ガイドブックを持たずに世界一周したらこんな冒険が待っていた
旅や旅行と言えばガイドブックやネットで下調べするのが一般的ですが、あえてガイドブックを持たずに旅をしてみたら「世界はまだまだ面白い!」ということが分かりました。
こんにちは!世界新聞特命記者の植竹智裕(うえたけともひろ)です。世界一周中の僕は現在、21ヶ国目アルメニアにいます。最終回の今回は旅をした1年間のまとめとして、僕が旅で見つけた「観光客があまり行かないであろう面白スポット」を9つ厳選してみました。
僕がこの一年間に辿ったルートは以下の通りです(赤線は空路、青線は陸路で移動)。ご覧の通り、一年経ってもアジアから出られておりません。
◆旅に出た理由
僕にとって「海外に出たらコレがしたい!」というテーマはありませんでした。友達作り、自分探し、ビジネスチャンス探し、言語学習、どれを目指していた訳でもありません(裏を返せば全てに期待していたとも言えますが)。僕がしたかったのはただ「知らない世界を冒険する事」です。大人になってもワクワクしてしまうような大冒険、それが僕の目的でした。
◆知らない方がワクワクする
ガイドブックやインターネットを開けばいくらでも情報や写真が出て来る時代、冒険をするにはネタバレだらけです。なので、基本的には安全情報と寝所、歴史を調べる程度に留めて、見る場所はほとんど現地に着いてから探す事にしました。何があるのかよく知らない場所に飛び込み、そして自分の目で確かめてみる。それが僕の冒険のスタイルです。それゆえに最初は東南アジアの最果てにある東ティモールから旅をスタートさせました。
1:何があるの?21世紀最初の独立国(東ティモール ディリ)
21世紀最初の独立国で内戦があったという以外はあまりよく知られていない東ティモール。たった3日間の滞在でしたが、レンタルバイクを借り、楽園のような大自然や……
巨大キリスト像を見て回りました。こちらの像は高さが27mあり、世界で3番目に大きいキリスト像だそうです。そんなものが東南アジアの最果てにあるなんて、旅に出るまで知りませんでした。
独立当時、混乱やPKOの派遣などのニュースを見ていたので、治安が悪そうな印象がありましたが、街を歩いていても危険な印象は無く、またじっくり旅してみたい国の一つです。
21世紀最初の国となった東ティモールを覚えていますか? - GIGAZINE
2:自分の足で冒険(ネパール カトマンズ)
僕が旅をしていて、一番多い移動手段は徒歩です。節約の為もありますが、車に乗っていては気付かないような景色もじっくり見られるからです。ネパールでは出国までに日程が余ってしまったので4日に分けて東西南北にひたすら歩いてみました。
空港の裏手にある集落。お金持ちの乗り物である飛行機が離発着する空港の裏側には嵐が来たら吹き飛んでしまいそうなトタン屋根の集落が広がり、ゴミを燃やす臭いと家畜の臭いが広がっていました。この周辺には観光スポットは無いので、外国人が訪れる事は滅多に無いと思いますが、貧富の差を目の当たりにする印象的な場所でした。
恐らく現地の人々と一部の迷子旅行者しか訪れないであろう農村では色とりどりの花が咲き乱れていました。観光地とは呼べませんが、歩いてみる事で徒歩圏内にも観光地より印象的な場所がゴロゴロあるものです。
海外で一方向にひたすら歩いたらどうなるのか? inネパール
3:有名な観光地にも眠るB級スポット(タイ)
世界中どこに行っても観光地として賑わっているのが教会やモスク、寺院などの宗教施設。どれも歴史的価値のあるものばかりですが、立て続けに見ると正直飽きる……。そんな僕が仏教国タイで出会ったのは、日本では到底真似できない奇妙奇天烈な仏教寺院の数々でした。写真は「WAT PA LAK LOI」。信じられないですが、これ、お寺の境内です。
まるでSFファンタジーの世界のような真っ白なお寺(WAT RONG KHUN)や、
内壁の絵の至る所にドラえもんが潜むお寺(WAT SAMPA SIW)などなど。
外見はキリスト教の教会にしか見えないこちらの教会も……
中には仏教僧!実はこちらも王室公認の西洋風の仏教寺院(WAT NIWET THAMAPRAWAT)でした。もしかしたらタイには、あまり知られていない奇妙な仏教寺院がまだどこかにあるのかも知れません。
「ドラえもん寺」など日本だったら怒られそうなタイのお寺4つ - GIGAZINE
4:国自体が冒険スポット(バングラデシュ)
イスラム教国家のバングラデシュにも世界遺産がありますが、特別感動的なものはありませんでした。代わりに首都ダッカで歩き回っていたところ、謎の場所をいくつか発見しました。道路も整備が行き届いておらず、頻繁に停電が起こるダッカの旧市街ですが……
夜になると一か所だけ空が煌々と光る場所がありました。
気になって向かってみると、そこには光の塔がそびえ立っていて、ガラス張りの塔の内部の白色照明が真っ暗な上空を刺すように照らしていました。GoogleマップによるとSHADHINATA TOWERというそうで、独立の記念碑でした。こちらは探してみたところ、日本語によるインターネットの情報はありませんでした。
