「介護は私にとって大切な時間。利用者さんの笑顔に触れるためにはまず、自分が笑顔でいることが大切だと思っています」

そう語るのは、元アイドルで女優の北原佐和子さん。彼女は、小泉今日子や中森明菜らと同期の「花の’82年デビュー組」。アイドル活動ののち、『牡丹と薔薇』などのヒットドラマに出演し“昼ドラ女優”としても名をはせた。

北原さんは、’07年にホームヘルパー2級(現・介護職員初任者研修)の資格を取り、グループホームなど複数の施設に勤務。’16年にはケアマネージャー(介護支援専門員)と、難関資格を取得し、女優業の休みを利用して介護士としても働いている。

「若いころから障がいのある方と接する機会があって、ボランティアや福祉に関わりたいと思っていたんです。それで、仕事がお休みの期間に障がい者施設のボランティアに参加し、働きたい思いを伝えたのですが、『女優と兼業ではシフトが組めない』と断られてしまいました。その後ヘルパーの資格を取ってから、介護情報誌を見て30件ほど電話をし、やっと勤務先が決まったんです」(北原さん・以下同)

人前に出る立場から、高齢者に寄り添う立場に。「女優に何ができる」と、冷ややかな目で見られることもあったが、手を抜かないで丁寧なケアを心がけた。

「なかなか心を開いてくれない利用者さんが笑顔を見せてくれるようになり、日を追うごとに介護の仕事に生きがいを感じるようになってきました。介護では、相手の方がどのような人生を送ってきたのかを理解し、尊重したうえでのコミュニケーションが大切なんだと思います」

京都での撮影後に東京に戻り、夜勤をこなすことも。多いときは週6日、介護の仕事が入ることもあったそう。北原さんの女優と介護士の“兼業生活”はもう10年になる。