米国メーカーの良きお手本 スズキと英国ケータハムの見事なコラボ

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トランプ大統領は、選挙中から「日本にアメリカ車をもっと買わせよう」と息巻いていたが、日本にいる人なら誰だって、なぜアメリカ車が少ないのか知っている。もしも本気で売るつもりなら、こんなクルマを考えてみていただきたい、大統領!

米国車の日本進出のための処方箋とも言えそうなクルマが、なんと素敵な日英合作車、ケータハム・セヴン・スプリント。和魂洋才の21世紀バージョンと言えるスプリントだ。というのも、英国車を象徴するかのボディながら、軽自動車のエンジンを搭載。そう、80馬力を叩き出すスズキの660ccターボエンジンなのだ。正統派は顔をしかめるかもしれないが、侮ってはいけない。

実は、2017年は、ロータスの創始者コーリン・チャップマンが軽量スポーツカー「ロータス・セヴン」を発表してから60周年。それを祝ってケータハムが放ったのがこのモデルだ。ロングフェンダー、深みあるペイントを施したレトロなフォルムにスカーレットのダッシュボードと、インテリアも優雅である。

ボディのシルエットのみならず、走りの楽しさや魅惑的な存在感まで、チャップマンの想いとスズキの軽エンジンを見事にブレンドしている。 はじめは60台限定の予定だったのだが、発売後すぐにイギリスとヨーロッパで完売となり、日本向けに用意された60台も完売した。

スズキのエンジンをどうしても載せたかった英国人
賢い読者ならまず思い至るはずだが、日本の軽自動車のエンジンを搭載するケータハムは、やはり誕生まで長い苦労があった。ケータハムカーズ日本のブランドディレクター、ジャスティン・ガーディナーが本国の経営陣に説得を始めたのは1991年から。しかし、その当時は誰も日本の軽自動車エンジンの採用など、歯牙にもかけなかった。

ところが、2010年に流れが変わった。ガーディナーが自分の妻が乗る1991年型スズキ・カプチーノを、同社のアンサル・アリ社長に強引に運転させたのだ。「あれが、突破の瞬間だった」とガーディナーは言う。660ccターボエンジンを初体験して戻ってきた社長が驚喜して叫んだ、「なんてキビキビ走るんだ!」と。

ついにケータハムの後押しを得たガーディナーは、すぐさまヤフー!オークションで中古のカプチーノのエンジンを購入し、エンジニアの武蔵野明彦と共にプロトタイプを制作。2012年に富士スピードウェイでの試験走行を経て、スズキとケータハム両者からお墨付きを得た。

そして、スズキ・ジムニーの660ccターボ付き3気筒エンジンと、同エヴリーの5速マニュアル・ギアボックス、後輪駆動系を使用して開発されたのがセブン160。これをベースに、セヴン・スプリントが誕生した。

思わず笑顔がこぼれる これぞライトウェイト!
では、その走りはどうか?  キャビンはF1マシンのコックピットを2つ押し付けたような狭〜いスペース。長身の僕は曲芸師のようにからだをひねって乗り込むと、日英合作車への懸念は吹き飛んだ。さっそく東京の湾岸地区を走ってみて、そのパンチ力に驚いた。たった80馬力とはいえ、車重がわずか490キロだから、0-100はなんと7秒以下なのだ。十分に速い。

レトロな雰囲気を放ちながらも3気筒ユニットの感覚は現代的だ。2500回転から感じる力強いターボブーストは意外だった。やはりこのクルマは軽い! また、高回転域でアクセルオフしたときにターボから聞こえてくる「ブルルルル」という音は、まるで仔犬がはしゃいでいるようで愛しくてたまらない。5速M/Tはクロスレシオだから、2、3速がカチっと入ると達成感を感じる。

限界を確かめようとする前に、このノスタルジックなセヴンの子孫にはパワーステアリングもABSも、エアバッグもトラクション・コントロールもないことを思い出さなくてはならない。60年前の走りはこうだったなと感じられる。 シャシーのバランスが絶妙で、 パワーアシストのないステアリングの重さと手応えが気持ちいい。

でも、正直なところ、パワーステアリングもなく、今ではあたりまえの運転補助機能もなく、路面に限りなく近い低さのオープン・スポーツカーだから、慣れるのにちょっと時間がかかる。風音、ロードノイズを強く受けるし、トンネルに入れば轟音と振動が半端じゃない。左足を置くフットレストがないので左の腿がつらくなるなど、やはり長距離のドライブには向かない。

唯一の”海外製”軽自動車
さて、トランプ大統領に聞いて欲しいのはここからだ。 美しいケータハムとスズキの軽自動車のエンジンのコンビネーションは、世界のクルマ好きのハートを鷲掴みし、見る人誰をも笑顔にする。しかも黄色いナンバープレートを付けたスプリントは、 わずか数週間で完売しただけでなく、 同社の日本での販売は4倍に跳ね上がった。

アメリカ車がソッポを向かれるのは、この国の道路事情に適したクルマが供給されてないからだ。多くの日本のユーザーは、手頃な価格で低燃費で安全な運転しやすい小型車を求めている。マーケットの4割は軽自動車だが、これは日本のカーメーカーに独占されている。軽自動車という特異だが実に面白いクラスに挑戦しない手はない。

日本でアメリカ車を売りたいなら、大きな高級車ではなく、この日本の道路事情に合う軽自動車、または1Lか1,4Lのターボでスタイリッシュなクルマを作るべきだ。日本のメーカーだって、アメリカ市場に適した大型車やSUVを作って大成功を収めたではないか。ミニバンやSUVの人気も高まっているのだから、SUV作りが得意なアメリカにもチャンスはある。

トランプさん、「買え買え」と言うばかりでなく、日本のユーザーが乗りたいスタイリッシュな小型車を作ってみてはどうだろう。