また、歩いていて池のほとりで見つけた船の形をしたこちらの建物、何だか分かりますか?日本語が話せる現地人に聞いてみたところ、「仏教のお祈りの場所」だと言われましたが、後日、隣の建物のガードマンに聞きに行ってみると、人が暮らす民家だという事が分かりました。「主人はもう亡くなっていて、息子はアメリカにいて、今は女性二人で暮らしていて……」と事細かに教えてくれました。お隣さんの内部事情をそんなにペラペラ喋っていいのかって感じですけど、アジア最貧国と呼ばれるバングラデシュでこんな巨大で独創性の高い住宅を建てて、息子をアメリカに行かせる余裕があるのですから大金持ちの家に違いありません。
バングラデシュで見つけた場所はインターネットで調べても誰が何故、何の為に建てたのかなど詳しい情報が得られない場所も多くありました。冒頭で情報があふれている時代と書きましたがバングラデシュはその限りにあらず。外国人にとっては未知のスポットが眠る秘境の一つです。
5:飛行機降りたら未来都市(カザフスタン アスタナ)
2014年11月に訪れたカザフスタンの首都アスタナ。実は航空券の値段がカザフスタンの他の都市と同じだったからという理由だけで訪れてみたのですが、暖かい気候のネパール・ドバイと乗り継いで降り立った先はひどい時で体感気温が-40度にも達する酷寒の未来都市でした。
街を歩くとこんな風に近未来的なフォルムの建物が見られます。アスタナでは2017年に万博が開催される予定の為、現在も新しい建物が次々に建てられていて、まだまだ予想も付かないような冒険の舞台が誕生しそうな予感。是非また夏の暖かい時期に訪れたいものです。
建築家・黒川紀章がカザフスタンに計画した未来都市は今も拡大していた - GIGAZINE
6:完全なるクチコミで見つけた巨大像(インド ナンチ)
現地人に薦められるがままに訪れてみたインドのナンチという街。
ここでも山の尾根を歩き続けた結果、辿り着いたのはヒンドゥー教の巡礼テーマパークで、インドに点在する4大聖地の寺院が再現されていました。中でも、最奥部にある巨大シヴァ像は圧巻でした。
ガイドブックを捨てよ、冒険へ出よう インド編
7:見たい物が見たい時に見られない南の島(マレーシア コタキナバル)
現地で一から情報を仕入れたとして、必ず見られるものばかりではありませんでした。こちらはマレーシアのボルネオ島にあるコタキナバルという街で見つけた張り紙。
世界一大きな花ラフレシアは開花から5日ほどで枯れてしまいます。前もって情報を仕入れたとしても咲いていなければ意味がありません。
世界最大の花ラフレシアは本当にトイレの匂いがするのか? - GIGAZINE
8:仮面の女性が生活する街(イラン バンダレ・アッバース)
イランと言えばイスラム国家として有名です。女性は法律で髪の毛を隠す事が定められているほか、肌の露出も少なめです。
そして、ペルシャ湾沿岸部にはなんと仮面を被った女性が生活していました。彼女たちはアラビア半島から渡って来た渡来人の末裔だそうです。僕が実際に会えたのはごくわずかで、高齢層の人ばかり。若い世代を中心に仮面を付けない女性も増えているようです。近代化の流れに乗って、いずれは消えてしまう文化なのかも知れません。
仮面をつけて生活をする女性「バンダリー」に会いにいく @イラン
9:人為的に地形が変わってしまった場所(ウズベキスタン アラル海)
ウズベキスタン国内にあるこちらの砂漠。
なんと船が並べてありました。水辺から運んで来たのではありません。
実はここはもともとは湖だった場所です。
こちらは「20世紀最大の環境破壊」と呼ばれる灌漑政策で年々干上がっているアラル海の沿岸都市(だった)モイナクという街の、船の墓場です。
「20世紀最大の環境破壊」と呼ばれる「海」で僕が目にしたもの
◆「秘境なき地球」は知らない場所だらけ
海外旅行がどんどん盛んになり、通信技術も進歩している今、この地球上で誰にも発見されていない場所なんてもう無いのかも知れません。ですが、僕が旅をして分かったのは、インターネットやガイドブックの情報をもってしても、我々が知る事が出来る世界の情報はまだまだごく一部に過ぎないという事です。僕のように冒険を求める旅人にとってはこの記事自体がネタバレになってしまうかも知れませんが、今までの記事を読んで下さった皆さんにとって旅をしてみたいと思うきっかけになれば幸いですし、旅好きではない方にとっても、ニュースでは教えてくれない知られざる世界の情報を知る為のきっかけになれば幸いです。
◆旅は続く
1年経ってもまだアジアから抜け出せていない僕ですが、今後の予定としては5月に日本に帰国し、ワーキングホリデーでオーストラリアに渡航し、海外で働きながら旅の資金を貯め直して、旅を再スタートする予定です。この先も世界新聞をはじめ、様々な形で旅や世界に関する情報や感じた事を発信していきたいと思いますので、またどこかでお目にかかれればありがたき幸せです。今まで1年間応援いただき、ありがとうございました。
・最後に
この記事をもって、世界新聞監修による連載は終了となります。「旅人が実体験をもとに記事を書くことで、世界はまた、違った見え方をしてくるのではないか?」というコンセプトのもと、3年間で計8人の旅人による記事をお届けしました。チャンスを与えていただいたGIGAZINE編集部の皆さん、記事を書いてくれた旅人の皆さん、そして読者の皆さん、ありがとうございました。よろしければ、引き続き、世界新聞のサイトを訪れていただければと思います。(世界新聞デスク・松崎敦史)
文・取材:植竹智裕 https://twitter.com/hiro_uetaken
監修:世界新聞 sekaishinbun.net