【カイロ=佐藤貴生】北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が核兵器開発に固執する一因として、リビアの元最高指導者カダフィ大佐と、イラクのサダム・フセイン元大統領という2人の独裁者の“末路”を教訓にしているとの見方が出ている。

 両国の事例から「核兵器計画を放棄したら体制は生き延びられない」(英紙ガーディアン電子版)とみている可能性があるからだ。

 カダフィ氏は2003年、大量破壊兵器(WMD)を放棄すると表明し、米欧との関係改善を図った。だが、8年後の11年には長期独裁政権の打倒を求めるデモが拡大。北大西洋条約機構(NATO)が軍事介入し、カダフィ氏は民兵に拘束され死亡した。

 米CNBCテレビ(電子版)は今年7月、リビアのようにWMDの保有をあきらめると、海外の大国が体制転換につながる行動を起こす−との専門家の分析を紹介し、「金氏はカダフィ氏の不運な最期を胸に刻んでいる公算が大きい」との見方を示した。

 フセイン氏のケースでは、当時のブッシュ米政権がWMDの廃棄に応じないとして03年に戦争に着手。実際にはWMDを隠してはいなかったが政権は崩壊し、フセイン氏は06年に処刑された。

 英BBC(電子版)は昨秋、フセイン、カダフィ両氏の最期をふまえ、北朝鮮メディアが「強力な核の抑止力は、外部からの攻撃を阻む最強の剣の役割を果たす」と報道していると伝えている。

 緊張関係にあるインドとパキスタンのほか、アラブ諸国に取り囲まれたイスラエルも事実上の核保有国だ。いずれも抑止力としての核を重視している。

 15年に米欧など6カ国との核合意に達し、核開発制限の措置を受けているイランの今後も、注目すべき対象といえる。国際原子力機関(IAEA)は最近、イランの低濃縮ウランの貯蔵量などについて、設定された開発制限を守っているとする報告書を発表したが、トランプ米政権は核兵器保有の野心を止めるには不十分だ−などとして、イランへの疑念を捨てていない。