の実力が試される。中小企業はもとよりベンチャーを育成する好機でもある。

 大阪府・市と大阪商工会議所は、18年5月から大阪の公道や公共施設で企業のさまざまな実証実験を可能とする施策を始めた。万博を実験場とするには、世界中の多様な需要や規制に合わせ、法令の整備や実験場の拡充が求められる。

 関西の健康・医療や環境分野の企業・研究機関などと連携し、世界が抱える課題の解決策を探る仕組みを構築する必要もある。

 大阪商工会議所の尾崎裕会頭(大阪ガス会長)は、「25年に究極の『未来社会の実験場』に成長した大阪の姿を国内外に示したい」と意気込む。

 万博には世界中から企業や研究者が集う。魅力ある実験環境があれば、開催後も彼らは関西に集まるはず。関西は新産業やベンチャー企業を生み育てるゆりかごになれる。

技術PR“絶好の場”
 関西の中小企業やベンチャーは、万博の開催が大阪に決まり、商機の広がりを期待する。ただ、インフラ整備や会場建設、再開発などに人手が取られることを懸念する声も挙がる。

 米島フエルト産業(大阪市都島区)の米島智哉社長は、万博が「製品開発の動機付けになる」と話す。同社は軽量ながら剛性の高い炭素繊維複合材を開発した。「万博会場に組み込む音響・映像システムや飛行ロボット(ドローン)などの高性能化に役立つ」とみる。また、包装資材を手がけるマツダ紙工業(大阪府東大阪市)の松田和人社長は、万博期間中に「飲食店や土産向けの需要が増える」と期待する。

 ベンチャーにとっても事業拡大の好機だ。アキッパ(大阪市西区)は、空き駐車場を15分単位でインターネット予約できるサービスを展開する。金谷元気社長は万博を「ベンチャーの東京一極集中を打破する絶好の機会」と主張。「『大阪にまた来たい』と世界中の人に思ってもらえるように(同サービスで)貢献する」構えだ。

 フジキン(大阪市北区)の小川洋史代表取締役兼最高経営責任者は、万博を「“ご縁づくり”の機会」と話す。同社の主力は産業用バルブ。海外の万博にも出展しており、「いずれも事業につながった」。最先端の流体制御技術を提案する場として、「単独でのパビリオン設置も検討したい」と明かす。

 歓迎の声の一方で、人手不足やコスト増が進むとの指摘もある。ベルトコンベヤー周辺装置を手がける洋行(兵庫県姫路市)は現在、「装置の納品に使うトラックが確保しづらい」(長浜昭吾社長)。万博による建設ラッシュになればさらに輸送業者が集まらず、「輸送費が高くなるのでは」と危惧。印刷用インキ製造・販売の久保井インキ(大阪市東成区)の久保井伸輔社長も、「万博開催は歓迎」とした上で、「人手不足に拍車がかかる」と懸念する。

会場アクセス整備進む
 万博決定で、会場となる人工島・夢洲(ゆめしま)への交通インフラの整備が動きだしている。大阪市などが出資する第三セクターは、北港テクノポート線・コスモスクエア―夢洲間で人工島南側からの建設を計画し、24年度中の開業を目指している。

 これに市内を東西に走る大阪市高速電気軌道(大阪メトロ)の地下鉄・中央線が乗り入れる計画だ。大阪メトロは中央線延伸に合わせ、夢洲エリアで数百億円規模を投資し、商業施設の開発も検討する。

 JR西日本も時期は未定だが桜島線を延伸し、島北側から夢洲へのアクセスを構想する。関西私鉄各社も万博への関わり方を検討していく。京阪電気鉄道は夢洲へのアクセス向上を狙い、大阪市内を東西に結ぶ中之島線の延伸を構想する。