以前掲載の「楽天携帯、いきなり時代遅れ。設備投資たったの6000億で関係者も失笑」では、第4の携帯キャリアを目指す楽天の無謀さについて指摘した『石川温の「スマホ業界新聞」』の著者でケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さん。今回は、今さら異業種の「格安スマホ」に参入することを表明した、大手旅行代理店「H.I.S.」の真の狙いをについて考察しています。

H.I.S.が日本通信と組んで、格安スマホ「H.I.S.モバイル」を開始━━旅行者に求められるのは、1日500円で使えるeSIMカードだけか

大手旅行代理店であるH.I.S.と日本通信は2月15日、格安スマホ会社「H.I.S.モバイル」を設立。海外渡航者向けサービスを5月1日から開始すると発表した。

実際に会見を取材したが、プレゼンや配付資料だけではわからないことが多く、結局、囲みや広報への質問、さらにWebをチェックしてようやく全貌がわかるという感じであった。

そもそも、1枚のSIMカードで国内と海外の両方で使えるかと思いきや、当初は2枚のSIMカードが必要で、「将来的には1枚に統合できれば」という感じであった。

とはいえ、国内でeSIMに組み込む形でサービスを提供するには、HLR/HSSの設備が必要となるわけで、現状の日本通信では090などの番号を使ったサービスを提供するは難しいのではないか。

国内用と海外用、2枚のSIMカードが必要と言うことは、SIMカードスロットが一つしか無いスマホの場合、海外で使っているときは、日本の電話番号にかかってきた着信は受け取れないというわけだ。つまり、DSDSに対応したスマホが必要となってくる。

ただ、海外で使えるSIMカードとしては1日500円というのはかなりリーズナブルな位置づけになりそうだ。実際のところ、H.I.S.で旅行商品を買う必要もなく、Webから単体で、しかもプリペイドとして購入、契約できるようだ。

そもそも、H.I.S.に海外旅行のプランを買いに行って、「じゃあ、一緒に格安スマホに乗り換えるか」というのはかなり無理のある話だろう。「旅行ついでにMNP」というのは現実的ではない。

H.I.S.としても「接客をする上で、旅行商品を販売した後、旅行保険やレンタルWi-Fiルーター、さらにお土産も買えますよという流れを作っている。そのうちの一つして、H.I.S.モバイルを取り扱う感覚」(猪腰英知社長)という。

話を聞いていると、H.I.S.の店舗でがっつりと格安スマホやSIMカードを売るということは考えておらず、旅行商品のオマケ商材のひとつという感覚のようだ。

全国や海外にリアル店舗があるのがH.I.S.の特長であるが、これまで旅行しか売ったことのないスタッフにスマホの契約をさせるのはかなり難しいと判断しているのだろう。実際、H.I.S.は電力自由化で電気も取り扱っているようであるが、やはり電気とスマホでは、ショップスタッフの労力を考えると、スマホに注力するのは厳しいようだ。

現状、海外では70の国と地域で使えると言っているが、実際にどの国で使えるかは言及していない。

5月1日までに改めてリリースを出すと言っているので、それを見てから、本当に使えるサービスなのかを判断してみたい。

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