今年で4年目に突入したauの三太郎シリーズ。調査期間中のCM好感度TOP3を独占しました。

あなたのお気に入りCMは、何位にランクインしているだろうか?
CM総合研究所が毎月2回実施しているCM好感度調査は、東京キー5局でオンエアされたすべてのCMを対象として、関東在住の男女モニターが、好きなCM・印象に残ったCMをヒントなしに思い出して回答するものだ。
最新の2018年1月後期(2018年1月5日〜 2018年1月19日)調査結果から、作品別CM好感度ランキングTOP30を発表。その中から、CM総研が注目するCMをピックアップして、ヒットの理由に迫る。

“三太郎シリーズ”がTOP3を独占!2018年も絶好調

【1位〜10位】

調査期間中、東京キー5局からオンエアされた3175作品のうち、作品別CM好感度TOP3をKDDI『au』の「三太郎」シリーズが独占した。桃太郎、浦島太郎、金太郎に加え、鬼、かぐや姫、乙姫、織姫など個性あふれるキャラクターが次々に登場し、2015年の開始から、依然その人気は高い。

今回1位に輝いた「鬼の親子」篇には、菅田将暉演じる鬼ちゃんの長男・赤鬼役として新たに鈴木福が登場した。8人兄弟の長男として家計を心配し、進学を諦めて父の仕事を手伝うと話す息子に、本音を察した父は「学んだことは誰にも奪われないから」と進学を促す。モニターからは「言葉がすごくいい」「感心した」「泣かせるセリフ」など鬼ちゃんのセリフへの感想が寄せられた。学ぶことの意味を改めて考えさせられる言葉と、菅田と鈴木の演じる親子愛に胸を打たれた視聴者も多かったようだ。

かたや30秒バージョンでは、学費を稼ぐために「もう1個副業増やすか!」と明るく話す父に、息子が「お父さん、本業…何?」と問いかけるというユーモラスなオチがつく。

続く2位は年始恒例となった長尺のCMだ。今年は「笑おう」をテーマに登場人物たちが失敗を乗り越えて笑顔を見せるストーリー。ラストシーンでは初めて同じアングルの中に主要キャラ全員が集合して記念撮影をしようとするもの。

3位の「半額屋」篇では、鬼ちゃんがただの板を「板Phoneっす!今、半額っす!」と熱心に販売する。対象のスマホ購入と加入で機種代金が最大半額となるサービスをアピールするものだが、実はCMに登場するこの“板Phone”、Web上には「世界初、すべての機能をそぎ落とした最新のスマートフォン誕生」「基本料0、通信料0、充電不要」「近くにいる人と話せる」など、いかにも実際の製品であるかのような紹介動画も公開されている。また、前述の登場人物が全員集合する場面でも、記念撮影のために桃太郎が手にしているのは“板Phone”であった。

メディアや作品を横断した伏線を張り、気付いた視聴者は能動的に情報を探したくなる。「三太郎」CMには、誰かに話したくなる“トーカビリティ”と共有したくなる“シェアビリティ”といった仕掛けが随所にちりばめられている。

2017年7月のシリーズ開始以来、堅調にCM好感度を伸ばし続けてきた『明治プロビオヨーグルトR-1』の新作が4位にランクインした。レスリング選手兼指導者の吉田沙保里演じる“さおりん”と大森南朋演じる“なおくん”の新婚夫婦を中心にした「体調第一家族」シリーズは、「家族の思いやりは体調管理」「体調管理にはR-1」という文脈で物語が展開され、今作で5作品目となる。

体調第一家族「みんなR-1」篇。このCMは4作目。

明治 執行役員の村上欣也氏はテレビCMの役割について、「瞬時に多くの方に情報を伝え、商品のイメージや世界観を伝えるのはテレビならではの強みだといえます。またテレビにCMを流すかどうかは流通を説得するための重要な要素」と話す。

