スマホで写経したりしちゃう

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アスリートが精神修養として、お寺へ行ったりするじゃないですか。座禅を組んだり、写経をしたり。
実はプロレスラー・武藤敬司もスランプ期にお寺へ行き、精神の鍛錬に励んだことがあるのだそう。現在発売中のプロレス誌「KAMINOGE vol.30」にて、こう語っています。
「写経、厳しいよ!? 脂汗出てきたよ」
あんな屈強な男が消耗する程とは。やはり、糧にならないわけがない。

これらの修行、大仰にではなく手軽に取り組めたりしないものなのかしら。……待ってました。絶好のアプリがあるようです。曹洞宗近畿管区教化センターが提供しているのは、その名も『心の鏡』(iOS版はこちら/Android版はこちら)。
このアプリで何ができるかというと、まさに「座禅」と「写経」。自宅にて、手軽に取組めてしまいます。その使い方は、以下。
座禅 
膝の上にスマートフォンを置いて、座禅を開始。ユーザーが動くとバイブ機能or警策の音で知らせてくれ、その結果は「心の落ち着き度」としてグラフに反映される。
写経
「般若心経」か「四弘誓願文」のどちらかを選択。すると一文字づつ表示されるので、そのお手本を指でなぞる(暗記している人はお手本を消すことも可能)。全て書き終えたら、願い事を書いて納経することができる(毎月一日に読経して供養)。

いやぁ、手軽だ。そして、あまりにも柔軟な姿勢。その思い切りの良さに驚き。というわけで、このようなアプリを開発した経緯について同センターに伺ってみました。
「まず、次代を担う若い人たちにお寺への興味を持ってほしかったという思いがありました。仏教・仏像・禅への関心は若い世代の中にも広がりつつありますが、お寺へ足を運ぶにはまだ少し敷居が高いのではないかと思います。そこで、まず身近にあるスマホから仏教・禅に興味を持ってもらえたら……と考えました」(同センター主監・鈴木顕道さん)
だからこそ、アプリは座禅に特化しなかった。写経もそうだが、他にも1日1回祖師方のお言葉が届けられたり、画面をタップすると鐘・警策・木魚の音が鳴るお遊びコーナーも設けられている。
「アプリを通して、一軒のお寺へ入るという感覚にしました。それだけでなく興味を持った方が近くのお寺を探せるよう、自分の位置と近くにあるお寺の場所を表示できる地図機能も備わっています」(鈴木さん)

そんなこんなでこのアプリ、実際に私も試してみますよ。座禅編、行きます!
まずはあぐらを組んで、膝の上にチョコンとスマホを乗せ、STARTをプッシュ。ここからは、無の境地(のつもり)です。しかし、ままならない。およそ2分が経過した辺りで「パシン!」と警策の音(バイブ機能にしてあれば震え)が、私に活を入れました。いかん、いかん、自分を取り戻さないと……。
そして最後には、「心の落ち着き度グラフ」が表示されます。ん、私が落ち着きを逸したタイミングで確かに波線が乱れている。俺も、まだまだだな……。

そんなこのアプリ、非常に有意義だと思いました。……が、内部で反対意見のようなものはなかったんでしょうか? あまりに革新的で、少し心配になっちゃうのですが。
「スマホのアプリというと、ゲームや音楽など遊び用途のものという観念を持っておられる方も多く、曹洞宗の教えの根幹である『座禅』をゲーム等と同列に扱っていいのかという反対意見がありました。しかし、私はそのようなものの中にあってこそ今まで興味のなかった人たちの目に触れる機会を増やすことになる、と考えたのです」(鈴木さん)

結果、見事、若者の目に触れている。今までのダウンロード数だが、4月から提供されているAndroid版は約7,300、5月9日より提供されているiOS版は約3,800まで達しているとのこと。
「『警策』の機能が面白いというお声が多いのですが、一方で写経のコンテンツから“納経”される方の数は予想以上でした」(鈴木さん)
5月24日現在、今までに約500巻が納経されているらしい。ということは、多くの方が写経に励んだという証ですな。

そして、この勢いは止まらない。
「今後は、アプリ内のコンテンツを増やしていきたいと考えています」(鈴木さん)
まず今年中には、実際にお寺へ行くとアプリ内でスタンプが押されるスタンプラリー的な「朱印帳」機能の新設を目指すそうです。

確かに、“仏像マニア”と呼ばれる人たちの数は増えています。ならば、実際にお寺へ行って修行体験するのも一考ではないでしょうか?
その間口を広げる役割を、このアプリは担っています。
(寺西ジャジューカ)