ミュージカル『テニスの王子様』が僕らに教えてくれたこと――財木琢磨&神里優希インタビュー
累計動員数220万人を突破する話題のミュージカル『テニスの王子様』(通称『テニミュ』)。2014年に始動した3rdシーズンで数々の名場面を見せてきた青学(せいがく)テニス部部長・手塚国光役の財木琢磨と不二周助役の神里優希が、『テニミュ』卒業前最後の舞台となるミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン 青学(せいがく)vs氷帝の東京凱旋公演を目前に、今の気持ちを語ってくれた。舞台にかける思いは常に真剣、性格はちょっぴりマイペース(!?)なふたり。インタビューの受け答えまで息ぴったりな、抜群の掛け合いトークをお楽しみください!

撮影/祭貴義道 取材・文/古俣千尋 制作/iD inc.



3rdシーズン始動から2年。成長を遂げた青学の“チーム力”



――きょうは撮影の時間帯に台風が直撃する予報が出ていて心配だったのですが、見事に晴れましたね。

神里 はい、よかったですよね!
財木 (撮ったばかりのポラロイド写真にサインを書きながら)…あっ、間違えて優希のところにサインしちゃった!
神里 まあ、大丈夫じゃない? そしたら僕が財木のところに書くからさ。ほら、こうやって矢印を書いておけば。

――仲良しなおふたりの関係性が表れているこの写真が当たった方は特別ラッキーですね。さて、きょうはミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン 青学(せいがく)vs氷帝の裏側や、おふたりのプライベートのことなどをお聞きしていきます。

財木・神里 よろしくお願いします!


▲財木琢磨


▲神里優希


――おふたりが3rdシーズンの青学8代目メンバーとして始動したのが2014年11月。昨年は不動峰公演、聖ルドルフ公演、山吹公演と3つの舞台を上演し、今まさに最後の氷帝公演を上演中ですね。その間、「TEAM Live」「コンサート Dream Live」などのライブ公演もありました。ここまでの約2年間を振り返ってみて、いかがですか?

財木 あっという間でした。僕ら、この前200公演を達成したんです。最初に不動峰公演が66公演もあるって聞いたときはもう、果てしなく感じたんですけど…それが200ですから!
神里 やっているときは、けっこう長いなって感じることもあったけど、今ここまで来て、あっという間でしたね。思えば不動峰公演のときは、青学(せいがく)と不動峰のメンバー19人だけで66公演をやったんだ…。
財木 そんなこともあったよね。それがもう、いつのまにか氷帝公演まできたんだ。
神里 特に不動峰公演と青学(せいがく)のTEAM Liveは、僕らにとっては分岐点だったかも。みんなで一緒にいる時間も長かったし、本当に力を合わせてがんばったよね。

――それ以前とその後とでは、何かが変わりました?

財木 はい。どちらかというと不動峰公演では、みんな自分のことばっかり考えていたからまとまりにくかったんです。ひとりひとりが「下手くそな自分」に腹が立っていて。
神里 たしかにそうだった(笑)。他の人のことを考える余裕がなかったよね。



財木 公演中の後半、舞台に立って客席を見たらお客さんが埋まっていなかったときもあって。「これって個々の力だけじゃ無理じゃない?」ってみんなで話し合ったんです。座長(古田一紀)からも「自分のことばかり気にしてちゃダメだ。ライバルや周りのみんなをよくするためのアドバイスをしていかないと」って言われて、本気で考えました。
神里 あれは不動峰の大阪公演のときだね。たしかに、それまでは個人個人でやっていた感じだったけど、そこから変わったね。
財木 その後のTEAM Live SEIGAKUは、青学(せいがく)メンバーでかなり話し合いながらやりました。ライブは、原作にはない舞台を自分たちで作って、自分たちのキャラだけで勝負する難しさもあるので、青学(せいがく)のキャラについて書かれた本をみんなで一生懸命読んで、ひたすらキャラと向き合いましたね。そのおかげか、次の聖ルドルフ公演では、また違った意識を持ってやれるようになりました。



過酷な合宿を乗り越え、役に打ち込む



――『テニミュ』には相当厳しい合宿もあるそうですが…。

財木 合宿…(苦笑)。
神里 厳しかったですね…。
財木 体力的にも精神的にも厳しいんですけど、チームとして何かを乗り越えるっていう感覚も体験させてもらいました。始まる前は「テニスってそんなキツいもんじゃないだろ」って、ナメてたから…。しっかり洗礼をくらいました(笑)。




神里 どこにも逃げられないから、やるしかないんです。一番キツかったのが、日程表には「朝の散歩」と書かれている、散歩じゃないメニュー。

――どんなメニューですか?

神里 階段を(笑)。
財木 ひたすら走る(笑)。

――ツラそうですね。

財木 合宿は体力的、精神的なツラさもあるんですけど、ひとりひとりの責任感も感じましたね。たとえば全員で縄跳びを10分間飛び続けなければ終わらないというメニューもあって。常に全力でやる『テニミュ』の公演につながるものが、しっかりつまっていました。公演を終えたぐらいに「ああ、合宿にはやっぱり意味があったな」って気付きました。合宿中は本当にキツくてそれどころじゃないんですけど(笑)。
神里 そうそう。ツラい瞬間は人のことは考えられないんですけど、夜になって全員で集まって「もっとまわりにも気を遣って行動しよう」って話し合ったりしましたね。

――そこで培った体力と精神力、そして責任感があるからこそ、ハードな公演スケジュールもこなすことができるんですね。

神里 そうですね。1日2公演が続いたりしてキツいときもあるんですけど、合宿を乗り越えたことがやっぱり自信にもなっています。みんなで「がんばろうぜ」って。
財木 うん、チーム力でね。

――演じている役についてどんな思いを持っていますか? 財木さんから見た手塚国光ってどんな人でしょう?

財木 手塚は自分にストイックでまじめで、妥協をしないんです。ありえないぐらいテニスも強いし、常にチームから尊敬の目で見られていて、中学3年生なんですが、貫禄があるんですよね。それから、手塚がしゃべるセリフって、人を動かしたり、奮い立たせるんです。(越前)リョーマに対する「青学(せいがく)の柱になれ」は、リョーマが強くなっていく上で大切な言葉ですし。

――厳格で冷静ながらも、いつも仲間を思っているんですね。

財木 今回の氷帝公演では、部活をサボった桃城 武(眞嶋秀斗)に対して、まず「グラウンド100周!」と怒った後で、ちゃんと桃城が奮い立つ言葉をかけるんです。僕ではそんな言葉は出てこないです。スゴいですよ、手塚は。



――手塚と自分が似ているな、と思うところは?

財木 うーん、あんまり似ていないと思います…。
神里 でも財木は、みんなを締めるときはしっかり締めてくれるんですよ。

――神里さんから見た不二周助はどうでしょうか?

神里 不二は何を考えているかわからない、ミステリアスなキャラなんですけど、本当はとっても人を大切にしています。僕自身も、人を大切にする人でありたいと、演じながら思っています。原作でもあまり多くを語らないので「今、不二はどう思っているんだろう」って考えるのが、僕も演じていて楽しいですね。公演を重ねるごとに新しい発見がありますし。
財木 優希も何考えてるかわかんないけどね(笑)。
神里 え、僕?
財木 うん。不二と似ている気がする。
神里 そうなのかな(笑)。