新幹線車内で「たこ焼き、豚まん」NG論争に驚き…“お客様のクレーム”に弱すぎる

写真拡大

― 週刊SPA!連載「ドン・キホーテのピアス」<文/鴻上尚史> ―

 大阪に仕事に行って、帰りの新幹線の中で、たこ焼きと肉まんを食べるのが至福の時間でした。

 それが去年夏、いきなり、新大阪駅改札内で販売されている「たこ家道頓堀くくる」のパッケージに、「新幹線車内および駅構内でのお召し上がりはご遠慮願います。空き容器は店内のくずもの入れにお捨て願います」という注意書きシールが貼られました。

 最初、このシールを見た時は凍りました。新幹線の中でたこ焼きの臭いがするのがダメなのかなあ、しょうがないなあ、と駅のホームで出発前までの短い時間に必死であふあふしながら頬張りました。口の中が若干火傷しながら、もう一度シールを見ると、「駅構内でのお召し上がりはご遠慮願います」と書かれていることに、あらためて気付きました。ということは、ホームでもダメじゃんとひりひりする口で気付きました。

 でも、車内で隣の人が文句を言うのはまだ分かるけど、屋外のホームのベンチで食べるのがどうしていけないのと、臭いは風と共に消えていくよと、猛烈に悲しい気持ちになりました。

 そもそも、買って食べないままずっと車内に置いておくと、臭いが長時間に渡ってずっと出続けないかと心配になりました。

 ニュースサイト『しらべぇ』(盛山盛夫)の記事によれば、それは「くくる」さんの決断ではなく、JR東海からの要請だそうです。

 で、JR東海さんの言い分は、もうこれは当然ながら、「車内でたこ焼きを食わすな。禁止しろ!」という臭いに対するクレームの電話があったからだということだそうです。

 昔は、新幹線の中で「たこ焼き」が売られていました。1980年代です。けれど、今、新幹線の中ではたこ焼きは食べられません。

 そして、衝撃的なネット記事『IT media ビジネスオンライン』(窪田順生)を見つけました。

 なんと、「551蓬莱」の豚まんが問題になっているというのです。

 「551蓬莱」の豚まん、美味しいですよね。ホカホカをあふあふと食べれば、幸せを感じますよね。

◆“お客様の声”に“素直”に従うJR東海

 でも、「豚まんのように強烈な臭いのするモノを車内で広げられたら、気分が悪くなる人もいるし、目的地まで眠りたい人の邪魔になる」とか「食欲がそそられるので、『豚まんテロ』」と、新幹線の車内で食べることは重大なマナー違反で、禁止すべきだという声が上がっているのです。

 現在、「くくる」さんは、改札内のお店なのでJR東海さんの指導に従い、「551蓬莱」さんは駅構内なので、JR東海直接の管轄ではないことが、シールのあるなしを分けているようです。

 でも、「『しらべぇ』がJR東海に問い合わせたところ、「駅弁や豚まんなど『シールがないもの』については一概にはお答えできませんが、周囲からご意見があった際は、ご協力いただくこともあるかもしれません」とその可能性を否定しなかったそうです。

 つまりは、「クレームがあったら、豚まんも駅弁も禁止にしますから」ということです。もう、お客様の声が一番なんですね。

「社会」と「世間」の違いをよく分かってない日本人は、クレームに対してとても弱いです。どんなTVCMも、クレームの電話数本でオンエア中止になります。

 お客様は神様だから、その言葉は「世間」様の声で、従うべき身内の指摘だと思うのです。でも、それは「社会」の声です。神様ではなく他人の声です。客観的に分析し、実証し、判断するデータなのです。

 一体、一日、何人の人が「たこ焼き」を新幹線に持ち込み、何件の苦情があったかを調べるべきなのです。

 それが、例えば1割なら無視してはいけないと判断します。でも、1日5000人の人がたこ焼きを持ち込み、3人の人が苦情の電話をかけてきたら、割合は0.06%です。それは逆に問題にしてはいけない数字なのです。

 最近は、「隣で酒を飲まれると、臭いが漂ってきて不愉快だという人が出てきた」そうです。

 たこ焼きから豚まん、そして、駅弁、お酒とどんどんクレームと共に新幹線はクリーンになっていくのでしょう。コーヒーの臭いが不快な人もいるでしょう。そういう人のクレームにも、JR東海さんはやがて対応していくのだと思います。

※「ドン・キホーテのピアス」は週刊SPA!にて連載中