辛みを効かせた中華料理や韓国料理に欠かせない調味料の「豆板醤」「コチュジャン」。いずれも唐辛子を原料とし、色や質感もよく似ていますが、一体どのような違いがあるのでしょうか。また、どのように使い分けるのでしょうか。

 オトナンサー編集部では、日本発酵文化協会の藤本倫子さん(上級認定講師・発酵マイスター)に聞きました。

それぞれ中国と韓国が発祥の地

 そもそも、豆板醤とコチュジャンは発祥の国が異なります。

 豆板醤は、中国・四川省発祥の発酵調味料で、原材料は唐辛子、そら豆、塩、ごま油、こうじ。唐辛子が入ったものは、正式には「豆板辣醤(トウバンラージャン)」ですが、日本では一般に豆板醤と呼ばれています。「そら豆と唐辛子を発酵させてペースト状にしたもので、口にした瞬間、ピリッと感じるほど強い辛みがあります。塩気が強いのも特徴です」(藤本さん)。

 炒めることで香りと辛みが一層引き立つため、中華料理の中でも辛みが強いとされる、麻婆豆腐や担々麺、エビチリなどの四川料理に多用されます。「四川省は高温多湿な地域。健康維持のために、食欲増進と発汗作用のある辛いものを食べる習慣があり、豆板醤は料理に欠かせない調味料の一つなのです」。

 一方、コチュジャンは韓国発祥の発酵調味料で「コチュ」は唐辛子、「ジャン」は調味料の意味です。材料や製法は時代や地域によって異なりますが、主な原料は唐辛子やもち米、こうじ、大豆、きびなどの糖類。「韓国産の唐辛子は、大豆のアミノ酸による旨みともち米のデンプンが発酵することによる甘みで、辛みがまろやかなのが特徴です」。

 コチュジャンは、日本の「しょう油」のような存在で、ピビンバやトッポギをはじめ、炒め物や和え物などに日常的に用いられます。

両者の代用は基本的に難しい

 唐辛子を使った発酵調味料である点は共通ですが、辛さが強く甘みが少ない豆板醤と、辛さの中に甘みがあるコチュジャンは味が大きく異なり、代用は難しいようです。

「豆板醤を使う料理にコチュジャンを使用すると、違う料理のようになってしまうこともあります。中国発祥の豆板醤は中華料理に、韓国発祥のコチュジャンは韓国料理に使うのが基本です」

 ただし、炒め物に入れると辛みと香りがプラスされる豆板醤と、具材に混ぜることで辛みと甘み、コクがプラスされるコチュジャンの特徴を知った上で、自由にアレンジすると料理に幅を出すこともできます。

(オトナンサー編集部)