パリの新グルメ、回転しゃぶしゃぶを体験してみた!

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しばしば海外の日本食は、本家の日本人が想像しないような進化を遂げていることがある。以前コネタでパリの回転フレンチ(「すでにパリは回転ずし新時代に突入中!? 元ロブションのシェフが作る回転フレンチ」エキサイトbit)を紹介したが、今度もパリに「回転しゃぶしゃぶ」が登場した。店名はShabu Sha(シャブ・シャ)。市内アール・エ・メティエ駅周辺の、中華料理屋や中華食材店が小さく集積する地区にある。

回転しゃぶしゃぶとは、回転寿司としゃぶしゃぶという日本が誇る食のスタイルを合体させ、現代の「お一人様」形態にも対応した画期的なレストランだ。ベルトが回るカウンター席には、しゃぶしゃぶ鍋が1人に1つ備えられている。そこで流れてくる具を選び、自分専用の鍋でゆでて食すのだ。

じつはこれ、(以前、東京にもあったようだが)タイやベトナムなど東南アジアではすでに展開されているタイプのレストランだ。店内デザインも洗練されていて、流行に敏感そうな若者が多く入っていた。

しゃぶしゃぶといっても、日本のものとは少し雰囲気が違う。まず食材をボイルするだし汁はナチュラル、みそ、麻辣、羊から選べ、つけだれはゴマ、サテー(インドネシアの串焼き)、バーベキュー、シャブシャ・スペシャルから選択する。今回は初めてということもあり、だし汁はナチュラルをセレクト、つけだれシャブシャ・スペシャル(じつはコチュジャンだった)を頼んだ。

流れるメニューはワカメサラダ、枝豆、プチトマトといった、そのままで食べられる前菜から始まり、人参、エノキ、シイタケ、キクラゲ、チンゲンサイ、レンコンなどの野菜類、肉類は牛肉、羊肉、鶏肉、白身魚、イカの切り身の他に豆腐、ワンタン、油揚げなども流れている。回転寿司の要素も少しだけ残しており、エビフライやマグロ、キュウリを巻き込んだカリフォルニアロールが運ばれる。鍋にはご飯を合わせたい日本人としてはうれしい。うどん、ラーメン、春雨といった麺類もあり、食材から出たダシでうまみが深まった鍋に、それらを加え締めにできる。ただし各食材は質が高いものとは言えない。

これら食べ放題・時間無制限で昼は18ユーロ(約2500円)、夜は25ユーロ(約3500円)だ。デザートに宇治金時など各フレーバーのかき氷6.5〜7ユーロ(約900〜990円)や、日本酒も銘柄をそろえる(別会計)。

同店は完全に日本を意識させたレストランだが、食材から分かるように、完全な日本のしゃぶしゃぶを期待して来店してはいけない。皿の具を用意する板前さんは和の装いであるものの、場所は中華系の店が集まる地区で、店員も中華系の人が働き、店内の壁には中国共産党のプロパガンダポスターがアート感覚で張られている。しゃぶしゃぶの歴史的起源は元のフビライの時にさかのぼるそうなので、一周回ってまた中国大陸の色が付いた感じだろうか。欧州の人が何となく持つ東アジアっぽさを感じられるといった様相だ。

しかし、そこを割り切れば普通に鍋料理としては楽しめる。コンセプトも面白い。結局1時間くらいひたすら食べ続けて店を出たが、食事に時間をかけるフランス人客は、友達たちと話しながら延々食べ続けていた。店の回転率は悪いだろうなと心配するものの、おしゃべり好きなフランス人からすれば、しゃべりつつ自分たちのタイミングで食べられ、時間制限もないので、使い勝手は良いと思われる。また日本人的にも、ひとりで、ちょうど良い大きさの鍋をつつける店はないので、その点では重宝しそうなレストランだった。
(加藤亨延)