Nintendo SwitchにはNVIDIAのTegraプロセッサーが搭載されていますが、このプロセッサーの脆弱性をついてNintendo Switchをハッキング可能であることが明らかになっており、「既存の全てのNintendo Switchがハッキング可能になり、脆弱性はパッチ修正も不可能」ということで大きな話題となっています。

The “unpatchable” exploit that makes every current Nintendo Switch hackable | Ars Technica

https://arstechnica.com/gaming/2018/04/the-unpatchable-exploit-that-makes-every-current-nintendo-switch-hackable/

Nintendo SwitchにはNVIDIAのTegra X1ベースのプロセッサーが搭載されているのですが、このTegraプロセッサーの脆弱性「Fusée Gelée」を用いてNintendo Switchをハッキングできることを、ハードウェアハッカーのKatherine TemkinさんとReSwitchedのハッキングチームが概念実証し、その詳細をGitHub上で公開しています。



「Fusée Gelée」は、Tegra X1のUSBリカバリモードに内在する脆弱性を利用し、bootROMを保護するロックアウト操作を回避するという脆弱性です。コード化された正しくないUSB制御手順を、正しい箇所に不適切な長さの引数送信することで、ユーザーはシステムに「制御要求ごとに65535バイトまで要求する」ことが可能となります。このデータはbootROM内のダイレクトメモリアクセス(DMA)バッファを簡単にオーバーフローさせることができるので、データを保護されたアプリケーションスタックにコピーし、攻撃者に任意のコードを実行させることができるようになるとのこと。

この脆弱性を突いたハッキング方法は以下の記事の中でも登場していました。

Nintendo Switchのハッキングはかなりのレベルまで進んでいる - GIGAZINE



Nintendo Switchで「Fusée Gelée」を利用しようと思えば、USBリカバリーモードを使用する必要があります。Nintendo Switchの筐体を開けずにUSBリカバリーモードを使用するには、右のJoy-Conコネクタ部分にある特定のピンをショートさせる必要があります。

「Fusée Gelée」を用いたハッキングにいち早く取り組んでいたハッキングチームのfail0verflowは、右のJoy-Conコネクタ部分にある特定のピンをショートさせるための「SwitchX PRO」なるものの開発に着手していることをTwitter上で明かしています。



脆弱性「Fusée Gelée」の1番の問題は、任天堂や他のTegraベンダーにはダウンロード可能なパッチなどを用いて脆弱性を修正することができないという点です。これは、Tegraチップは製造工場を1度離れると、問題のあるbootROMを変更することができなくなってしまうからで、ハードウェアハッカーのTemkinさんは「残念なことに、ODM_PRODUCTIONヒューズが焼かれると、デバイスのipatchesを設定するのに必要なヒューズへのアクセスがブロックされるため、bootROMの更新は不可能となります」と記しています。なお、任天堂およびNVIDIAは「Fusée Gelée」に関するコメントを控えています。

海外メディアのArs Technicaは、「任天堂はこの状況でも完全に無力というわけではない」と記しており、具体的に「Fusée Gelée」の悪用が広まっても任天堂のサーバーにサインインする際に「ハッキングされたシステム」を検出できる可能性を指摘。さらに、検出した「ハッキングされたシステム」のオンライン機能を使用不可能にすることもできるはずとしています。実際に、任天堂はニンテンドー3DS向けのポケットモンスター サン&ムーンの海賊版が発見された際に、同じような手法で海賊版を利用するニンテンドー3DSのオンライン機能を使用不可能にしています。



Temkinさんは、「これらの脆弱性を独力で発見した人によっては、悪いことがたくさん起きる可能性がある」と語っており、既に一部のグループが「ハッキングに関する情報を少数に伝えることで利益を得ようとしている」ことも明かしています。こういった勢力に対抗するために、Temkinさんは「Fusée Gelée」の詳細を公表したとしています。