『週刊ダイヤモンド』のウェブ版、『ダイヤモンド・オンライン』で4月13日に公開された記事が不動産業界に激震を与えている。

業界で横行する「囲い込み」と呼ばれる不正行為について追及しており、大手の企業名も実名で書かれていたことから衝撃が走った。

不動産業界のタブー、「囲い込み」とは何か? 不動産売買の場合、個人の「売主(うりぬし)」は不動産販売業者に依頼して、物件を売りに出す。そしてその業者が直接「買主(かいぬし)」を見つけられた場合、売主と買主からそれぞれ仲介手数料を受け取ることができる。

ちなみに手数料率は宅建業法(宅地建物取引業法)で定められており、売買価格の3%+6万円+消費税となる。例えば5千万円の物件の場合は、156万円+消費税だ。

このように業者が売主と買主の双方から手数料を受け取れるパターンを不動産業界では“両手取引”と呼んでいる。両手の場合、上記の例なら手数料収入が312万円+消費税へと倍増する仕組みだ。

しかし現実には不動産業者1社で買主を探すのは非常に困難。そこで売り手と買い手をスムーズにつなげて速やかに売買を成立させる仕組みがある。

まず、“元付(もとづけ)不動産”と呼ばれる売主側の業者はレインズ(不動産流通機構)という機関に売り物件の情報を掲出する。それを“客付(きゃくづけ)不動産”と呼ばれる全国の仲介業者が閲覧して、広く買主を探せるようになっているのだ。

まとめると、一般的な不動産売買取引は以下のような流れとなる。

(1)買主が“客付不動産”に希望する物件の条件を提示

(2)“客付不動産”はレインズの情報を見て、買主の条件に近い物件をピックアップ

(3)その物件について“元付不動産”に問い合わせる

(4)両者の条件が折り合えば売買成立

といった感じだ。この場合の手数料は売主から元付不動産へ、買主から客付不動産へとそれぞれ売買価格の3%+6万円+消費税が支払われる。この取引形態を業界では“片手取引”と呼んでいる。

しかし、大手の元付不動産業者たちは「囲い込み」という手口で売主や買主に不利益を与えながら強引に“両手取引”を成立させているのだ!

その手口は以下の通り。

(1)売主から物件を預かり、レインズに物件情報は上げるものの一般向けの広告は打たず、意図的に放置する

(2)レインズで物件情報を見た客付不動産から問い合わせがきても「今、商談中のお客さんが入ってるから案内できませんね」などとウソを言って突っぱねる(これが物件の「囲い込み」行為に当たる)

(3)「この価格じゃなかなか売れませんね」と売主を脅し大幅な価格変更に同意させる

(4)相場よりかなり安い物件に変身させ、ようやく自社ホームページや広告などで一般向けに物件情報を公開する

(5)価格競争力の高い物件なので、客付不動産業者に頼らずとも容易に買主が見つかり、売主と買主の双方から手数料をゲットできる!

以上が「囲い込み」という不正手口だ。

本来、売主や買主が受け取るはずの利益をかすめ取るやり方で、実に悪質。大きな反響を呼んだのもうなづける。これを長年放置してきた不動産業界の腐敗はこれからまだまだ暴かれていきそうだ。

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(取材・文/菅沼 慶)

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