帝京第五vs今治北
帝京第五3番・松本 将太中堅手(3年)
試合開始が近づくと、坊っちゃんスタジアムネット裏は明らかにそれと判る人たちで埋められていった。筆者が確認しただけでも7球団。既にマウンドに上がることなく中予代表決定戦で松山聖陵に敗れた済美・安樂 智大(3年)の姿はない。そんな愛媛の春にあっては異例のNPBスカウト陣集結だ。
彼らの主たるターゲットは帝京第五の3選手である。右肩痛も完全に癒え、名実共にエースとしての活躍が期待される中野 翔太(3年・右投右打・182センチ75キロ・3年)、50メートル6秒0の俊足1番・松本 凌太(3年・右投左打・176センチ83キロ)、そして凌太の双子の兄、足は50メートル5秒8と凌太をも上回る3番・松本 将太(3年・右投左打・175センチ74キロ<昨秋時点>)。彼らが投げ、走るときにはスピードガンが並び、ストップウォッチを押す手が動いた。
3人は一定以上の活躍をした。中野は前日・新居浜東との1回戦において3回3失点で降板した悔しさを胸に、6回3分の1で8奪三振。まだ球速は130キロ台前半。スタミナにも課題は抱えるが、「今日は修正してできた」と楠本雄亮監督も語るように夏までの「のびしろ」は十分にあるだろう。
一方、「松本ブラザーズ」はそろって大活躍した。弟・凌太はコールドを決める2点二塁打をはじめ4打数4安打5打点の大暴れ。前日からの通算も9打数7安打8打点と、高校通算本塁打30本に迫る打棒は完全に復活。
兄・将太も先制三塁打を含む5打数2安打3打点。初回には三盗、一塁駆け抜けも4秒切りと自慢のスピードを如何なく発揮した。
NPBスカウト陣がドラフト指名リストにあげる判断基準は、単なる成績だけでない。それは過去の結果が物語っている。ただこの日、松本ブラザーズが彼らを「魅了した」ことは確かな事実である。
(文=寺下 友徳)