広島・高橋大樹(左)と美間優槻【写真:荒川祐史】

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2012年ドラフト組、1歩抜けた鈴木を追う高橋大と美間

 広島の「大谷世代」が光を放ち始めている。9日のDeNA戦では鈴木誠也、高橋大樹、美間優槻の1994年生まれ、2012年ドラフト入団組が揃ってスタメン出場し、揃って安打を記録した。

 改めて言うまでもないが、現時点での出世頭となっているのは鈴木だ。16年の交流戦で3戦連続決勝弾を放ってブレイクし、昨季は4番に定着してリーグ連覇の原動力となった。昨年8月に試合中の故障で戦線離脱し、今季も開幕してわずか2試合で登録抹消となったが、4月19日に復帰後は主軸としてチームの首位キープに貢献している。昨季に骨折した右足首は「今季中は100パーセント完治することは難しい」状況だが、「シーズン中は、みんなどこかしらが痛いもの。それが今回は足首になったというだけで、状態が悪い時でも試合には出ないといけない」と万全ではない状態でも、自分の役割を果たすことに全力を尽くす。

 鈴木の躍進を尻目にファームでもがき続けたのが、高橋大と美間だ。1位入団でドラフト時には2位の鈴木よりも高評価だった高橋大は、プロ2年目の14年に初の1軍昇格。交流戦で指名打者として2試合にスタメン出場したが、6打席無安打に終わった。入団以来、同じ外野手である鈴木を常にライバル視していたが、鈴木の大活躍で徐々にその名前を口にすることは少なくなっていった。

 4年ぶりの1軍出場を果たした今季は、開幕からファームで打率.370、4本塁打、10打点の好成績を残し、4月24日に1軍昇格。龍谷大平安高の大先輩である衣笠祥雄氏の追悼試合となった30日の阪神戦に、故障した丸に代わってセンター、打順は7番でスタメン出場すると、第1打席で阪神先発の岩貞からレフト前にプロ初安打を記録。6回にもレフトへ安打を放った。「やっと打てた。めっちゃ嬉しいです」と試合後、笑顔を見せると、「ファームでずっとやってきたことを出すことができた」と苦労人らしいコメントを残した。

 5月3日の巨人戦でも第1打席に二塁打を放つなど、アピールは続いた。この日はセンターの守備で好プレーを見せるなど、守備面でも光るものを見せている。「試合前に純さん(廣瀬コーチ)に、このバッターはこんな打球が来ると、話を聞いていた」と、ディフェンス面の意識も高い。

開幕1軍も打撃不振で抹消、再びチャンス得た美間「チャンスを生かしたい」

 5位入団の美間は、入団当時に4番打者として活躍していた栗原健太タイプの長距離砲として将来性を期待された。こちらはプロ3年目の15年に開幕1軍に入り、7番・サードで開幕スタメン出場も果たしたが、3打席ノーヒットに終わり、以後は1軍でチャンスを与えられなかった。

 その後は2年間、1軍で出場機会に恵まれなかったが、今春キャンプでは東出打撃コーチに、同じ内野手の庄司らとともに「打撃は1軍で戦える力がある。あとはいかに首脳陣の信頼を勝ち取るか」と高評価を受けた。フリー打撃では左右にライナー性の力強い打球を飛ばし、オープン戦では本塁打を放つなどアピールに成功した美間は、3年ぶりとなる開幕1軍切符を手にした。

 4月17日の巨人戦、9回に代打出場した美間は、巨人・カミネロからセンター前にプロ初安打を記録したが、3度のスタメン出場のチャンスをものにできず、4月23日に1軍登録を抹消された。打撃不振の原因は、打席での消極的な姿勢だった。降格したファームでは、故障で開幕1軍を逃した新井からアドバイスを受けた。

「打席で受け身になっているので、タイミングを早めに取った方がいい、と言われた。1軍で結果を残さなければいけない立場で、ボールを見過ぎてしまうところがあった」という美間は、再登録されて即スタメンとなった9日の試合、第2打席でプロ2本目となる安打を放った。初球を空振りし、2球目をファールした後の安打で、3球全てをスイングしての結果だった。「悪い状態でも、1軍でやりながら修正できればよかったがダメだった」と反省したが、「今は安部さんの調子が悪いから使ってもらっているだけ。それでもこのチャンスは生かしたい」と生き残りに必死だ。

 1軍で不動の地位を築いた鈴木とは違い、高橋大と美間はまだ、1軍定着が課題、という立場に過ぎない。出遅れていた新井の復帰も間近となり、その状況はますます厳しくなっていくばかりだ。それでも、ともにプロでの第1歩を刻み、アピールを続ける2人にとって、今季は大きな分岐点になりそうな気配もある。桜の季節はとうに過ぎてしまったが、「大谷世代」の「同期の桜」が満開になる日は、今年こそ訪れるのか。期待は高まるばかりだ。(大久保泰伸 / Yasunobu Okubo)