日本のコンビニはどこまで増えるだろうか(写真:Vorawich-Boonseng)

9月20日に興味深い発表があった。日本フランチャイズチェーン協会によるとコンビニの既存来店客数が、30カ月ぶりに前年同月を0.03%上回ったのだ。猛暑が人々をコンビニに向かわせた。さらに、昨年は天候不順だったためもある。

私がテレビ番組に出演していたときに面白かったのは、揚げ物を購入する人がインタビューで「家で揚げると暑くて大変だ」とコメントしていた場面だ。同時に、氷菓や飲料もよく売れた。

前年比で客数を伸ばしコンビニ全店売上高も伸長

ところで、コンビニの既存店が前年比で客数を伸ばした点について、比較的に好意的な意見が目立った。しかし、逆にいえば、29カ月は上回っていなかった。これはコンビニを毎日のように使うユーザーからすると、意外ではないだろうか。

拙著『未来の稼ぎ方 ビジネス年表2019-2038』でも触れているが、これまでコンビニは「○万店飽和説」が常に言われてきた。「3万店飽和説」「4万店飽和説」「5万店飽和説」……と打破しながら拡大し、現在は5万5000店を超えている。

コンビニの全店売上高と前年比の伸び率をみると、右肩上がりで伸びている。2017年にも前年比で1.8%増の成長を見せている。


しかし、これを、既存店ベースで項目別に分解して見ると違った側面がわかる。

まず既存店の客単価を見ると、リーマン・ショック後の低さはあるといえ、プラスで推移している。

客単価は上昇しても既存店の客数は減少傾向に

これは新商品をお客に提案したり、新サービスを提案したり、あるいは既存商品であっても改良を繰り返した賜物といえるだろう。


しかし、既存店の売上高で見ると、むしろ低空飛行を続けており、2017年にいたっては、マイナス成長であるとわかる。


この理由は明確で、既存店が徐々にお客を減らし続けているためだ。


業績の悪い店舗をたたみ、常に新規店をつくり続けては、新規開店でお客を増やそうとしている。しかし、そのなかでも既存店はじわりじわりと、立ち寄ってもらえるお客を減らしているのだ。

スーパーマーケット市場では「13兆円の呪い」といわれる。これは、スーパーマーケット市場規模が壁を突破できない事実を指している。日本の世帯数を約5000万とする。そうすると、13兆円÷5000万=26万円になる。年間で26万円ということは、1カ月に2万円ちょっと。もちろん単身世帯などの増加から、この計算式は概算にすぎない。ただし、マクロでみたときには、この26万円を拡大しようとしても、なかなかうまくいっていない。

さらに日本は人口減少国家だから、スーパーマーケットにしても、なかなか市場の急拡大は見込めない。コンビニも「○万店飽和説」がついにあてはまるかもしれない。さしあたって、現在の5万5000店に対して、「6万店飽和説」を打破できるだろうか。

もちろん、現在の方程式が続く場合はまだいい。コンビニ各社の客単価を高くする提案が成功し続ければ、問題はないだろう。しかし、次節で説明するとおり安穏とはしていられない。

冒頭で8月の好調を伝えた。もちろん客数増加自体は喜ばしい。ただし、8月の好調は、冬に悪影響を及ぼすかもしれない。よく、売り上げが好調な時期に正の側面のみが強調される。しかし、消費者にとってみれば、一定の収入で生活しているため、その反動はどこかでやってくる。ある時期に使っても、年間を通してみれば、一定額に落ち着く。つまり、どこかで支出を抑えているのだ。

ちなみによく「○○優勝で、経済効果○○億円」というものの、あのほとんどは代替効果を考慮していない。代替効果とは、何かを消費する代わりに、違う何かには消費しなくなる傾向を言う。厳密に計算すれば、ほとんど経済効果がないことは珍しくない。

より熾烈になるコンビニ各社の生き残りを懸けた戦い

話をコンビニに戻せば、今年では、秋口から冬に節約志向が高まってくる可能性があるだろう。

もちろんコンビニ各社も無策ではない。たとえばセブン-イレブンは、コンビニがオープンできない場所には自動販売機コンビニを設置拡大する。これは、おにぎりやお菓子などを無人販売するものだ。これは、やや形態が異なるものの、ローソンもプチローソンとして提供している。ファミリーマートもASDの名前でおなじく展開している。


さらにファミリーマートはドン・キホーテと組み、実験的な店舗づくりを進めている。「ファミリーマート PRODUCED BY ドン・キホーテ」の店舗では、あのドンキ流の圧縮陳列が店舗を覆っている。

またローソンは銀行分野に進出し、決済規格を提案するどころか、店舗でふらっと金融商品を“ついで買い”するシーンを想定している。また、セブン-イレブンはアプリを強化し固定客の訴求性をいっそう上げようとしている。

コンビニ各社は自社商品をさらにブラッシュアップし、かつ他の進化も忘れていない。ただ、外資からの攻撃も避けられない。また、コンビニも今後の消費減を待ち構えなければならないかもしれない。消費増税の後は、さらに冬の時代がやってくるだろう。比較的客単価の高いコンビニは食品分野で避けられてしまう可能性があるからだ。コンビニの戦国時代は、ますます激しさを増している。