2014莞島国際海藻類博覧会、正門と「テーマ館」

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2014年4月11日から5月11日までの1カ月間、韓国は朝鮮半島の南端に隣接する島「莞島(ワンド)」にて、海藻類をテーマにした世界初の国際博覧会「2014莞島国際海藻類博覧会」が開催された。ワカメやコンブというあまりにマニアックな話題で、いったいどんなエキスポが行われるのか? 私のような素人にも分かる内容なのか? さっそく足を運んでチェックしてみた。

のりやアワビの産地として知られる莞島は、ソウルから高速バスで5時間20分の位置にある。半島から橋で連結されており、島とは言えバス一本で行ける。
島の面積は88.57平方キロメートル、東京都の伊豆大島や北海道の礼文島に近い大きさだ。中心部には人の往来や店舗もそこそこあり、漁村というよりちょっとした町という印象。海岸沿いの道路には海鮮料理屋とモーテルがずらりと並んでいる。

会場は海岸沿いのふ頭に設けられており、正門にある未来的なタワー型建造物が目印となっている。チケットを購入して、さっそく中へ。平日に訪れたのだが、ご年配の方の団体や高校生を中心に、予想以上に多くの人が行き来している。海藻、あなどれない集客力だ。

まずは正面のメインパビリオン「テーマ館」へ。ここでは「海藻類は生命だ」をテーマに、高度な映像技術で海藻の姿を美しく見せる。さらには本物の巨大な昆布も展示されていた。
その隣の、海上に設置された「海藻類体験場」では、コンブ・ワカメ・ヒジキなど本物の海藻たちの養殖の現場に出会うことができる。うむ、海藻である。

さらに進むと、海藻をテーマにした出店が多数。海藻ピビンバや海藻トッポッキなどが食べられる食堂、海藻を使った羊かん作りや色素分離実験など体験できるブースを始め、博覧会の海藻キャラクター(ヘチョくんとミチョちゃん)の絵柄をあわせるパズルや、同キャラクターのイラストを顔に描いてくれるフェイスペイントなど、これは海藻でなくても行けるのでは……というブースもあり、様々なアプローチで観客を海藻の世界にいざなう(なお、世界各国の料理の屋台や似顔絵描きなど、海藻と全く関係ないブースもある)。

会場の北端には「海藻類企業館」がある。業者が商品を展示販売するパビリオンで、商品はのりや昆布、海藻麺やヒジキ酢など加工食品がメイン。試食をさせてくれるブースがあるのも楽しい。私が訪れた会期終盤では既に撤収していたが、日本の企業もいくつか出店していたという。

最初に来た正門に戻り、今度は逆方向へ。次に現れたパビリオンは「生態環境館」だ。こちらは海藻の地球環境を調節する役割にスポットを当て、さらに詳しく海藻類を紹介。本物の海藻や貝で装飾された人魚姫のオブジェがあるかと思えば、3D映像で海藻を見せるコーナーもあり、手段を選ばない。
個人的には、海藻が繁殖しやすい人工魚礁(形が幾何学的でかっこいい)を紹介する展示にうっとり。海藻やヒトデなどを直接触れるコーナーでは、子供たちが興味津々な様子で水槽に向っていた。

次の「健康食品館」では食をテーマに、またまた詳しく海藻類を紹介。世界の海藻を使った料理(日本枠では昆布締めが取り上げられていたり、どこかの国ではワッフルの上にのりがかかっていたり)や、海藻に含まれる栄養などが展示されている。建物を出ると、海藻を使った、溶けにくいソフトクリームを作れるブースや、海藻料理教室も用意され、人を集めていた。

最後の「産業資源館」では科学や産業からの見地から、これでもかと詳しく海藻類を紹介。海藻を利用したエネルギー生産(バイオ燃料で車が走る!)のしくみや、医薬品・化粧品、そして海藻アートなどを展示していた。
パビリオンはひとまずこれで全てだが、他にも会場内では至るところでライブやパフォーマンスが行われ、エキスポならではの活気に満ちあふれている。

主催者側によると、世界20カ国の企業が参加したこの博覧会に、1カ月で50万人前後の観客が来場する盛況となった。参加者のアンケートの集計を見ても満足度が高く、参加していた日本企業にも高い関心が集まったそう。
なお、前述の「溶けにくいソフトクリーム」は金沢市の日本海藻食品研究所が開発したもので、今回の博覧会のために主催者側が技術を学んだ。こちらも行列ができるほどの人気だったとか。

ある時は実物で、ある時は模型で、ある時は3D映像で、ある時は味覚で、ある時はデータで、ある時はキャラクターでと、あらゆる角度から海藻の魅力を伝えてくれた莞島国際海藻類博覧会。最初は海藻に特別なイメージがわかなかった私も、こんな展開もあるのか!と感動しつつ、最後まで興味深く見学することができた。もちろんお土産に莞島産ののりをたくさん買って帰った。

一方で、日本でも海藻エキスポを開催したらどうだろうとも考える。イメージキャラクターはノリスケさん? テーマソングは石立鉄男? われこそはと思う自治体は、町おこしを兼ねてぜひとも開催してみてはいかがだろう。
(清水2000)