胎内記憶とは、お母さんの胎内にいたときの記憶のこと。ある研究によると、3人に一人が胎内記憶を持つと言うが、大抵成長と共に記憶がなくなる。胎内記憶を題材にした『かみさまとのやくそく』は現在、東京、大阪で公開中だ。

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「胎内記憶」という言葉をご存じでしょうか? これは胎内にいるときや誕生時の記憶のことをいい、この記憶を持つという赤ちゃんや子どもがいるのです。

胎内記憶に関する証言は日本だけでなく海外も含めて多数存在し、科学的な検証も多く試みられています。ただ幼児時代に胎内記憶に対する証言をしていても、成長とともに記憶がなくなることが多いので実態がなかなか掴みきれません。

代表的な胎内記憶の証言としては、胎内は温かいプールのようだったとか、胎内から外の様子が見えたとかいうものがあります。

しかし同時に、胎児の視覚や脳の発達状況から考えて胎内記憶というものは科学的にはありえないという反論も多いのも事実。特に、よくある赤ちゃんは自分が宿るお母さんを選んで生まれてくるという証言に対しては「オカルトだ」という一言で一笑に付す人は多いです。

果たして胎内記憶は本当にあるのでしょうか?

「僕はあると思っています」

そう答えてくれたのは現在公開中の映画『かみさまとのやくそく』のメガフォンを取った荻久保則男監督。この映画は胎内記憶研究の世界の第一人者、産婦人科医の池川明医師(池上クリニック)や中部大学で人間の意識についての研究をする大門正幸教授など最前線で研究する人たちや、胎内記憶を持つという子どもの証言を中心に構成されているドキュメンタリー映画で、胎内記憶研究の取材に留まらず、親子の信頼の醸成や人間は何のために生まれてくるかということまでに踏み込もうとする意欲作です。

荻久保監督は胎内記憶に対して否定的な意見を持つ人が多いことを認めながらも、お母さんのお腹の中で胎児に意識があると考えた方が符号がつくと考えられることが多いといいます。映画の中でも紹介されていますが、赤ちゃんが生まれる前に住んでいた住居のことを記憶していたり、ずっと逆子だった胎児と母親がきちっと向きあってコミュニケーションを取ると翌日に逆子が治ったというような事例が数多く報告されているのです。
胎内記憶の第一人者である池川医師は臨床の現場で何度もそうしたことを経験するうちに、胎内記憶があると考えるのが自然だという結論に至りました。そして出産というと母親だけを患者と考え、胎児に感情がないものと決めつけ患者としてのケアをしない医療現場に問題提起をする意味合いも込めて胎内記憶の存在を訴え続けているのだといいます。

しかし胎内記憶に対して完全に否定的な人は、子どもは現実と想像を混同しがちだとか、ウソをつく子どもがいると言い、その存在を認めません。

「子どもが言っていることがウソか本当かという観点の議論にはあまり意味がありません」

荻久保監督は否定派の人たちの意見に反証するつもりはないと言います。

「胎内記憶というものが本当にあるということを科学的に証明することは難しいかも知れません。でも胎内記憶を認めること自体に実学的なメリットがあるのです」

荻久保監督によると、胎児に意識があるとお母さんや周囲が思うだけで、妊娠期間を穏やかに過ごせるようになるとのこと。また子どもが胎内記憶をしゃべりだした時、荒唐無稽と聞き流したりせず、きちんと耳を傾けることにより親と子どもの絆が高まる効果もあると言います。

映画の中でもにわかには信じがたい前世記憶を持つという子どもとそのお母さんが出てきます。その記憶の真偽は確認しようはありませんが、強い信頼で結ばれているように見えるその母子の絆は子どもの語った胎内記憶をお母さんが受け入れたことによって培われたのかも知れません。

胎内記憶の話をオカルトに回収しようとする人も多いですが、胎内にいたときからずっと母親とコミュニケーションを取ってきたんだと考えるだけで、自分と親や子との関係を温かな気持ちで見直すきっかけになりうるでしょう。

映画『かみさまとのやくそく』は現在東京と大阪でロングラン上映中ですが、それ以外の地域でも荻久保監督が積極的に自主上映会をサポートしているということなので、興味のある方は公式ホームページを通じて問い合せてみてはいかがでしょう?
(鶴賀太郎)