「ア・テストは全国共通だと思っていた」
「サンマーメンにはサンマはのってない」など神奈川のあるあるネタが満載!
『神奈川のおきて』(アース・スターエンターテイメント)

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この夏、『あまちゃん』の能年玲奈主演で昭和の不良たちのバイブル、『ホットロード』が映画化される。私も子どもの頃、姉の本棚にあった愛蔵版を読ませてもらい、その青く切ない世界観に憧れたものだった……。おもな舞台は、江の島や鵠沼海岸など作者の紡木たく氏が育ったという神奈川県。主役の少女・和希と親友の絵里がテトラポットが後ろに見える海辺の堤防に座って、彼氏の春山がおごってくれる缶コーヒーを飲むシーンなどもありましたっけ……。

作中で中学生の和希が不良化していく象徴的なエピソードとして、「ア・テスト」なるものをさぼり、母親に叱責されるシーンがある。大阪生まれの私は意味がわからず、「ア・テストってなんだろうね〜」と姉と話し合った記憶がある。ところが先日、アース・スターエンターテイメントから発売された『神奈川のおきて』という本を読んでいたところ、このウン十年来の謎が氷解した! なんでも、「ア・テスト」とは「アチーブメント・テスト」の略で、神奈川限定で中学2年生の3学期に行われていた学力テストのこと(ちなみに、1997年に廃止された)。この結果が県立高校の入試にも影響する、かなり重要なテストだったのである。もともとは高校入試が一発勝負にならないように、という配慮から考案されたが、結果的には受験が2回あるようなプレッシャーがかかり、長らく神奈川の中学生を苦しめてきたのだとか。

なお、本書では『ホットロード』の連載時(80年代)に全盛期だった神奈川の暴走族事情にもふれており、「R129やR134はいまだに『暴走族』だらけ」なのだそうでびっくり! さすがに数は減ったものの絶滅してはおらず、平塚から厚木を経由して相模原に至る国道129号線や、横須賀から大磯まで海沿いを東西に走る国道134号線にはまだまだ暴走族が出現。よって、平塚、茅ヶ崎、藤沢の幹線道路沿いに住む人は週末の深夜などに、彼らの改造車から出る爆音に悩まされているという。現代の暴走族もやっぱり特攻服を着ていたりするのだろうか……? 彼らのファッションも気になるところだ。

他にも『神奈川のおきて』には、
・買い物なら「そうてつローゼン」……県内スーパーマーケットの最大手。ローゼンはドイツ語でバラのことで、かつて資本関係があった高島屋から名付けられた。
・「スリーエフ」を全国チェーンだと信じて疑わない……「♪星より明るくスリーエフ」のキャッチフレーズで知られる、神奈川ではおなじみのコンビニ。県内になんと260店舗以上を出店し、湘南ベルマーレのオフィシャルスポンサーもつとめる。
・「サンマーメン」にはサンマはのってない……「サンマーメン」とは神奈川のローカルフードで、もやしや豚肉入りのトロミあんがのったラーメンのこと。なぜサンマーメンというかは諸説あるが不明。なお、神奈川出身の小泉純一郎元首相は総理就任まで「かながわサンマー麺の会」の顧問を務めていた。

などなど、知られざる神奈川トリビアが満載。 和希と春山も「そうてつローゼン」や「スリーエフ」で買い物したりしたのだろうか? がぜん物語にリアリティが感じられる。ちなみに、私も長年、「サンマーメン」はサンマを出汁に使ったラーメンか何かだと思い込んでいた……。

さらに、神奈川の方言「〜じゃん」は湘南〜横浜の方言としてよく知られているが、それ以外にも「〜だべ」というのがあるらしい。藤沢市出身であるSMAPの中居くんがテレビで連発するので、全国的に認識されるようになったという。これ、確か『ホットロード』でも春山とその仲間たちがこういう言葉使いでしゃべっていたが、都会の子がふざけて田舎っぽいしゃべり方をしているのではなく方言だったんですね……。

なお、『神奈川のおきて』は以前に紹介した『群馬のおきて』の続編。他にも北関東編として『茨城のおきて』『栃木のおきて』『埼玉のおきて』『千葉のおきて』の5冊が同時発売となっている。出版元によればダントツで反響があったのは1位『群馬のおきて』、2位『栃木のおきて』、3位『茨城県のおきて』だったそう。今後もこの「おきて」シリーズは、5月末に『長野のおきて』、6月は『静岡のおきて』がリリース予定。その他の県も検討中だそうなので、自分のご当地がまだという人は期待して待とう。

そんなわけで、『ホットロード』を見る前に予習しておくとさらに楽しめそうな『神奈川のおきて』。横浜や鎌倉といったオシャレでハイソなイメージだけではない、“普段着の神奈川”を地元民で視点でちょっとのぞいてみてはいかが?
(まめこ)