学生の窓口編集部

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「回覧板」に代表される地域のつながり「町内会」。町内会費を集める地域では「何に使うの?」と思いながら払っているひとも多いと思いますが、支払わなければいけない義務はまったくないのはご存じですか?

どこに住んで、どのような暮らしをするかは自由なので、「そこに住んでいるから」を理由に自治会への加入や町内会費を強要すると「人格権」の侵害となり、精神的な自由を奪ったことになります。お祭りなどの行事も同様で、みんな参加する、むかしから決まっているなども理由になりません。ただし、地域で「浮いた存在」になる可能性は高いので、会費の使い道が不明だったり、公共性も必要性もない行事などの理由がない限りは、支払ってしまったほうが楽かもしれませんね。

■強要すれば「人格権」の侵害

住宅地にみられる町内会や自治会は、エリアによって対象が決まるのが一般的で、たとえば1丁目に住んでいるひとは加入、2丁目は別の町内会になるといった具合。ゴミの集積場を持ち回りで掃除するなどの「当番」はどこでもみられる光景ですが、なかには「町内会費」を集めるところもあります。商店街のチラシや福引きを作るなら理解できますが、住宅地でなにに使うの? と思いながらも、エリア内に住んでいるから、と割り切っているひとも少なくないでしょう。ところが、自治会の加入や町内会費の支払いは法律的には何の力もなく、「みんなそうしているから」と言われても断ることができるのです。

どの街に住み暮らすかはまさに自由で、そのひとの都合や好みで決めることができます。これは「人格権」と呼ばれ、住んでいる場所=そのひとの「ひとがら」の一部となるので、何の理由もなく「この街から出ていけ!」と言ったら、人格権を侵害したことになります。同様に、「ここに住んでいる」から「〇〇しなければならない」もNGなので、町内会費を払いなさい!とは誰も言えないのです。

マンションやアパートの入居条件、土地の購入条件に含まれていれば反論できないし、住民税のように法律で定められていれば従うほかないですが、これを除けば住所によって義務が発生することはありません。目的や使い道に納得できなければ「払いません」と断ってもまったく問題ないのです。

■行事によっては「公序良俗」に反する場合も

町内の「行事」はどうなるのか? 自分も利用しているゴミ集積場の掃除や防犯パトロールなら参加すべきでしょうが、運動会や親睦会など必要とはいえない行事は会費同様に断ることができます。なかでも「お祭り」は別格で、参加どころか費用を求めるだけでも「よろしくない行為」になってしまうのです。

お祭り=季節の行事的なイメージが定着しているものの、ルーツをたどれば宗教上の行事以外のなにものでもありません。対して、なにを信仰するかは憲法・20条で「自由」とされているので、その地域に住んでいることを理由に、

 ・準備の手伝い

 ・費用の負担

を強要すると、公序良俗(こうじょりょうぞく)に反する行為となります。

寄付金も同様で、町内会費を使って寄付することにした、だから増額、が裁判で無効とされた例もあります。寄付するかどうかは個々が判断すべきであり、それを会費として一律いくらのかたちで要求すれば、会員の自由を侵害したことになるからです。

会費も行事も、納得ができなければ応じる必要はないし、強要される理由もない。目くじらを立てて拒む必要はないにせよ、みんなしているかどうかではなく、自分の意志で決めるのがいいでしょう。

■まとめ

 ・住むところを決めるのは「そのひとの自由」であり、人格の一部

 ・ここに住んでいるから、を理由に会費を徴収すると、人格権を侵害したことになる

 ・行事も同様に、すべてに参加する義務はない