吉田沙保里のSNSが話題に

また、同ブランドは世界の体調管理法を紹介するCMを2013年から展開してきたが「商品認知が9割まで伸び、さらにブランドを成長させるために間口を広げて新規ユーザーを取り込みたいという思いがありました。そのために愛着や好意を獲得できる表現のフレームにシフトしました。」(村上氏)と「体調第一家族」シリーズ開始の理由を説明した。

吉田と大森の二人の結婚式を描いた第1弾CMでは、見慣れたレスリングのユニフォーム姿から一転、純白のウェディングドレス姿を吉田が披露した。すると「かわいい!」「キレイになった」と驚きの声があがり、吉田がSNSにアップした写真がニュースになるなど話題を集めた。

以降の作品では、夏バテで食欲が落ちている夫を気遣ったり、夫に似せた人形を手作りして照れてみせたり、夫を駅まで追いかけて「愛してるって言い忘れてた」と甘えてみたりと、乙女モードな可愛い新妻を演じている。今作では「もう私たちだけの身体じゃないから」と、帰宅した夫に恥じらいながら妊娠を告げる展開となった。マタニティ雑誌の臨時増刊の表紙を吉田が飾り、誌面でもインタビューを掲載するなど、CMだけでは伝えきれない部分をカバーする工夫も施したという。

多様な生き方を尊重しようとする現代では、CMのようにマスメディアを介して不特定多数に向けて発信したものが、受け手側のそれぞれの見解や価値感と異なるリスクも孕む。そんな中にあって、この「家族が増える」篇は多くの人からの好感を得た。特に女性からの支持が高く、自己最高のCM好感度をマークしたのはなぜなのか。

CMを好きだと答えたモニターからは「CMなのにおめでとうと感じた」「見ているとほっこりする」「幸せそうな笑顔が好感を持てる」とその狙い通りのコメントが散見された。さらに、吉田本人に対して「本当に幸せになってほしい」などのエールが届くのは、彼女がアスリートとして今まで計り知れない努力を積み重ね、輝かしい実績を残し、リオ五輪での涙の敗戦を乗り越えて前を向いた姿を人々が見てきたからだろう。

「体調第一家族」シリーズは、“さおりん”のライフイベントを明るく描いて多くの視聴者の支持を得た。見る人がつい応援したくなる幸せオーラ全開の“霊長類最強妻”吉田沙保里の笑顔の伝播力は、やはり最強だ。

役所広司が歌とダンスで表現するのは、「AI」=「愛」

【11位〜30位】

今回のCM好感度ランキングTOP30の中で、わずか17回という少ない放送回数で、効率良く多くの人の心をつかんだのが11位の大和ハウス工業「物流にAIを」篇だ。

ボーカルの役所広司が“Daiwa Boys”という名のバンドメンバーを引き連れてステップを踏みながら「♪Hey everybody,listen up(なあ、みんな 聞いてくれ)」と英語で歌い始める。字幕の歌詞は企業の具体的な取り組みには触れずに、「愛をローマ字にするとAIになるんだ」「大切なのは 愛なんだ」と気付くという内容。モニターからは「役所さんの歌がうまい」「音楽とダンスが楽しい」といったエンターテインメントの要素以外にも、「AI=愛」「物流にAIを」など、歌詞の中の重要なワードを多く記述している点に注目したい。

AI、IoT、ロボティクス、ビッグデータなど説明が難しいことを短いCMの中に詰め込むのではなく、夢に見ていた未来がすぐそこまで来ているという高揚感を歌で表現したのである。真面目に歌いながら踊るCMにどこかコミカルさが漂うのは、カントリー調の音楽と振り付け、そして役所広司の意外な(?)歌のうまさと演技力であろう。

スマートスピーカーを筆頭に、AIやIoTといったテクノロジーの進化を生活に取り入れた社会を描くCMが続々と誕生しているが、無機質で冷たい響きのあるテクノロジーの話を「大切なのは愛なんだ」とシャレてしまう大和ハウス工業の懐の深さが、視聴者の好感をとらえている。