苦手な野菜、ありますか?

写真拡大

子どもに嫌いなモノをムリヤリ食べさせるべきかどうかが、ときどきネット上で話題になることがある。

「子どもの頃、嫌いなモノを残したら、もうご飯を作らないと言われた」「お弁当に入っていた嫌いなおかずを残したら、翌日倍の量になっていた」「給食で嫌いなモノを残したら、一人残された」など、好き嫌いに関する思い出って、大人になっても案外残っているもの。
自分の場合、好き嫌いは基本的にほとんどないが、豆乳は嫌いで、友人宅で出してもらったときに、嫌いと言えず一気飲みした結果、好物だと思われておかわりするハメに……なんて経験が何度かあった。

子どもらしくないヘンな気遣いに「嫌いなら、嫌いって言ったほうが良いよ」と言われることもあったし、「嫌いなモノをムリヤリ食べさせられたことで、ますます大嫌いになることもあるよ」なんて経験を語る人もいる。
また、「大人になると自然に好きになるモノ」「お酒を飲めるようになると美味しさがわかるモノ」もあるし……。嫌いなモノをムリヤリ食べさせなくても良いのだろうか。
管理栄養士の泊真希子さんに聞いた。

「嫌いなモノを小さいうちから食べさせるのは、子どもに負担がなければいいと思いますが、負担があるのであればやめたほうが無難だと思います。味覚は変化し、大人になるにつれて好まれる味もありますし。嫌いなモノを食べなくていいというわけではありませんが、子どもにはまず成長に欠かせないもので子供が受け付けるものをたっぷり食べさせるのがベストかと思います」
たとえば、どうしてもピーマンが食べられない子なら、ピーマンだけに固執せず、その栄養を補える別の野菜をとるのでも良いのかも(ピーマン嫌いの子は、他の緑黄色野菜も嫌いなケースはありそうだが)。

また、「嫌いなモノは小さく刻んで、できるだけわからないように入れる」なんて言う人もいるが、大嫌いな場合は「どんなに小さく刻んでもわかる!」「嫌いなモノが小さくとも全体に混ざることで全体がまずくなる!」なんて言う人も多い。
「食事にとり入れるための工夫は、あとから足せるようなものに関しては、食べる本人がトッピング感覚で調整するのもアリかもしれませんね。最初は薄目に味付けをして、2回目からは相手の反応を見ながら足すとか、初めてのときには『あなたの好みかわからないけど、口に合えばと思って』などと一声かけるとか。そうすると、口に合わなくても、まずいとはそうそう言わないんじゃないかと思います」
男の子にはときどき「野菜はポテトしか食べない」なんて子もいるので、そうした攻略法はかなり難しそうだが、女の子の場合は、小学校高学年くらいになると「〇〇の成分がうんぬん」「太りにくい」「お肌に良い」などの美容的・健康的うんちくや、「流行」「レア感」などのプレゼンもけっこう効きそうだ。

「いくら栄養価が高くても、個食だったり、楽しくなかったり、そういったことも食事には関係しているのではないでしょうか。実際に栄養吸収量の差はないかもしれませんが、楽しく食べたほうが消化も吸収も良く、身体の調子も良くなると思います。心と身体の関係はありますよね」

確かに、好き嫌いが多い子でも、「お母さんの作る〇〇ならいくらでも食べられる」というのはときどき聞く話だし、「バーベキューで食べてみたら美味しかった」なんてこともあるので、シチュエーションによって食べられるようになるケースはありそうだ。

また、「ナスの浅漬けなどのキュッていう食感が嫌い」という理由でナス全般が嫌いだった子が、油との相性の良さに気付いたらナスが大好きになることもあるように、食材の組み合わせや調理法によって好物に変わるチャンスもある。

もしどうしても苦手なモノが1〜2つある程度なら、それだけにこだわってムリヤリ食べさせるより、シチュエーションや好きに変わるきっかけづくりを考えてみるのも良いかも。
ただし、他者と食事するときに、聞かれもしないのに、ことさらに「〇〇嫌い!」と自分の好き嫌いを主張するのはNG。ソレを好きな人もまずい気がしてしまいますので。
(田幸和歌子)