主婦にだって参考になります。『次の野球』(ポプラ社/1,300円+税)

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異色ビジネスアイデア本が発売された。横浜DeNAベイスターズが3月20日に発売した『次の野球』(ポプラ社/1,300円+税)だ。球団発のビジネス本はおそらく日本初、もしかしたら世界初かも? 

横浜DeNAベイスターズといえば、昨シーズン6年ぶりに最下位を脱出し、観客動員数は22%増を記録。ファンクラブ会員も前年の約2倍以上になるなど、いま勢いを感じるチームだ。なかでも動員22%増というのは球界でも異例の数字。もちろんこれは何もせずに達成できたわけではなく、2011年の球団誕生以来、常に面白い企画や新しい取り組みを続けてきた結果である。
ちなみに過去のユニークな企画としては、究極のおもてなしが受けられる「100万円チケット」、試合後のグラウンドで映画鑑賞できる「グラウンドシネマ」、球場前での「ハマスタBAY ビアガーデン」などがあった。

そんな同球団のユニークな企画アイデアを惜しげもなく披露したのが、今回発売された『次の野球』だ。実はこの本、もともと球団内のインナーブランディングとして、全職員と選手に配られたものだったが、社内外の関係者からの評判がすこぶる良く、一般書籍化することになったのだという。本では既存の「野球」という枠組みを超え、「野球」の次なるステージを模索していくためのアイデア全143を紹介している。いずれも「次の野球」をテーマに全職員と選手から募ったアイデアで、集まった600以上の案から厳選したという。

企画の実現可否はさておき、どのアイデアもとても楽しい。個人的には座布団の上に座って観戦できる「桝席」や「優勝ビールかけ参加権付きチケット」があったら、とりあえず買うと思う。なかには選手からの「1日限定 金属バット使用の日」なんて提案もあった。また、「ネイリスト付きの座席」というアイデアには、すでに似たものとして中華街の占い師が付いた「女子シート(じょしーと)占いBOX」が実現している。

本はイラストが中心なので、空き時間に読むのもラク。しかも、単なるアイデアの羅列だけでなく、章ごとに編集部による「次」へのまとめもついているので、球界以外のさまざまな分野にも応用しやすい。
「球団本ですが、ファンブックとは考えておりません。クリエイターやビジネスパーソンなどクリエイティブな発想を必要とする人たちはもちろん、なにか“次のこと”を考えている人たちに幅広く読んでほしいですね」
と同球団の広報担当者。たしかに「アイデアの力」というのは、野球界だけでなく、現代社会で求められる普遍的なテーマである。

巷にあふれるアイデア本とはまったく趣が違うが、それゆえに新たな発見も多い同書。個人的には、こんなおもしろい取り組みをする球団に興味が沸いた。家族向けのイベントも多いそうだし、今年は娘を連れて横浜スタジアムに行ってみようかな。
(古屋江美子)